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そんな大胆さ加減をフルに楽しむ!ときめくメモリアル。 [2006]

モーツァルト・イヤー!ブラヴィッシモ!
何だかんだで、聴く側も、モーツァルト・イヤーに染まってきているのだろう。なんて、もったいぶらず、こうなったら、脳内、モーツァルト満開であることを、否定しない。などと、書いてしまった前回... やはり、モーツァルト・イヤー、抗し難し!次々にリリースされるモーツァルトの新譜、どれもメモリアルだけあって、企画、演奏、気合十分で、興味深いものばかり。ということで、古楽界のカリスマも、やっぱりモーツァルト!ジョルディ・サヴァール率いるル・コンーセル・ナシオンによる「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Alia Vox/AV 9846)に。ヴィヴァルディのスペシャリストも、ヴィヴァルディではなくて、やっぱりモーツァルト!ファビオ・ビオンディが弾く(もちろん、エウローパ・ガランテを率いて... )、1番、2番、3番のヴァイオリン協奏曲(Virgin CLASSICS/3 44706 2)を聴く。
やっぱりメモリアル。モーツァルトばかりがリリースされ... と、考えなくもないが、メモリアルだからこそのモーツァルトを期待して... そんな大胆さ加減をフルに楽しむ!ときめくメモリアル。


サヴァールの有機栽培系?セレナード。

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ワールド・ミュージックとのボーダー上にあるようなサウンド、イスラム勢力の支配、影響を受けたイベリア半島の中世の音楽を演奏すれば、遠く、南米のバロックにだって飛んで行く。かと思えば、正調、バッハも取り上げるし、ヴィヴァルディのオペラだって取り上げている。さらには、ベートーヴェンの「英雄」すら聴かせてくれているジョルディ・サヴァール。そのレパートリーは、実に幅広く、また特異にも感じる... 次々とモダン・オーケストラに進出していった、ピリオド系マエストロたちとは一味違う、ピレネーの向こう側(カタルーニャを本拠地とする... )、どこかアウトサイダー的なポジションからのアプローチが、常に魅力的な演奏を生み出してきたように思う。そんな、ポジションからのモーツァルト。で、実におもしろいサウンドを聴かせてくれる。
直訳すれば"小さな夜の音楽"となる、名曲、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(track.4-7)に、名太鼓叩き、ペドロ・エステバンを擁しての、ティンパニがスパイスとなる「セレナータ・ノットゥルナ」(track.1-3)。4群に分かれたオーケストラによるエコーが、得も言えぬ"notte(夜)"な気分を盛り上げる「ノットゥルノ」(track.8-10)。モーツァルトの"夜"をテーマに綴られた1枚は、残響を美しく録り込んで、夜のしじまに響く... なんて言いたくなるような、やさしく、やわらかで、豊かなサウンドが印象的。特に、「ノットゥルノ」で、その効果を絶大に発揮!美しい夜の情景を描く。で、忘れてならないのが、エステバン師の太鼓!古楽ばかりではない、モーツァルトでも、ただならずマジカル... 「夜」を、その一打で、絶妙に表現し切ってしまう音楽性は、タダモノではない。
で、やっぱり一味違うモーツァルト。ロココの曲線、パステル・トーンの淡いグラデーション、古典派の端正さ、そう言った18世紀の音楽としてよりも、モーツァルトの音楽そのものが持つ、旨味がぎっしり詰まった演奏... スマートさではなくて、土臭さ、屈託の無さ。そこに"粋"を見出して、何気にラテンな雰囲気が漂う?何と言うか、サヴァール+ル・コンセール・デ・ナシオンのモーツァルトは、有機栽培系?モーツァルト。そんな聴き応えがおもしろい。最後は、モーツァルト・イヤーを楽しく祝う「音楽の冗談」(track.11-14)!ちょっとフォークロワな気分も滲んで、不器用に砕けるあたりが、またいい味に...

MOZART ・ Serenate Notturne ・ Eine Kleine Nachtmusik
Le Concert des Nations ・ Jordi Savall


モーツァルト : セレナード 第6番 ニ長調 K.239 「セレナータ・ノットゥルナ」
モーツァルト : セレナード 第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
モーツァルト : ノットゥルノ ニ長調 K.286
モーツァルト : 音楽の冗談 ヘ長調 K.522

ジョルディ・サヴァール/ル・コンセール・デ・ナシオン

Alia Vox/AV 9846




ビオンディの快活極まる、ヴァイオリン協奏曲。

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ヴィヴァルディで名を馳せた鬼才ヴァイオリニスト、ファビオ・ビオンディ。2月には、自身のピリオド・オーケストラ、エウローパ・ガランテを率いて、ヴィヴァルディのオペラ『バヤゼット』を日本初演。神奈川県立音楽堂に詰め掛けたファンを熱狂させたばかり... だが、モーツァルト・イヤーとなっては、彼までもがモーツァルトのヴァイオリン協奏曲をリリースしてしまうということに、ファンとして、何となしにガッカリでもあった。が、ちらりとその演奏を聴けば、もう... 何と言うことでしょう!?このドライヴ感...
モーツァルトは大好き!だけれど、彼のヴァイオリンのコンチェルトは、何となく苦手... 良くも悪くも、ユルく感じてしまい... そんなイメージを抱いてきたのだが、ビオンディの演奏は、ステレオタイプをブチ壊してくれる!始まりの1番のコンチェルトの冒頭から、エウローパ・ガランテのキレ味の鋭い、けれど冷たくはならない、快活でホットなサウンドに、ノック・アウト!もちろん、ビオンディのヴァイオリンもヴィヴィットで、力強く。ヴィヴァルディでは当たり前に感じていた彼のアグレッシヴさも、バロックではなく、古典派のクラッシーさ、流麗なモーツァルトで聴いてみると、その刺激的なあたりが際立ち、モーツァルトにして挑戦的で、思い掛けなく聴く側をワクワクさせてくれる、痛快極まりない演奏。3番、1楽章(track.7)のカデンツァなんて、鮮烈... 一方、緩徐楽章では、繊細だけれどしっかりと美しく歌い上げ、たっぷりと聴かせもし、縦横無尽。やっぱり、ビオンディは凄い!
挑戦的に攻めて、作品の眠っていたおもしろさを、あっさりと引き出すビオンディ。そこに、ビオンディに負けていないエウローパ・ガランテが、結構、ドスの利いたサウンド(ヴィヴァルディ仕込み?)を響かせて。通奏低音のフォルテピアノのサウンドが、またスパイシーで... 隠し味としてのスパイスに留まらないその存在感が、まったくおもしろい。そうしてまとめられたアンサンブルは、元気よく、時にキッチュに... こんなにもご機嫌なモーツァルトのコンチェルトって、あったんだ... となる。いや、モーツァルトで、これほどノレるとは... やっぱり、これもメモリアルだからこそのモーツァルトか。いや、メモリアルとは、ルネサンスである。

MOZART VIOLIN CONCERTOS
FABIO BIONDI . EUROPA GALANTE


モーツァルト : ヴァイオリン協奏曲 第1番 変ロ長調 K.207
モーツァルト : ヴァイオリン協奏曲 第2番 ニ長調 K.211
モーツァルト : ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216

ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン)/エウローパ・ガランテ

Virgin CLASSICS/3 44706 2






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