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それがオペラの生きる道? [2006]

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近頃、リリースされるオペラの全曲盤は、バロック・オペラばかり、な感じ...
そんな気がする。というのも、オペラ界、これまでの定番レパートリーに、やや擦り切れ感が漂い始めている21世紀。バロック・オペラは、これまで忘れ去れてきた部分、あまり触れる機会の無かったレパートリーだけに、新鮮味があるわけで... 話題の歌手も、バロック・オペラを歌ってブレイク... ピリオド畑からの逸材が目立つ昨今。スターたちも、こぞってバロック・オペラにチャレンジしてみたり、バルトリのように、もはや専門家の域に達してしまうスターまで... 当然、それらを支えるピリオド界の充実もあって、バロック・オペラ、百花繚乱!のようだ。
そんなモードにしっかり乗っかって、気になる新譜を手に取る。ピリオド系歌手たちがきっちりと揃えられての、アラン・カーティス率いる、イル・コンプレッソ・バロッコによる、ヴィヴァルディ、幻のオペラ、完全版となった『モテズマ』、(ARCHIV/477 5996)を聴く。

第2次世界大戦後、ベルリン・ジング・アカデミーにコレクションされていた貴重な資料の数々は、どさくさに紛れ、ソヴィエト軍により持ち出されたりと、その多くが散逸してしまう。が、ドイツから持ち出されていた芸術作品、資料などが、戦後50年を過ぎ、返還されることに... そんなケースのひとつ、ベルリン・ジング・アカデミーに返還(1999)された資料の中から、幻となっていたヴィヴァルディのオペラ『モテズマ』のスコア(草稿譜)が見つかった!というニュースに沸いたのが2002年。けれども、著作権を巡ってゴタゴタがあり、"祝"完全版よりも、違うところで話題が集まってしまった『モテズマ』... しかし、作曲家が亡くなって数世紀を経た後に、著作権問題が浮上するというのも、何と言うか、愚の骨頂。とはいえ、こういう問題が近頃、頻発(シャルパンティエでしてやられたhyperionの悲劇は、記憶に新しいところ... )。それだけ、古い音楽が隆盛(金になる)だということの証し?何はともあれ、ゴタゴタしてしまうほどの再発見であったわけだが、とうとう"祝"完全版として、世界初録音!
ヴィヴァルディのオペラというと、まずはスーパー・アクロバティックなコロラトゥーラがあり、時にドキっとさせられるような美し過ぎるメロディ(映画『カストラート』で見るような、スターの声に、うっかり失神しちゃう感覚?)があり、同時代のバロック・オペラに比べ、ケレン味は満点かもしれない。そうしたあたりを強調する、ビオンディや、スピノジなどの、バロック"ロック"なスタイルこそモードとなっているわけだが、カーティス+イル・コンプレッソ・バロッコによる完全版『モテズマ』は一味違う。モードとは距離を置いて、大人の演奏を繰り広げるかのよう。そのあたり、多少、刺激に欠ける帰来はあるものの、モードに踊らない、骨太なアプローチが、ヴィヴァルディ・オペラのしっかりと身の詰まった魅力を、改めて知らしめるかのよう。そして、歌手陣が凄い!タイトル・ロールを歌うプリアンテ(バリトン)をはじめ、ミヤノヴィチ(アルト)、インヴェルニッツィ(ソプラノ)、ボーモン(メッゾ・ソプラノ)、バッソ(メッゾ・ソプラノ)、カルナ(ソプラノ)... スターの名前が躍るのではなく、実力派、ピリオド系歌手たち、6人を、適材適所でしっかりとキャスティング。その全てが、随所ですばらしい声、歌を聴かせ、スペインに征服されようとするアステカでの、文明を越えた恋の行方を、思いの外、しっかりと描き出す。その聴き応えたるや... 見事にドラマティック...
この手堅さ、名門、Deutsche Grammophonの古楽/ピリオド部門、ARCHIVならではか?カーティスは、Virgin CLASSICSにおいて、やはりヴィヴァルディのオペラ『ジュスティーノ』(Virgin CLASSICS/5 45518 2)を録音しているが、その演奏を改めて聴いてみると、完全版『モテズマ』の充実度に、驚かされてしまう。やっぱり、メジャー・レーベルの仕事ぶりというのは、凄い... もちろん、Virgin CLASSICSの仕事ぶりもすばらしいのだが... そして、ヴィヴァルディ・オペラの録音の波が、マイナー・レーベルからメジャー・レーベルへ、新興レーベルから名門レーベルに至り、「オペラのヴィヴァルディ」というイメージが、ますます深まることになれば、喜ばしい限り。そして、次はどんなリリースが待っているのか?オペラのヴィヴァルディに、ワクワクさせられる。
ヴィヴァルディは、コンチェルトもいいけど、オペラはもっと凄いと思う。

ANTONIO VIVALDI: MOTEZUMA
IL COMPLESSO BAROCCO ・ ALAN CURTIS


ヴィヴァルディ : オペラ 『モテズマ』 RV.723

モンテズマ : ヴィト・プリアンテ(バリトン)
ミトレナ : マリヤーナ・ミヤノヴィチ(アルト)
テウティレ : ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ)
フェルナンド : メテ・ボーモン(メッゾ・ソプラノ)
ラミロ : ロミーナ・バッソ(メッゾ・ソプラノ)
アスプラノ : インガ・カルナ(ソプラノ)

アラン・カーティス/イル・コンプレッソ・バロッコ

ARCHIV/477 5996



さて、ヴィヴァルディのオペラ『ティート・マンリオ』が、立て続けに2タイトルもリリースされた。ダントーネ率いるアカデミア・ビザンチナ盤(naive/OP 30413)と、サルデッリ率いるモード・アンティコ盤(cpo/777 096-2)。どちらを選ぶべきか?頭を悩ませている。それにしても、ヴェルディの『ラ・トラヴィアータ』ではなく、ヴィヴァルディの『ティート・マンリオ』なのだ... 根強い人気があっても、イタリア・オペラの新録音などは、アイドル、ネトレプコが、ザルツブルクでヴィオレッタを歌う... なんて、お祭り騒ぎが無い限り、そうそうリリースされるものではなくなってしまった。今、オペラ録音は、少々、歪で、奇妙な状況に置かれている。
もっと、オペラが聴きたい!採算重視で、一極型グローバリゼーションが進む世の中、クラシックの立場はますます弱くなりつつある。もちろん、活きのいい個性派マイナー・レーベルが、刺激的なアルバムを次々と繰り出してくれてはいるが、シーンの牽引役たるメジャー・レーベルの弱体化は、目も当てられないほど... TELDECは何処に?ERATOは何処に?SONY BMGって、何?萎縮し、さらに縮小し、リスクの大きいオペラ全曲盤のリリースは、ますます窮地に... そこに、バロック・オペラという最新モード... 確実にCDを購入するだろうファンのいる、マニアック路線。今や、バロック・オペラは、定番オペラよりもリリースし易いのか?そんな、クラシック業界のパラドックスに、何とも、複雑な思い。そして、それがオペラの生きる道?
なのか... で、いいのか...




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