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二〇一二、12タイトル/60タイトル。 [overview]

ぼんやりしていたら、ガツンとブン殴られた...
そんな感覚。録画しておいた佐村河内氏のNHKスペシャルを見て、その凄まじさに、衝撃を受けた。耳が聴こえないということは知っていたけれど、どうやってあの音楽を生み出したのかを目の当たりにして、慄いてしまう。真の芸術は苦しみから生まれる... というロマン主義的な考え方は、すっかり使い古されて、チープにすら感じるのだけれど、佐村河内氏の、本物の苦しみの果てに、少しずつ構築されてゆく音楽の密度に、ガツンとブン殴られた思い。21世紀、芸術の存在感は希薄になる一方だけれど、佐村河内氏の作品そのものの存在感というのは、そういう時代の流れに振り回されることなく、圧倒的。場合によっては、近付き難いものすらある。しかし、こういう生半可でない芸術の真摯さこそ、「芸術」という枠を越えて訴え掛ける力が生まれるのだろう。そして、改めて考えさせられる。クラシックというジャンルの在り様... 21世紀と、どう向き合うべきなのか?
と、まあ、相変わらず話しをデカクしたがる悪い癖。は、ひとまず置きまして、2012年のリリース、60タイトルを振り返っての、最も印象に残るベストを選ぶ。

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という60タイトルを聴いての12タイトル...
間違いなく、2012年、深く記憶に残る12タイトルではあるのだけれど、こうして並べてみると、他のアルバムと取り換えたくなってしまうような衝動に駆られる... それだけ、おもしろいアルバムは他にもいろいろあったということだけれど... 一方で、2012年のクラシック全体はどうだったろう?ユーロ危機の影響を感じずにはいられない1年だった。そもそも、リリースされるアルバムの数が減った。ジャンルとしての規模がますます委縮してゆくのをひしひしと感じた1年でもあったように思う。クラシックの発信地たるヨーロッパの経済状況を考えれば、仕方ないことだとは思うし、すでに覚悟していたことではあったけれど、それでも、クラシックの衰微に触れて、気分も暗くなりがちだったかもしれない。しかし、そういう状況も、後半に入って持ち直しつつある印象も受ける。まだまだ余談を許さない状況は続くわけだけれど、少しでも元気を取り戻してくれることを願うばかり。

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さて、話しを変えまして、当blog的、2012年、興味深かったトレンド?まず、2012年は、「ソヴィエト」がおもしろかった!まずは、サロネンの指揮、L.A.フィルらによるショスタコーヴィチの再発見されたオペラ『オランゴ』のプロローグ(Deutsche Grammophon/479 0249)。もしかすると『鼻』より刺激的な作品になったかも... と、思わせるそのプロローグ。物語のブっ飛び感といい、キッチュでチープなサウンドが炸裂していて、西欧にはないソヴィエトのセンス、その魅力というものを、改めて感じ入る。しかし、未完に終わったことが残念!
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それから、ヴァシリー・ペトレンコ+ロイヤル・リヴァプール・フィルによるショスタコーヴィチの2番の交響曲、「十月革命に捧ぐ」(NAXOS/8.572708)。かつてはプロパガンダとして機能しただろうあたりも、今となっては、多少、滑稽さも含んで妙に劇画調で、いやそのあたりこそがかえって新鮮でカッコいいのかも。また、ヴァシリー+ロイヤル・リヴァプール・フィルのショスタコーヴィチのシリーズも折り返しを過ぎ、深化を感じさせる内容で。新世代マエストロの成長っぷりも、何だか微笑ましい... で、次作はとうとう7番(NAXOS/8.573057)!
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さて、今、静かに再発見が進む、ソヴィエトで活躍した作曲家、ヴァインベルク... スヴェドルンドの指揮、イェーテボリ響によるヴァインベルクの20番の交響曲と、グンナルソンをソロに迎えてのチェロ協奏曲(CHANDOS/CHSA 5107)は、魅力的な1枚。ショスタコーヴィチばかりでないソヴィエトの音楽を知らしめつつ、ソヴィエトが持つ音楽的気分が広がって。そうして見つめ直す「ソヴィエト」... 音楽のみならず、社会主義リアリズムという名の検閲が生んだ独特さというのは、21世紀には、ちょっと不思議にポップに映る。

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もうひとつ、当blog的、2012年、興味深かったトレンド?ピリオドからのヴィルトゥオーゾの時代の再発見!まず、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニによる"Le Paris des Romantiques"(ambroisie/AM 207)。パリのロマン主義にスポットを当てた1枚は、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニのコンサート・マスター、ショーヴァンのヴァイオリンでベルリオーズの「夢とカプリッチョ」と、シャマユが弾くリストの1番のピアノ協奏曲を取り上げて。往時の華麗さと、アカデミズムに収まる前のエンターテイメントとしての煌めきがクール過ぎる!
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一方で、ヴィルトゥオーゾの時代のエンターテインに踊ることなく、滴るような瑞々しさ聴かせてくれた、イブラギモヴァが弾くメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(hyperion/CDA 67795)が新鮮!ヴァイオリン協奏曲の結晶のような名曲に、ピリオドであることを活かしつつ、どっしり構えて、上っ面だけじゃない、ヴィルトゥオーゾの時代の迫力を響かせる!ウラディーミル・ユロフスキの指揮、OAEの演奏も見事!メンデルスゾーンの音楽の中身の詰まったところを存分に響かせて、美しいだけではない旨味のパワーにだたならず魅了された。
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ヴィルトゥオーゾの時代を彩った名曲というのは、どこか軽いようで、また軽く見られがちなのかも... が、けしてそうではない!というのを聴かせてくれた、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管の演奏でロンクィヒが弾くショパンの2番のピアノ協奏曲(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 031)。ロンクィヒの奏でるノスタルジックで温かなタッチもすばらしいのだけれど、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管による雄弁なサウンドに魅了された!ショパンはオーケストラだってすばらしいのだ!という自信が放つカッコ良さ!

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という具合に、挙げ出すと、止まりません。リリースこそ減ったとはいえ、そのおもしろさは、より濃度を増した観もある2012年。そして、最も印象に残るアルバムは?ファゾリスの指揮、コンチェルト・ケルンの演奏、ジャルスキー、ツェンチッチら、カウンターテナーが5人も居並んで歌いまくる!ヴィンチのオペラ『アルタセルセ』 (Virgin CLASSICS/6028692)。とにかく、驚いた。あらゆる点で驚いた!まず、何と言っても、カウンターテナーが5人もキャスティングされたということ!なかなか他には無い事態だ。となると、女声は無し。かつてのように、女性役もカウンターテナーでカヴァーするという、徹底ぶり... 女性が舞台に立てなかったという、当時の法律的な枷に、今、改めて挑むのだから、驚かされる。で、挑んでみて、そこに必然性を見出すから、さらに驚いた!最も低い音を歌うのがテノールということで、全体に異様に高い声域でドラマが繰り広げられるのだけれど、高低でコントラストを付けずとも、見事にキャラクターを描き出すヴィンチの手腕に驚く。さすがはナポリ楽派の巨匠!そして、高い声域のみで紡がれるドラマの独特な雰囲気!それは、神々しい輝きに包まれていて、浮世離れした感覚があるのか... どこか辛気臭く感じるオペラ・セリアも、浮世離れした輝きで包めば、その端正さが際立ち、圧倒的な音楽体験をもたらしてくれることを初めて知る。そして、この困難なミッションをやり切った歌手たちの驚くべきパフォーマンス!カウンターテナーのレベルが、今、さらに上がっていることを思い知らされるような、超絶技巧に表現力!忘れてならないのが、彼らをまとめ切ったファゾリスの指揮... さらには、活きのいいコンチェルト・ケルンの演奏... もう、とにかく、この『アルタセルセ』は、驚きの玉手箱、圧巻でした。
ということで、終了!

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