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春の訪れを探して、クープラン。 [2005]

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春一番が吹いた。そして、緩む陽気に、思わず感動を覚えてしまう。
ふんわりと暖かい春の空気感に包まれて、それまでの緊張が一気に解けるような... 冬、寒いのは当たり前だけれど、この冬はより厳しかったのだなと、緩んでみて強く感じる。そして、その寒さからの解放感たるや!あらゆることが軽く感じられて、たまらなく浮き立つ感覚に充たされて、地球を覆い尽くすあらゆる難問も、ポジティヴに受け止められそうな、そんな気分。って、一気に頭の中までが春?というのは困るのだけれど、「春」の訪れというのは、ある種の麻薬作用があるのかもしれない。間違いなくテンションは上がる!春はやっぱりすばらしい!
ということで、春を見出す?そんなサウンドを求めて、ヴェルサイユを美しく彩った上品な作品を引っ張り出して来る。2005年にリリースされた、ジョルディ・サヴァールが率いるル・コンセール・デ・ナシオンによる、クープランの王宮のコンセール(Alia Vox/AV 9840)を聴き直す。

久々に聴く、クープランの王宮のコンセール... フランス・バロックを代表する名曲のひとつだが、そんな名曲を改めて聴き直してみると、そのフランス・バロックならではのトーンが、思い掛けなく新鮮に響いて。それでいて、フランスのバロックが持つ独特のセンスに深く感じ入る。このセンスは何だろう?「バロック」というと、際立ってステレオタイプが存在するように感じるが、一方でフランス・バロックというのは、そうしたステレオタイプと少し距離があって、不思議な存在感を示す。もちろんそれは意識的に距離を取った部分もある。最先端を行っていたイタリアを強く意識し、常に独自の路線を模索したのがフランスのバロック期の音楽の歩みであって... しかし、そうした国粋的とも言える状況ばかりでなく、そもそもフランス人が奏でる音楽、そのDNAに編み込まれている独特のセンスというものが、知らず知らずにフランス・バロックに働いていたように感じる。
王宮のコンセールの、ことさら強調されることのない、本物の品の良さ... 絶対王政の絶頂期、ヴェルサイユの王宮を飾った一曲ではあるけれど、太陽王の豪奢で威圧的な気分とはまったく反対のベクトルを示す音楽であって... さらには、何ともいい具合に古臭い... だからこそ、表情に丸みを帯び、コンセールを構成する小品の数々から温もりが感じられ、絶妙のユルさを見せる。また、時折、飄々としたところがあって、キャッチーなメロディ、リズムにも彩られ、人懐っこい。で、ふと思う。これって、フレンチ・ポップ?もちろん、安易に同列に並べるべきものではないけれど、王宮のコンセールのセンスが、やがて時代を経て、フレンチ・ポップへとつながるような... クープランの音楽を聴いていると、フランスの音楽の流れをぼんやりと感じてしまう。そして、やがてフレンチ・ポップへと至る流れを感じることのできるフランス・バロックだからこそ、また魅力的であって。クラシックの、特に「バロック」の、堅苦しさから距離を取った瑞々しいサウンドに、時代を超越したセンスを見出すのか...
そんな、クープランを聴かせてくれたサヴァール+ル・コンセール・デ・ナシオン。まず、印象に残るのは、ル・コンセール・デ・ナシオンの豪華過ぎる面々... マルク・アンタイ(フラウト・トラヴェルソ)、ベルナルディーニ(オーボエ)、クレーマー(ヴァイオリン)、ボラス(バスーン)、コクセ(バス・ドゥ・ヴィオロン)、ディアス・ラトーレ(テオルボ/ギター)、モリーニ(クラヴサン)... 今や、ピリオド/古楽の世界で、それぞれに先頭に立って活躍している演奏家たちが、それぞれに楽器の性格を活かしつつ、サヴァールの下、より親密なアンサンブルを聴かせるのだから贅沢。4つのコンセール、全25曲の一曲一曲は、それぞれに編成が異なり、楽器の入り替わりは激しいのだけれど、そういう忙しなさを一切感じることなく、とにかくナチュラルに、4つのコンセールが織り成されてゆくあたりは、まさにアンサンブルの妙。誰かの存在が際立つのではなく、見事なまとまりを見せる。
が、そうした中で、やはりサヴァールの存在は大きい。25曲、全てで奏でるわけではないのだけれど、サヴァールのバス・ドゥ・ヴィオールの深い低音が、この王宮のコンセールの方向性を決める。手堅くも、より素朴な風合を押し出すその演奏は、作品の素の姿を丁寧に浮かび上がらせて、王宮の華麗さに浮ついてしまうことなく、「落ち着き」で全体をまとめる。サヴァールなればこその落ち着き... キラキラとしたフランス・バロックも、サヴァールの手に掛かれば、やっぱりサヴァールのトーンに染まるのか。いや、染まってこそ、フランス・バロックならではの輝きがより際立ちもするから、おもしろい。そして、そのさり気ない輝きが、何だか春を思わせて... 最後に、一瞬、鳥の声が聞えて来るのがまた、春めいて...

FRANÇOIS COUPERIN Les Concerts Royaux 1722
LE CONCERT DES NATIONS ・ JORDI SAVALL


フランソワ・クープラン : 王宮のコンセール

ジョルディ・サヴァール/ル・コンセール・デ・ナシオン
マルク・アンタイ(フラウト・トラヴェルソ)
アルフレード・ベルナルディーニ(オーボエ)
マンフレート・クレーマー(ヴァイオリン)
ジョゼプ・ボラス(バスーン)
ブリュノ・コクセ(バス・ドゥ・ヴィオロン)
シャビエ・ディアス・ラトーレ(テオルボ/ギター)
グイド・モリーニ(クラヴサン)
ジョルディ・サヴァール(バス・ドゥ・ヴィオール)

Alia Vox/AV 9840




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