SSブログ

二〇〇六、交響曲から... [overview]

新たな年が始まったばかりなのだけれど、7年前に戻りまして...
2006年。十年ひと昔とは言うけれど、すでに7年でもかなりの昔。そんな昔を聴き直した昨年。今、クラシックはますます厳しい状況にあるわけだが、そこから振り返る2006年のクラシックは、モーツァルトの生誕250年に沸き、何とも花やか!こんな時代だったかと、ちょっと隔世の感すらある。そして、その花やかだった頃のリリースを聴き直していると、クラシックそのものを再確認するようなところがあって。やっぱり、クラシックはすばらしいのだ!と、密やかに思いを強くしたり?そんな2006年のリリース、2006年の時点で取り上げていた35タイトルと、昨年、取り上げた65タイトル、合わせて100タイトルを振り返っての2006年のベストを、これから3回に渡って選んでみようかなと。(ちなみに、2012年のベストは、ウーン、もう少し先となるかなと。)
ということで、今回は、交響曲からピアノまで...

さて、まずは交響曲から... で、お馴染みの名曲から、なんですかそれ?というくらいマニアックな作品まで、ピリオドに、モダンに、ピリオドとモダンのハイブリットに、かなりの幅で、様々に楽しんだ2006年の交響曲。どれもこれも印象に残るものばかりなのだけれど、その中でも、特に印象に残る2タイトル...
1010.gif
1010.gifHMC901921.jpg1010.gif
ピリオドによるブルックナー... 今でこそ、それほどセンセーショナルではないものの、7年前はえらく刺激的に感じた。が、これこそ的を射たブルックナーなのかもしれない。そんな風にも思わせた、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管によるブルックナーの4番の交響曲(harmonia mundi FRANCE/HMC 901921)。ルネサンスのポリフォニーを聴くようなヘブンリーさと、その無垢な響きから発せられる純度の高いロマンティックさが凄かった...
1010.gif
1010.gif88697006552.jpg1010.gif
捉われることのない独自の世界を貫いた、モダンとピリオドのハイブリットによる、驚くべきベートーヴェンのツィクルス... それまでに体験したことのない感触に、最初こそ面喰ったが、改めて聴き直せば、これまでにない輝きを見出し、ただならず惹き込まれた、パーヴォ・ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィルのベートーヴェンの3番、「英雄」と、8番の交響曲(RCA RED SEAL/88697 00655 2)。この最初の1枚こそ、最高傑作なのかも...
と、2つのアルバムを選んでみたのだけれど、カリヴォダや、ヴェルフルの交響曲といった、音楽史を丁寧に紐解いて見えてくるマニアックな交響曲のアルバムも、思い掛けなく新鮮だった。それから、異様なテンションで奏でられた、マンゼ+イングリッシュ・コンサートによるカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの交響曲集(harmonia mundi FRANCE/HMU 907403)のインパクト!バロックと古典派に挟まれた多感主義の、驚くべき個性の発露を目の当たりにし、目が覚めるようだった。という具合に、様々なベクトルで、盛りだくさんだった数々の交響曲。本当におもしろかった。
1010.gif
1010.gifAV9846.jpg1010.gif
管弦楽曲で印象に残るのは?ウーン、絞り切れない!のだけれど、やっぱりモーツァルト・イヤー... まずは、サヴァール+ル・コンセール・ナシオンによるモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Alia Vox/AV 9846)。古楽で培われた旨味を古典派に垂らし込んで、いつもの無邪気なモーツァルトとは一線を画す、サヴァール流の雰囲気たっぷりの上質な大人の音楽に、魅了されずにいられなかった。
1010.gif
1010.gifZZT060901.jpg1010.gif
それから、インマゼール+アニマ・エテルナによるラヴェルのボレロ(Zig-Zag Territoires/ZZT 110403)。この名作をピリオドでやってしまうか?!という驚きと不安は、杞憂に過ぎず、ラヴェルの時代の楽器たちの、それぞれに持つ個性の旨味のパワーに圧倒される!ボレロという、特殊なミニマルな作品だからこそ、ピリオドの底力が試されて。試してみれば、モダンよりも存在感を際立たせるボレロが響き出すから、凄い!
1010.gif
1010.gif4776198.jpg1010.gif
もちろん、モダンによる近代音楽もすばらしく... サロネンが率いたロサンジェルス・フィルによるストラヴィンスキーの『春の祭典』(Deutsche Grammophon/477 6198)も、深く印象に残る。ピリオドではない、モダンなればこその、徹底した洗練の極み!驚くべき高次元から捉える近代音楽のアイコン、『春の祭典』の、肩の力が抜け切った、あまりに自然な様に、21世紀、進化を遂げたオーケストラの凄さに目を見張る!
1010.gif
1010.gifCD80618.jpg1010.gif
そして、演奏はもちろん、構成からジャケットまで、すばらしいセンスを見せる、パーヴォ・ヤルヴィが率いたシンシナティ響のルトスワフスキとバルトークの管弦楽のための協奏曲(TELARC/CD-80618)。近代音楽の鋭さと、東欧のフォークロワの臭いが漂う独特の音楽を、そうしたイメージから解き放つ変幻自在の演奏が凄い... サロネンの『春の祭典』とも共通する、20世紀音楽の素の姿に迫るあたりに感慨...
ということで、絞り切れずに4タイトルも選んでしまったのだけれど、他にもおもしろいアルバムはいろいろあって。そうしたものを全て挙げていると切りがないので、この辺にしておくのだけれど。オラモが率いたバーミンガム市響によるフォウルズの管弦楽作品集、第2弾(Waner Classics/2564 62999-2)や、ラトル+ベルリン・フィルによる、重力から解き放たれ、本当の意味での宇宙を体感するような、ホルストの『惑星』(EMI/3 59382 2)など、興味深さと、驚きと、新鮮さで、印象に残る。
1010.gif
1010.gif3447062.jpg1010.gif
2006年は、やっぱりモーツァルト・イヤー!ということで、協奏曲も、まずはモーツァルトから... ビオンディのヴァイオリンで聴く、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲集(Virgin CLASSICS/3 44706 2)。バロックで鳴らしたビオンディ+エウローパ・ガランテのノリで、そのまま繰り広げるモーツァルトの、何と活きのいいこと!それでいて、単に元気がいいばかりでなく、イタリアならではの艶っぽさ、伊達っぷりが絶妙で、カッコ良過ぎ...
1010.gif
1010.gifHMC901917.jpg1010.gif
さらにカッコいいのが、リコーダーの名手、シュテーガーによるテレマンの協奏曲と組曲集( harmonia mundi FRANCE/HMC 901917)。リコーダーの素朴な佇まいはどこへ行った?というくらいに、攻撃的に吹きまくるシュテーガーの超絶技巧に、舌を巻く。また、そういう凄い演奏があって、刺激的に響くテレマンの音楽!テレマンって、こんなにもおもしろかった?!という驚きすらあって、いやぁー、バロックはカッコいい!
1010.gif
1010.gifAlpha093.jpg1010.gif
そして、カッコの良さ、ここに極まり! コセンコのフラウト・トラヴェルソが火を吹く、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハのフルート協奏曲(Alpha/Alpha 093)。どこか、お上品なフルート... なんてあり得ない、コセンコの圧巻のパフォーマンス!アル・デイ・スオナトーリも凄い演奏を繰り広げて、多感主義のジェットコースターが、猛スピードと上がったり下がったり... 優雅な18世紀のはずが、手に汗握る...
実は、室内楽のアルバムをあまり聴いていないかった2006年... そういう状況で、ベストを選んでしまうことに、多少、不安もあるのだけれど... 一方で、取り上げたアルバムはどれもすばらしく、何なら全部、選んでしまう?なんてことも考えてしまうのだけれど、とりあえず、2タイトル...
1010.gif
1010.gif4776378.jpg1010.gif
ラクリンのヴァイオリン、今井のヴィオラ、そしてマイスキーのチェロという豪華な弦楽三重奏による、シトコヴェツキー版、バッハのゴルトベルク変奏曲(Deutsche Grammophon/477 6378)。弦楽器だからこその温もりと瑞々しさは、オリジナルを越えた美しさを湛えるのか?すばらしい演奏も相俟って、息を呑むお馴染みの名曲... そして、オリジナルを離れてこそ、普遍の美しさを見せるバッハの音楽にも、改めて深く感じ入る。
1010.gif
1010.gifSU38772.jpg1010.gif
ハース四重奏団による、ハースの2番の弦楽四重奏曲、「猿山より」(SUPRAPHON/SU 3877-2)。それは、若き作曲家のチャレンジングな試み... パーカッション付きという奇想天外な弦楽四重奏曲なのだけれど... これがクール!弦楽四重奏の渋いイメージを裏切って、刺激的な音楽を生み出したハース。その音楽を、ハース四重奏団の若さがより屈託の無いものとして、20世紀と21世紀の若い感性がスパークする。こういう作品があったのかという驚きと、断然おもしろいその音楽に、とにかく魅了される。
1010.gif
1010.gifHMC901898.jpg1010.gif
鍵盤楽器という括りで、ピアノの前にチェンバロも... で、とにかく驚かされた1枚、"Hamburg 1734"(harmonia mundi FRANCE/HMC 901898)。鬼才、シュタイアーが、1734年のハンブルクの音楽シーンを大胆に蘇らせるのだけれど、この人の描写力に改めて脱帽... そして、驚かせてくれる!チェンバロという楽器を徹底して鳴らして、チェンバロのスケール感を越えてしまう、シュタイアーならではの音楽世界は、凄い。
1010.gif
1010.gif4756935.jpg1010.gif
さて、ピアノでは... マエストラ、内田光子の、ベートーヴェンの最後の3つのピアノ・ソナタ(PHILIPS/4756935)が、深く印象に残る。内田光子ならではの、自由な音楽性と、ベートーヴェンの晩年のどこか浮世離れした境地が共鳴して、何物にも捉われない、超越した音楽世界を生み出すような、この不思議な感覚が、得も言えず心地良く、また静かに感動が打ち寄せるのか。キラキラしながら深いベートーヴェンに、聴き入ってしまう。
1010.gif
1010.gifAlpha098.jpg1010.gif
フランスのベテラン、ル・サージュによる、ピアノのみならず、ピアノを含む室内楽までをも網羅した、壮大なるシューマンのシリーズ、その最初の1枚、"An Clara"(Alpha/Alpha 098)。フランスから見つめるシューマンの、透明感を以って奏でられる、よりイマジネーション豊かな音楽世界は、シューマンのあらゆる要素を瑞々しく捉え、さり気なく美しい。そうして、改めてシューマンという存在を見つめ直す。

さて、オペラ、ヴォーカル... と、次回に続く...

交響曲 | 管弦楽曲 | 協奏曲 | 室内楽 | ピアノ
オペラ | ヴォーカル | 現代音楽 | 古楽 | ボーダーライン上のエリア




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。