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来たれ創造主なる聖霊よ。 [2012]

明けました。おめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いします。
そして、気持ちも新たに、更新初めではありますが、えー、ひとまず、クラシックは置いときまして... 結局、見てしまった紅白!ノー・ジャンルにして、トゥー・マッチ!美輪師曰く、オテンコモリ... まさしく、だな、と... しかし、盛り込み過ぎて、盛り切って、やり過ぎて、やり切っているから圧巻!目玉が無いなんて前評判は何だったのか?蓋を開ければ、「紅白」というバケモノ自体が目玉という落ち。何より4時間強、とにかく歌尽くしで、歌に絆されて、何だかわけわからんようになった頃、蛍の光を聴けば、2012年の穢れが落ちている感覚もあったり。紅白は、ある種の荒行か?音楽の滝に打たれ続けるという... で、音楽って、やっぱり凄い。年が改まる頃には、何か、もの凄くポジティヴになれているのだから!この調子で、2013年も、音楽に乗って行きたい!
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ということで、テンション高めに、華々しい音楽で2013年の始めようと思ったのだけれど... 正月の朝は、思いの外、静か... そういうものだと知ってはいても、この静けさに、ちょっと新鮮な感覚を覚え。何より、この非日常感が清々しく。師走を走り切った後でのこの静止した空気感に包まれて、今年、初めて聴く音楽は何だろう?やっぱり静かな音楽を聴こうと、ふと思い立つ... で、アルヴォ・ペルト...
ポール・ヒリアー率いる、シアター・オブ・ヴォイセズ、アルス・ノヴァ・コペンハーゲンの歌と、NYYDクァルテットによる演奏で、ペルトの作品集、"Creator Spiritus"(harmonia mundi/HMU 807553)。北欧の静謐なサウンドで、2013年、始めます。

静かな心地で、ペルトのシンプルなサウンドに改めて触れると、いつもと少し違う感覚を覚える。描き込まれていない空白に、より豊かなイマジネーションが広がるのか?1曲目、「来たれ創造主なる聖霊よ」が、始まりに相応しい新鮮な印象をもたらしてくれる。バウアーズ・ブロードベントの弾く、温かなオルガンを伴奏に、シアター・オブ・ヴォイセズのアンサンブルから、アルス・ノヴァ・コペン・ハーゲンのコーラスへと、ふんわりと広がりを見せ、その不思議な感触が何とも言えない。もちろん、いつものペルトならではのアンビエントさに包まれるのだけれど、何か、作品が未だ完成されていないような空白があるようで。その空白に掛かる、声とオルガンのやさしげな残響が、美しくも不思議な存在感の希薄さを生み。特に、歌が途切れた後の、思い掛けなく長く引き伸ばされるオルガンの音に、その余韻に、精霊の訪れの気配を感じるような... 短い作品ながら、聴く者のイマジネーションを刺激して、「ペルト」というイメージを越えて、心に響いてくる。
"Creator Spiritus"、「来たれ創造主なる聖霊よ」をタイトルに、前半はペルトの様々な小品を並べ、後半は、代表作、スターバト・マーテル(track.10)を取り上げる。そうして、ステレオ・タイプで捉えがちなペルトという存在を、改めて丁寧に聴く機会を与えてくれるのか。アルス・ノヴァ・コペンハーゲンのア・カペラのコーラスによる「鹿の叫び」(track.2)、シアター・オブ・ヴォイセズのソプラノ、トープがオルガン伴奏で歌う「我が心はハイランドにあり」(track.6)、NYYDクァルテットによる詩篇(track.3)、弦楽四重奏版の「ソルフェッジョ」(track.5)など、ペルト作品ならではのトーンに貫かれながらも、多彩なスタイルの作品を並べることで、「ペルト」というステレオ・タイプを少し乱反射させて、今、新たにペルトを聴くような、新鮮さを感じる(初めて聴く作品... という発見も!)。そこから、代表作、スターバト・マーテル(track.10)を聴けば、よりペルトの音楽世界を深く探るようで、これまで以上に、そのシンプルなサウンドにインパクトを感じてしまう。静謐で美しく、アンビエントな癒しは、現代音楽にしてこの上なく魅力的ではあるのだけれど、シンプルなればこその多くの余白には、時代の抱える痛みや、諦めもあろうか、そうした様々な感情が仄暗く佇むようで、何か心に沁みて、ヒリヒリする。
そんなペルトを聴かせてくれる、ヒリアー... 自身もバリトンとして参加するシアター・オブ・ヴォイセズ、指揮するアルス・ノヴァ・コペンハーゲンと、クリアなだけではない、よりヒューマニスティックなオーラを放つハーモニーを紡ぎ出して、印象的。特に、シアター・オブ・ヴォイセズによる、最後のスターバト・マーテル(track.10)... 聖母の嘆きを歌うだけに、北欧の寒々とした風景にさらされるような音楽ではあるけれど、そういう音楽を歌いながらも、どこかで聴く者に寄り添うような、やさしさを感じ、救いがある。一方で、その歌声を支えるNYYDクァルテットの鮮烈さは、そうした救いさえ寄せ付けないほどの圧倒的なサウンドを放ち、厳しさを極めた美しさを見せる。この、人の声と、弦の響きのコントラストが、エモーショナルさを生み、アルバムをドラマティックに締める。それにしても「来たれ創造主なる聖霊よ」から、スターバト・マーテルまでの振れ幅が凄い... そんなペルトという作曲家に、改めて興味を持ってしまった"Creator Spiritus"だった。

PÄRT Creator Spiritus THEATRE OF VOICES / ARS NOVA COPENHAGEN / HILLIER

ペルト : 来たれ創造主なる聖霊よ ***
ペルト : 鹿の叫び *
ペルト : 詩篇 *
ペルト : 最も聖なる神の母 *
ペルト : ソルフェッジョ *
ペルト : 我が心はハイランドにあり **
ペルト : エルサレムに平安あれ *
ペルト : 巡礼の歌 **
ペルト : 明けの明星 *
ペルト : スターバト・マーテル **

シアター・オブ・ヴォイセズ *
エルセ・トープ(ソプラノ) *
ポール・ヒリアー/アルス・ノヴァ・コペンハーゲン *
クリストファー・バウアーズ・ブロードベント(オルガン) *
NYYDクァルテット *

harmonia mundi/HMU 807553




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