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19世紀、ザッツ・エンターテイメント! [2011]

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そう、2011年は、リストの生誕200年のメモリアルだった。
けど、あまりリストを聴かなかったよな。と、振り返る。もちろん、メモリアルだからって、変に騒ぐ必要はないのだけれど、何となく通り過ぎてしまったリストのメモリアルに、あれ?という気持ちにもなる。そもそも、クラシックにおいて、リストという作曲家の位置付けが、微妙なのかも... と、漠然と思うことがある。伝説のピアノのヴィルトゥオーゾとして記憶され、多くのピアノ作品(もちろん、超絶技巧!)を残すも、何となくショパンほどの圧倒的な人気はないのか... 交響詩というジャンルを開拓し、オーケストラ作品でもいい仕事を残しているはずが、意外と取り上げられてなかったりと... リストという名前には、とても華やかなイメージがありながら、その実態は霞みがち?それだけ、リストが生きた19世紀、ロマン主義の時代というのは、個性、際立つ存在がひしめいてる、ということなのだろうけれど。リストをもっともっと聴いてみたかったな... いや、単に探す努力を怠っていただけかもしれないけれど...
ということで、アンドルー・リットン率いる、ベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団の演奏で、スティーヴン・ハフが弾く、リストとグリーグのピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67824)を聴く。

何と言いますか、これぞクラシック!コッテコテやん... とか、思いつつも、嫌いじゃない!というより、おもいっきり楽しんでしまう、リストの1番(track.1-4)と2番(track.5-8)、そしてグリーグのピアノ協奏曲(track.9-11)。やっぱり、人気作というのは、それだけの魅力が間違いなくある。問題は、それをどう音にしてゆくかであって... そういう点、ハフならば、新しい感覚を以って、カッコよく響かせてくれることは間違いないわけで... もちろん、期待を裏切らない。ハフ流に「コッテコテ」を盛り上げて、のっけからノックアウト!
改めて、ハフのピアノに触れ、その希有な音楽性に驚かされ、魅了される。リストとグリーグという、ピアニストならば欠かせないレパートリー、クラシック・ファンならずとも耳にしているコンチェルトの、どうしようもないほどの人気作なればこそ、余計にハフの切り返しが鮮やかに映えて。それぞれの作品を、隅々まで徹底して洗い切って、音符と音符の間が少しスカスカになるくらいまでクリアな状態にしてから、ハフならではの、どこか飄々としつつ、大胆でもある、ウィットに富んだ音づくりを繰り広げる。すると、19世紀のコンサートを賑わせたであろう、華麗なヴィルトゥオージティは、その時の熱気とともに鮮やかに蘇るようであり。"クラシック"ではなく、19世紀のエンターテイメントとしてのコンチェルトを聴く思い... 特に、リスト!この作曲家は、間違いなくエンターテイナーだ...
1曲目、1番の1楽章、あのイカニモなオーケストラの出だしから、切れ味鋭く、コッテコテに響かせて、そのやり切り感がかえって清々しく、ハフのみならず、リットン+ベルゲン・フィルまでも、エンターテイメントを鮮やかに決めてくる。そこに、まるで電飾のようにピカピカしているハフのピアノが颯爽と登場。軽やかにして派手、何よりキレていて、鮮烈なハフのタッチ... もはや、クラシックをやっているとか、コンチェルトを弾いているとか、そういう理屈を一切、取っ払ってしまって、エンターテイニングに忠実な姿勢が圧巻!2番の最後、アレグロ・アニマート(track.8)のグリッサンドなんて、火を吹きます!思わず笑ってしまうくらいに... そして、それを、芸術的なクウォリティをしっかり保って... いや、驚くべきクウォリティで以って繰り広げる。驚異のヴィルトゥオージティ。凄い。
続く、グリーグも、やはりエンターテイメント... インパクトある1楽章(track.9)の始まりから、コッテコテに盛り上げてくる。のだが、やはりグリーグの性格もあって、よりロマンティックに響かせる。そうしたあたり、ハフは、実にフレキシブルに、トーンを変えてくる。そこに、リストとコントラストを付けるようでもあり、おもしろい。特に、2楽章(track.10)の始まり、それまでとはまったく違う透明感を見せて、はっとさせられる。そこから、狂おしいほどの瑞々しさで、オーケストラとともにロマンティシズムを溢れさせる。嗚呼、19世紀... 21世紀から見つめると、気恥ずかしくなるようなところも無きにしも非ずだけれど、その突き抜けたピュアなロマン性というのは、クラシックの醍醐味か... しかし、そういうあたりにいつまでも浸っていないのがハフであって。だからこそ、全体が締まる!くっきりと気分を切り替えてくる終楽章(track.11)、そのあまりに鮮やかな態度に、クラクラしてしまう。
これは、何なのだろう?場合によってはキッチュとも思えなくもない、劇画調のリストであり、グリーグ... ハフはもちろん、リットン+ベルゲン・フィルまで、ヤリ過ぎか?というようなギリギリ・ラインに挑んで、極めようとしてくる。そうして生まれる驚くべきエンターテイメント性。そんな演奏に触れると、"クラシック"という捉え方、在り方に、疑問を感じ始めるのか... 何より、エンターテイメントこそ、19世紀の、ヴィルトゥオーゾたちの時代の、醍醐味なのでは?と、偉大な過去ではなく、共感し得る過去への思いを強くする。
何はともあれ、元気になる!ちょっと煮詰まって、先が見えなくなった時は、こういう竹を割ったようなコッテコテが、カンフル剤に。まったくクールかつホット!

GRIEG ・ LISZT PIANO CONCERTOS
STEPHEN HOUGH ・ BERGEN PHILHARMONIC ORCHESTRA / ANDREW LITTON


リスト : ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S.124
リスト : ピアノ協奏曲 第2番 イ長調 S.125
グリーグ : ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16

スティーヴン・ハフ(ピアノ)
アンドルー・リットン/ベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団

hyperion/CDA 67824




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