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オリジナルを求めて... 管弦楽組曲... [2011]

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G線上のアリアでお馴染みの、バッハの管弦楽組曲... あまりに定番過ぎて、あまり顧みることもなかったのだけれど、今、我々が耳にしている版とは違う、オリジナル版があった。と、知って、ちょっと興味を持つ。といっても、そのオリジナル自体はすでに存在しておらず、今ある版から、バッハが最初に完成させた管弦楽組曲を再現する... とのこと。で、そのオリジナルの再現に取り組んだのが、パウル・ドンブレヒト率いる、ベルギーのピリオド・オーケストラ、イル・フォンダメント。彼らの演奏を聴くのも久々で、ピリオド・アプローチによるバッハを聴くのも久々かも... と、オリジナル再現版、4つの管弦楽組曲(FUGA LIBERA/FUG 580)を聴いてみることに。

正直に言うと、管弦楽組曲をそれほど魅力的だとは感じて来なかった。G線上のアリアがお馴染みになるくらいキャッチーで、当然、人気作であり、バロックものの定番なわけだけれど、そのあたりに、何となくユルさを感じ... 何より、ストイックなバッハの音楽世界からすると、どうも派手。というか、笛に、ラッパに、太鼓に... 派手だけれど、しっくりこない... ような... そこに、オリジナル再現版の登場。バッハがライプツィヒに移る以前の、ケーテン、あるいはヴァイマルの宮廷で作曲されたであろう管弦楽組曲。ライプツィヒほど充実した音楽環境にはなく、楽団の規模も小さかったことから、そのオリジナルは今ある版に比べて地味なものだった?
その最初の規模に戻っての、ドンブレヒト+イル・フォンダメントの演奏。基本的に弦楽をメインに、1番と4番では、オーボエ(もちろん、ドンブレヒト自身も加わって... )が色を添えるというシンプルな編成(ファゴットも... )。1番こそ大きく変わることはないが、2番はフルートがヴァイオリンに置き換えられ、3番、4番に関しては、トランペット、ティンパニーがリストラされ、完全にダウングレード。宮廷風のゴージャス感は薄れ、祝祭的な晴れがましさは欠ける... のだけれど、宮廷の、ある種の軽薄さのようなものが洗い流されて、音楽がキリっと引き締まる!
特に、フルートがひらひらと舞うはずの2番(disc.1, track.8-14)などは、フルートがヴァイオリン・ソロに替わって、弦楽器の艶っぽさが前面に押し出され、短調の悲劇性は増し、よりドラマティック。まるでヴァイオリン協奏曲のようなその姿は、どこかヴィヴァルディのようでもあり(管弦楽組曲は、フランス風序曲のスタイルを借りたものではあるが... )、断然クール!そして、華やかなトランペット、祝祭的なティンパニーが取り払われた3番(disc.2, track.1-5)と、4番(disc.2, track.6-10)。いや、これぞ正解!音楽の形がくっきりと見えてきて、刺激的ですらある。もちろん、バッハによるオリジナルの正確なところはわからない。が、確信に満ちた1音1音を繰り出す、ドンブレヒト+イル・フォンダメントの演奏があまりに見事で、ただならず納得させられてしまう。
ベネルクスのピリオド・オーケストラならではの端正さと、ベネルクスにあって、また一味違う熱っぽさも持つドンブレヒト+イル・フォンダメントの演奏。メンバーひとりひとりの音楽性の高さを感じさせる、濃密なサウンドが、オリジナル再現版の、タイトに絞った響きと共鳴し、驚くほど雄弁。それでいて、何気ないフレーズで、粋なところを次々に聴かせてくれて、バッハの音楽を思いの外、魅惑的なものに仕上げてしまう。また、イル・フォンダメントのコンサート・マスター、ソロを務めるディルク・ファンダーレのヴァイオリンが、艶のある美音で歌い... G線上のアリア=3番のエア(disc.2, track.2)などは、聴かせどころ。そんな、ファンダーレに率いられた弦楽アンサンブルが、ジューシーなサウンドを織り成し、鮮烈ですらあって、バッハの音楽をグっと持ち上げる。
しかし、管弦楽組曲の見方が変わってしまう。こんなにもおもしろかった?と... 中部ドイツのローカルな音楽シーンで燻ぶっていたバッハのリアルを、完全に忘れさせる、大胆で、エモーショナルな管弦楽組曲、オリジナル再現版。今ある版から離れて、オリジナルに挑み、揺るぎない説得力を持たせてしまう、ドンブレヒト+イル・フォンダメントの凄さもあって、ノック・アウトの2枚組。

Johann Sebastian Bach - Complete Orchestral Suites
Il Fondamento - Paul Dombrecht


バッハ : 管弦楽組曲 第1番 ハ長調 BWV.1066 〔オリジナル再現版〕
バッハ : 管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV.1067 〔オリジナル再現版〕
バッハ : 管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV.1068 〔オリジナル再現版〕
バッハ : 管弦楽組曲 第4番 ニ長調 BWV.1069 〔オリジナル再現版〕

パウル・ドンブレヒト/イル・フォンダメント

FUGA LIBERA/FUG 580




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