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恐るべき、26年... ペルゴレージ! [2011]

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昨年は、ペルゴレージの生誕300年のメモリアルだったわけだけれど... どうだったろう?
アバドが、自身が創設したモーツァルト管とともに、ペルゴレージの教会音楽を中心に3タイトルをリリースして、気を吐いてくれたものの、他には目立つリリースは無く。イタリアのピリオド・オーケストラあたりで、新たな録音を、2つ、3つ、期待していたのだけれど、なかなか難しい?近頃、ナポリ楽派にスポットが当たりつつある中で、ナポリ楽派のモーツァルト的存在、ペルゴレージが、未だ、スターバト・マーテルの作曲家、という域から出ない現状が、もどかしい。ところに、ペルゴレージのオペラの全曲盤が登場!
アレッサンドロ・デ・マルキ率いる、アカデミア・モンティス・レガリスの演奏で、ペルゴレージのオペラ『オリンピアーデ』(deutsche harmonia mundi/88697807712)。昨年のメモリアル、インスブルック古楽音楽祭で上演された、ライヴ盤を聴く。

ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710-36)。
イタリア中部、イエジに生まれたペルゴレージ。一家は、イエジの北西の街、ペルゴラの出身だったことから、ペルゴラの人、という意味の"ペルゴレージ"で呼ばれ、いつの間にかそれが苗字に... というペルゴレージは、幼い頃から身体が弱かったようで、結核を患い、また足が不自由であったらしい。が、イエジで音楽の基礎を学び、才能の片鱗を見せると、地元の貴族の支援により、ナポリのポヴェリ・ディ・ジェズ・クリスト音楽院に入学。オペラの巨匠、ヴィンチ(1690-1730)、教会音楽の巨匠、ドゥランテ(1684-1755)に付いて学び、1731年、21歳でナポリの音楽院を卒業。翌、1732年には、オペラ・ブッファ『恋に落ちた兄』が大ヒット!そして、1733年には、音楽史にペルゴレージという名を刻むことになる作品、インテルメッゾ『奥様女中』が誕生する(フランスでブフォン論争を巻き起こすきっかけに... )。1734年には、宮廷副楽長代理となり、その後継者に指名され、24歳にしてナポリのトップのポストを約束される。が、結核で体調を崩し、1736年、名作、スターバト・マーテルを書き上げ、26歳で亡くなる。というのが、ペルゴレージの短過ぎた人生...
音楽院を卒業してから、たった5年... またその5年の間に、音楽史に大きなインパクトを残し... 驚かされる。が、音楽史に大きなインパクトを残したとは言え、クラシックというジャンルとしては、けして大きなインパクトになり得ていないのが現状。そこに、デ・マルキ+アカデミア・モンティス・レガリスによる『オリンピアーデ』の世界初録音。3枚組という見事な規模のオペラ・セリアに、スターバト・マーテルではないペルゴレージを、たっぷりと見つめ直す機会を与えてくれるよう。で、スターバト・マーテルではないペルゴレージが、実に興味深い!
オペラ史の流れを変えた『奥様女中』の翌年、スターバト・マーテルの書かれた死の前年、1735年、ローマで初演された『オリンピアーデ』。その初演は失敗だったようだけれど、音楽自体は豪華絢爛!その華やかさは、バロックを脱しようとする新しい息吹に満ち、モーツァルトの初期のオペラ・セリア(1770年代前半)のような印象すら受けてしまう(そもそも、モーツァルト少年こそ、イタリアを旅し、イタリアの最新モードを吸収してその基礎を築いたわけだが... )。あの渋いスターバト・マーテル(まるで17世紀作品のよう... )に比べると、驚くべきギャップ!まず、序曲が完全に古典派のサウンドを響かせる!そして、華麗なアリアの数々... ストラヴィンスキーのバレエ『プルチネッラ』に用いられたオリジナル(disc.2, track.4)も... なども含め、ナポリ楽派ならではのキャッチーさ、オペラ・セリアならではの大見得を切るようなあたりは圧巻で、聴き応え十分。で、これを聴いてしまうと、ペルゴレージをバロックの作曲家とは言い難くなってしまう。1730年代といえば、それこそナポリ楽派のプレッシャーを受け、ロンドンのヘンデルが悪戦苦闘していた頃であり、バッハとなると、中部ドイツのローカルな音楽シーンで、毎週、説教用のカンタータの作曲に追われていた頃... となると、18世紀、ナポリ楽派が、如何に音楽の最前線にあって... ナポリ楽派こそ、18世紀のモードを創り出していたことを思い知らされる。何より、ペルゴレージ、恐るべし!もし、あと10年、生きていたなら、さらに音楽史は大きく変わっていたかもしれない。
そんなペルゴレージを掘り起こしてくれた、デ・マルキ+アカデミア・モンティス・レガリス。イタリアのピリオド界にあって、けして過激さを売りにしない端正さが魅力の彼らだが、世界初録音となる作品には、絶好の存在かもしれない。とはいえ、端正だからといって、大人しい演奏をするわけでもない彼らであって、バロックを脱しつつある音楽の活き活きとした表情、ノリの良さ、古典派へと向かう充実したオーケストラをゴージャスに響かせ、ペルゴレージのオペラ・セリアの再発見に留まらない魅力を響かせる。そんな、アカデミア・モンティス・レガリスの演奏に乗って、華麗なアリアを歌い上げる歌手陣もすばらしく... アリステアを歌う、ラッファエッラ・ミラネージ(ソプラノ)の押し出しのよさには、特に魅了される。2幕のアリア"Tu me da me dividi"(disc.2, track.19)のマッドさなどは、見事!物語をドラマティックに盛り上げる。それから、クリスターネを歌うジェフリー・フランシス(テノール)の、豪快で朗らかな歌声も、印象深く。やはり2幕のアリア"So ch’è fanciullo Amore"(disc.2, track.13)の、キャッチーなあたりを、飄々と歌い上げるあたりに魅了される。
しかし、ペルゴレージだ... スターバト・マーテルだけでは語れない作曲家。ということを思い知らされる『オリンピアーデ』。さらにさらにペルゴレージを聴いてみたくなる。

L'OLIMPIADE PERGOLESI

ペルゴレージ : オペラ 『オリンピアーデ』

アリステア : ラッファエッラ・ミラネージ(ソプラノ)
アルジェーネ : アンベス・ソルヴァング(メッゾ・ソプラノ)
メガークレ : オルガ・パシェチニク(ソプラノ)
リチーダ : ジェニファー・リヴェラ(メッゾ・ソプラノ)
アルカンドロ : マルティン・オロ(カウンターテナー)
クリステーネ : ジェフリー・フランシス(テノール)
アミンタナ : マルクス・ブルッチャー(テノール)

アレッサンドロ・マルキ/アカデミア・モンティス・レガリス

deutsche harmonia mundi/88697807712




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