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二〇一〇、GLOSSAからカッシアまで... [overview]

2010年、聴いてきたアルバムの数々について振り返っているわけだが、そうしたアルバムを繰り出してくるレーベルはどうだったろうか?ゼロ年代、メジャー・レーベルの凋落をまざまざと目にしつつ、活気付くマイナー・レーベルの個性的な仕事ぶりに、大いに刺激を受け、楽しんできたわけだが、そうしたマイナー・レーベルの状況もまた厳しくなりつつあって... 10年代、クラシックのレーベルは、どうなってゆくのだろうか?と、先は見えにくい。そうした中、2010年、最も気になたレーベルが、GLOSSA。このスペイン発の古楽レーベル、近頃、何かと目立つような気がして... 目立つということは、存在感を増している?
ということで、まずは、そんな話しから...

GLOSSAといえば、ハイ・クウォリティで渋く、マニアックな古楽路線もあって、けして目立つようなレーベルではなかった。が、ここ数年、さらなる広がりを見せ始め、それがまた興味深いレパートリーを取り上げていて、どれもこれも気になった2010年、5タイトルも聴いてしまった。
新たなGLOSSAの顔になりつつあるのか、フラームス放送合唱団が歌うヴァイルのベルリン・レクイエム(GLOSSA/GCDSA 922207)に、青年ドビュッシーの極めて興味深い声楽作品を集めた"Music for the Prix de Rome"(GLOSSA/GCD 922206)。ローマ賞を巡っては、サン・サーンスを取り上げる続編(GLOSSA/GCD 922210)もリリースされて、シリーズ化されるのか?いや、是非ともして欲しい!というより、こういうところに目を付けてくるところが、今のGLOSSAの気になるところ...
で、古楽/ピリオドの老舗としてのGLOSSAならではのアルバムも、もちろん充実していて... ピリオドのハープの名手、ガラッシによるヘンデルのアルバム、"MICROCOSM CONCERTO"(GLOSSA/GCD 921303)。ハープでヘンデルを... という、斬新かつセンスの良い切り口が印象に残る。それから、近頃、グレトリが静かにブーム?というあたりも目ざとく拾い上げて、ニケ+ル・コンセール・スピリチュエルによるグレトリのオペラ『アンドロマク』(GLOSSA/GCD 921620)は、トラジェディ・リリクの伝統を受け継ぐ、古典派の時代のフランス・オペラの魅力を余すことなく伝えてくれた。そして、新たにGLOSSAのアーティストに名を連ねたナポリ楽派のスペシャリスト集団、フローリオ+イ・トゥルキニによるカレザーナのカンタータ集(GLOSSA/GCD 922601)も興味深いもので... これからは、GLOSSAにて、ナポリ楽派を体系的に聴けることになるのか?フローリオ+イ・トゥルキニの活躍が、今後が大いに楽しみになる。
いや、GLOSSAそのものの今後の展開が楽しみになる!
おまけに... レコード会社(という位置付けで良いのか?)で気になったのがouthere。Ricercar、Fuga Libera、Alpha、Æon、OUTNOTEに、Ramée、Zig Zag Territoiresが加わり、ヘレヴェッヘの自主レーベル、PHIまでもがその傘下で誕生し... 今、刺激的でおもしろいことをするレーベルは、どれもouthereという勢い... で、この勢い、どこまで続くのか?今後が楽しみに。

さて、このあたりで、2010年のアルバムを振り返る。に、戻りまして...
古楽とは、マニアックである... を、思い知らされた、サヴァールによる恐るべき中世音楽絵巻、『忘れ去られた王国・カタリ派の悲劇・アルビジョワ十字軍』(Alia Vox/AVSA 9873)。そのマニアックさにタジタジになりながらも、サヴァールによって丁寧に紹介される中世、南フランスで起きた異端を巡る悲劇を見つめると、暗黒の時代、ルネサンス以前の停滞した中世像... そんなステレオタイプを覆す史実を再発見させられるようで、地中海文化圏の残照、その姿、極めて興味深かった(いや、カタリ派は刺激的!)。そして、大いにジャンルの壁を揺るがす1枚、プルハル+ラルペッジャータによる刺激的なアルバム、"VIA CRUCIS"(Virgin CLASSICS/6071070)。こちらも地中海文化圏のパッションをそのままに、独特の受難曲を編んで、鮮烈に印象に残る。
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で、2010年の古楽、最も印象に残ったアルバムが、カッシア(CHRISTOPHORUS/CHR 77308)。初めてその存在を知った、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンよりも古い作曲家。ビザンツの修道女、カッシア(ca.810-bef.865)によるビザンツ聖歌集。女声ヴォーカル・アンサンブル、ヴォーカメの美しい歌声と、オリエンタルな雰囲気を漂わせるカッシアの音楽が絶妙で、これまでの中世像とはまた一味違うヴィヴィットさがあり、最も古く遡る作曲家の作品でありながら、どこか現代的なセンスを感じるような。何とも言えず不思議サウンド... 不思議ハーモニー... そんな、謎めくようなところが魅惑的!まだまだ知らない世界が広がる、古楽の際限の無さを思い知らされる1枚だった。
最後に、当blog、恒例というか、何と言うか... クラシックにして、他のジャンルへと越境するような、ボーダーライン上にあるサウンドを求めて... いや、そういう音楽が好きでして... そんなアルバムについても振り返る。で、まず印象に残るのが、ジャズとア・カペラのコラヴォレーション、サックスのガルバレクと、ヒリアード・アンサンブルによる"Officium Novum"(ECM NEW SERIES/476 3855)。伝説の"Officium"(ECM NEW SERIES/445 369-2)の続編というとで、期待の1枚は、さらに深化しているようでもあって、聴き入るばかり... それから、クレーメルとクレメラータ・バルティカによる"De Profundis"(NONESUCH/7559.79969)。このアルバムの、クラシックはもちろん、現代音楽、タンゴ、映画音楽まで、幅広いジャンルを網羅しつつ、ひとつのトーンで、さらりと1枚にまとめ上げたセンスに感心させられる。こういうフレキシブルさで、センスの良いコンピレーション的アルバムを、クラシックというジャンルはもっともっと生み出して良いのでは?
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そして、ボーダーライン上のエリアにある、最も印象に残る1枚が、DGが契約した鳴り物入り(?)のパーカッショニスト、グルビンガーによる"DRUMS 'N' CAHNT"(Deutsche Grammophon/477 8797)。グレゴリオ聖歌の古い録音に、グルビンガーらによるパーカッションの新たな録音を重ねたら... という、老舗DGでは考えられないような禁じ手を繰り出す、チャレンジングなアルバム。いや、こういうのがありましたかと、目が覚めるようなサウンド!ワールド、ジャズ、ラテン... あらゆる要素に彩られるグレゴリオ聖歌の鮮やかさは、クール!そんな、グレゴリオ聖歌の変容っぷりは見事だし、淡白極まりないはずのグレゴリオ聖歌を変容させてしまったグルビンガーのアイディア、センスに脱帽!

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