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わたしたちは、天上での喜びを... [2010]

明けました。おめでとうございます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
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さて、マーラーのメモリアルがちょうど折り返し地点を迎える。生誕150年の2010年から、没後100年の2011年へ。後半戦、ますます盛り上がることを期待しつつ、前半戦を振り返ってみれば... 想像以上に収穫は大きかったように思う。気になるマエストロたちが次々とマーラーの交響曲をリリース、注目のツィクルスも快調に進んでおり、メモリアルなればこその珍しい版での演奏や、ピアノ版による交響曲の録音などもリリースされてマニアック。さらにはマーラー版の第九まで... メモリアルなればこその、充実した1年だったように思う。
そんな2010年を締め括るようにリリースされた、フィリップ・ヘレヴェッヘが率いる、ピリオド・オーケストラ、シャンゼリゼ管弦楽団による4番の交響曲(PHI/LPH 001)を聴く。とうとう、マーラーの交響曲も、ピリオドの範疇に捉えられることになったかと感慨もありつつ... いや、こういうの、待ってました!

鈴の音に導かれて、そっけないくらいに始められる1楽章... だが、ふと気が付くと、おとぎ話の世界に彷徨い出てしまったような、そんな気分になる。いや、何というメルヘン!「交響曲」とはいえ、堅苦しさは控え目の、マーラーの4番の交響曲。ヘレヴェッヘの手に掛かると、さらに「交響曲」であることを忘れてしまいそう。ちょっぴり不可思議で、それでいて楽しげな"お話し"を、まどろみの中で、少しどきどきしながら聞いているような。"お話し"を聞きながら、夢現をフラフラして、時折、夢の中では、怖い思いもして... やがて子守歌を聴きながら、深い眠りへと落ちてゆく... 歌曲集『こどもの不思議な角笛』から発展した、ファンタジックな交響曲ではあるけれど、ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管による演奏は、ただならずメルヘンな仕上がり。こういう4番の交響曲を、これまで聴いたことがない。そして、この交響曲、こんなにもメルヘンだったのか?!と、驚かされる。
とは言え、ヘレヴェッヘは、ことさらメルヘンを強調するわけではない。それどころか、ヘレヴェッヘという存在すら希薄に感じられるほどで... 指揮者として、恣意的に音楽を動かすことなどせず、ただただシャンゼリゼ管を信頼し切って、音楽を自然な流れに任せるようでもあり。すると、個性的なピリオドの楽器は、自由闊達に歌い出し、ひとつひとつの楽器が存在感を示し始め。そうした楽器たちが、マーラーのスコアをなぞれば、音符のひとつひとつ、隅々までが、息づき、思わぬ表情が次から次へと浮かび上がる。その無邪気な姿が、何とも微笑ましくあり。その微笑ましさから紡がれるメルヘンは、ピリオド云々を越えて、説明抜きに強く魅了される。
それにしても、ピリオドのオーケストラでマーラーを聴くと、いつものモダンのオーケストラの響きが、如何に整えられ、きっちりまとめられているかがよくわかる。しかし、綺麗に整えられ、きっちりまとまってしまっては、響いてこない部分も間違いなくある。ピリオドのオーケストラでマーラーを取り上げるなど、どこか作為的な印象すら与えかねないわけだが、実は、モダンであることこそ作為的なのかもしれない... ヘレヴェッヘ+シャンゼリゼ管の演奏に触れてみれば、そんな思いが過る。
マーラーの時代の、モダンには成り切らない個性的なピリオドの楽器たち。その不器用なサウンドこそが、作品の無垢の魅力を引き出して、これまで感じることの無かったやわらかな温もりを知ることに。また、終楽章(track.4)でのジョシュア(ソプラノ)の歌声が、何ともやさしげで。そんな響きに包まれると、こどもの頃の遠い記憶の中に見出す幸福感を呼び覚まし... 21世紀の、殺伐とした中で生きなくてはならない現代人にとって、それは得も言えぬメルヘン。作為が無いところからこそ湧き上がる、純粋なメルヘンのように感じる。

Joshua - Orchestre des Champs-Elysées - Herreweghe Gustav Mahler Symphonie No.4

マーラー : 交響曲 第4番 ト長調

フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管弦楽団
ローズマリー・ジョシュア(ソプラノ)

PHI/LPH 001

ところで、これまでharmonia mundiを中心に活躍してきたヘレヴェッヘが、このマーラーのアルバムで、自主レーベルをスタートさせた。それが、Φ(PHI、フィー)。なのだが、harmonia mundiにて展開中の、ブルックナーの交響曲のツィクルスは、どうなってしまうのだろう?自主レーベルでのこれからの活躍を期待しつつも、ピリオドによるブルックナーのツィクルスは、何とか完遂して欲しいのだけれど...




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