SSブログ

ヘスス・クリスト・スーパー・ラテン・スター! [2010]

4777461.jpg
1010.gif
2000年、バッハ、没後250年のメモリアル... 国際バッハ・アカデミー・シュトゥットガルトにより委嘱された4つの受難曲、"PASSION 2000"プロジェクト。最もインパクトがあったのは、オスバルド・ゴリホフ(b.1960)による"La Pasión según San Marcos(聖マルコによる受難曲)"だったように思う。
4つの受難曲で、最も話題を集めたのは、現代音楽界にあって何かと華やかな存在、タン・ドゥンによる"Water Passion After St.Matthew(水の受難曲、聖マタイにならって)"。そして、リーム(ルカ)、グバイドゥーリナ(ヨハネ)という、現代音楽界の大御所たち... 振り返ってみると、ゴリホフへの委嘱は、抜擢でありチャレンジングだったように思う。で、生み出された受難曲は、他の3人の作曲家たちとは別次元で展開してしまった、異端の受難曲で... その世界初演のライヴ盤(hänssler CLASSIC/98.404)を聴いた時の衝撃は、とにかく強烈だった。一体、何が始まったのだろうかと... それから10年が経ち、改めて聴くゴリホフの受難曲は、どんな印象だろうか?
今や、名門、Deutsche Grammophonの看板作曲家(?)のような存在となったゴリホフ。堂々、黄色いレーベルからリリースされる"La Pasión según San Marcos"、新録音(Deutsche Grammophon/477 7461)を聴く。

初対面が強烈だと、それを超える刺激というものは、なかなか得られないのかもしれない。そして、どうしても、その初対面と比べるところから始めてしまう...
これまで味わったことのない音楽体験(現代音楽という枠組みで、ラテン・ミュージックを炸裂させる!)に面喰いつつも、ここまでやってしまっていいのか?という、突き抜けた音楽に、ただならず魅了された世界初演。しかし、それから10年が経ち、新録音(録音は2007年から2008年に掛けて... )を聴いてみれば、世界初演が意外にも洗練されたものに聴こえてくるからおもしろい。どうも、新録音は、ゴリホフに寄り切られてしまったか?クラシック、あるいは現代音楽という土俵に残っていないような感覚がある。「突き抜けた」のではなく、もう飛び出してしまっている。つまり、それは、ただただラテン・サウンド。で、飛び出したところで、新鮮味はあるのか?残っているからこそ、新鮮なのでは?少し、頭を抱えてしまう。
が、ライヴ録音(世界初演)とは違って、やりたいことをきっちり盛り込めたであろうセッション録音(新録音)。ゴリホフのヴィジョンは、より完成されたものになっているのだろう(だからこその、ただただラテン・サウンド。でもあるのだろうが... )。クラシック、現代音楽、"PASSION 2000"プロジェクト... という認識を、一度、頭から追い出して、新録音に向き合えば、音楽としてのおもしろさ、きらめきのようなものが、そこかしこに散らばっていることに気付かされる(ライヴ録音では見えなかった部分も... )。それでいて、形振り構わないラテン・サウンド!洗練、云々だの言っている場合ではない、フルスロットルのラテン・サウンドの持つ、圧倒的なパワーというのは、抵抗することの難しい魅力があって。時にプリミティヴに、また活き活きと爆ぜるパーカッション。ソロ・ヴォーカルのそれぞれに味のある歌声、アグレッシヴに歌い上げるコーラス。ホーン・セクションの決まっている様なんて、エキサイティング!これを聴いて、躍り出さずにいられるか?という「ラテン」の炸裂に、結局、呑み込まれてしまう。
それにしても、バッハの受難曲なんて、片鱗もない。いや、ラテン版、『ジーザス・クライスト・スーパー・スター』なんて、言ってみたくなる。おまけ(?)のDVD(2008年、オランダ・フェスティヴァルでの上演... )を見て、ふとそんなことを思う。古典(この場合、マルコの福音書... で、聖書を古典としてしまうのも、どうかと思うのだけれど... )を、どれだけ現代のリアルなサウンドに結び付けることができるのか?クラシックや、現代音楽というものを飛び越えて、ゴリホフは実験しているのだろうか?ならば、ゴリホフは、かなりのマッド・サイエンティストだ。ある意味、「異端」を通り越している。

OSVALDO GOLIJOV LA PASIÓN SEGÚN SAN MARCO

ゴリホフ : 聖マルコによる受難曲

ビエラ・ダ・コスタ(ラテン・アメリカン・アルト)
ジェシカ・リベラ(ソプラノ)
レイナルド・ゴンザレス・フェルナンデス(アフロ・キューバン・ヴォーカリスト)
ジョコンダ・カブレラ(アフロ・キューバン・ヴォーカリスト)
マノロ・マイレナ(アフロ・キューバン・ヴォーカリスト)
アレックス・アルベアル(ヴォーカル)
スコラ・カントルム・デ・ベネズエラ
マリア・ギナンド/オルケスタ・ラ・パシオン、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラのメンバー

Deutsche Grammophon/477 7461




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。