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ダブル・メモリアル! [2009]

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これ以上ないほど、メモリアルなタイトル!それも、ダブル・メモリアル!
ヘンデル、没後250年&メンデルスゾーン、生誕200年を同時に祝ってしまうスペシャルなタイトル... ヘンデルのオリジナル、完全版でのオラトリオ『エジプトのイスラエル人』を聴いての、メンデルスゾーン、アレンジによる、オラトリオ『エジプトのイスラエル人』(cpo/777 222-2)。これぞ、まさに、メモリアル!なあたりに、かなりエキサイト!それがまた、ヘルマン・マックス率いるライニッシェ・カントライ(コーラス)、ダス・クライネ・コンツェルト(ピリオド・オーケストラ)による演奏と来れば、折り紙付きで...
重箱の隅の突き方を心得ているcpoならではの、極めつけメモリアルなリリース。興味深いヘンデル+メンデルスゾーンによるコラボ(?)を聴く。

1739年、ロンドンで初演されたヘンデルのオラトリオ『エジプトのイスラエル人』。コーラス偏重?華麗なエア(=アリア)が少なかったあたりに、スター主義偏重のバロックの時代においては、人気を得ることなく失敗。作品は、忘れ去られ、埋もれることに... が、ロンドンを訪れたメンデルスゾーンが、そのスコアを発見。英語のテキストをドイツ語に翻訳(英語よりも、ドイツ語の方が、威厳に充ちて聴こえるからおもしろい... 旧約聖書の荘重さが増している?)し、バロックからロマンティックに仕立て直して、1833年、デュッセルドルフで蘇演されたのが、メンデルスゾーン版、オラトリオ『エジプトのイスラエル人』とのこと...
バッハのマタイ受難曲を蘇演させたメンデルスゾーンだけに、ヘンデルのオラトリオも手掛けていたとは、あり得そうで、これまで思い付かなかった。からか、何やら新鮮!そして、そのアレンジ、マタイとはまた違うテイストで、実に興味深いものを感じ。メンデルスゾーンの、よりヘンデルに通じるセンス(裏を返すなら、それは、バッハにはない、ヘンデルの先進性でもあって... )を見出すようで、おもしろい!
さて、そのメンデルスゾーン版だが... やはり、第2部からスタート。しかし、新たな序曲が用意されて... さすがはメンデルスゾーン!の一言に尽きる、充実したロマン派風序曲。この作曲家の端正さ、華麗さ、アグレッシヴさが、全開!これだけでも聴き応えは十分。それでいて、これだけを聴けば、これからヘンデルのオラトリオが始まるなんて、ちょっと思いつかないのだが、意外にスルスルっと、違和感なく始まってしまう第2部「出エジプト」(disc.1)。
メンデルスゾーンによる19世紀仕様のオーケストレーションが、バロックにはあった尖がった響きを、洗練させるようで、エジプトのイスラエル人のドラマに、落ち着きや、情緒を生み出していて。間違いなくヘンデルではあるのだけれど、メンデルスゾーンのオリジナルのようにも聴こえてしまうのがおもしろいところ。それでいて、メンデルスゾーンがこの後、書くことになる、オリジナルのオラトリオ、『パウルス』(1836)、『エリヤ』(1846)の源流が、まさに、ここにあるのだなと、納得。一方で、第3部「モーセの歌」(disc.2)では、逆に、ヘンデルのオリジナルに、すでにロマン派オラトリオの予兆があったように感じられ... ヘンデルからメンデルスゾーンへという、オラトリオの流れを発見するようで。それは、なかなか刺激的な体験。
で、そんな体験をもたらしてくれたマックス+ライニッシェ・カントライ+ダス・クライネ・コンツェルト... 一昨年リリースされたシューマン版、ヨハネ受難曲(cpo/777 091-2)の、すばらしいコーラス、演奏を思い返せば、メンデルスゾーン版、ヘンデルを聴くには、これ以上ないアンサンブルに違いない。で、もちろん、コーラス、オーケストラともに、期待に違わぬすばらしいパフォーマンス!シューマン版、マタイでもそうだったが、オリジナルはバロックでありながら、バロックではなくロマンティックの気分を絶妙に醸してくるあたり、彼らの器用さに感服。そして、コーラスのオラトリオだ... ライニッシェ・カントライの、ドイツのコーラスならではのハイ・クウォリティさ。その透明感はもちろん、ロマン派っぽさというのか、しっとりとした表情に、メンデルスゾーン版の魅力、特性を余すことなく伝えてくれている。特に、第3部「モーセの歌」の、力強く、輝きに満ちたコーラスが続く、フィナーレへと向かう盛り上がり(disc.2, track.16-20)は、たまらない。
一方の、ダス・クライネ・コンツェルトの演奏も絶妙。特に、序曲の鮮烈さ!コーラスのオラトリオでありながら、まず、その序曲にノックアウトされてしまう... もちろん本編でも、そのドラマティックな背景を、切れ味鋭いサウンドで響かせて印象的。またソリストたちも、総じてすばらしく、大満足。
ということで、マックス+ライニッシェ・カントライ+ダス・クライネ・コンツェルトによるメンデルスゾーン版、オラトリオ『エジプトのイスラエル人』は、発見と、すばらしいコーラスと、演奏と、これ以上ないほど、「メモリアル」となったのではないだろうか... それも、ダブル・メモリアルなあたり、見事。よくぞ取り上げてくれた!

Händel/Mendelssohn ・ Israel in Ägypten ・ Max

ヘンデル/メンデルスゾーン : オラトリオ 『エジプトのイスラエル人』

モニカ・フリマー(ソプラノ)
ヴェロニカ・ヴィンター(ソプラノ)
ハイケ・グレツィンガー(メッゾ・ソプラノ)
ハンス・イェルク・マンメル(テノール)
エッケハルト・エーベレ(バス・バリトン)
グレゴール・フィンケ(バス)
ライニッシェ・カントライ
ヘルマン・マックス/ダス・クライネ・コンツェルト

cpo/777 222-2




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