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めくるめくコーラス、オラトリオ。 [2009]

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ヘンデル、ヘンデル、ヘンデル...
没後250年、ヘンデルのメモリアル。ではあるけれど、バッハ(2000)や、モーツァルト(2006)に比べると、「メモリアル」に嫌味がないように感じる。のは、気のせいか?メモリアルは商売になる... ここぞとばかりに商売する!という感覚が、バッハやモーツァルトの時に比べると、薄い?"ハレルヤ・コーラス"、"水上の音楽"はあっても、ヘンデルという作曲家は、ネームバリューで劣るところ、あるのかもしれない... が、おかげで、やたら同じ名曲ばかりがリリースされる... ということが少ないようで、その充実したメモリアルに、満足!の一方で、あれもこれもと、目移りしてしまって困る。まったく、経済的に困る。
そんな中、未だ未体験のオラトリオを手に取ってみる。ケヴィン・マロン率いる、カナダのピリオド・アンサンブル、アレイディア・アンサンブルによるオラトリオ『エジプトのイスラエル人』(NAXOS/8.570966)。さすがはNAXOS!2枚組で、このプライス(¥2000強でした... )。でもってマロン+アレイディア・アンサンブルと来れば、満足するのはプライスのみならず!

普段はカットされる第1部(disc.1, track.1-13)も収録されて、完全版としてのオラトリオ『エジプトのイスラエル人』。というあたりが、このアルバムの売りのひとつ... とのことだが、カットする必要があるのだろうか?なんても思ってしまう、しっかりと聴かせる重厚な音楽。もともと、ヘンデルをサポートしてくれていたキャロライン王妃の葬送用アンセムを転用しての第1部。王妃を送る音楽を、ヨセフ(ヤコブの子、波乱万丈の末、エジプトの宰相に... )の死を悼む音楽に... が、やっぱり山場はモーセの登場と、その奇跡で... となると、物語的には、冗長な印象を与えるのかもしれない。1739年、その初演は、失敗に終わったらしい。
しかし、そこはヘンデル... 第1部を聴いてこその第2部、第3部。山場への持って行き方(登り方)は、なかなかで。"葬送"の重厚な音楽から、出エジプト=第2部(disc.1, track.14-29)の、風雲急を告げる展開と、前へと突き進むモーセの歌=第3部(disc.2)の、力強く、輝かしい音楽は見事!そうした合間には、このオラトリオの目玉?になるのかバロックの十八番、描写音楽。第2部、エジプトを襲う災厄のシーン... カエルがピョコンピョコン(disc.1, track.18)跳んでいる!ヒュルヒュルヒュルヒュル(disc.1, track.19)、イナゴがいっぱい飛んでいる!ポツンポツン、雨が降り出して、それが雹になって、空が荒れ(disc.1, track.20)狂う!そして、最大の見せ場は、海が割れる(disc.1, track.27)!ヘンデルによるそれらの音楽は、危機感よりも、ポップなエンターテイメント!といったあたりが、おもしろい。が、最大の目玉は、間違いなくコーラスだ。
コーラス、コーラス、コーラス!
その大活躍が推進力となって、一気に聴かせるオラトリオ。が、このコーラスの多用が、初演の失敗の要因でもあったらしい... 他のオラトリオに比べれば、コロラトゥーラの炸裂や、たっぷりと聴かせるエア(=アリア)が少な目。なのだが、"ハレルヤ・コーラス"の作曲家によるコーラスの魅力は、抗し難い。描写音楽などより、第3部の畳み掛けるように盛り上がっていく力強く、輝きに満ちたコーラスは感動的!
また、アレイディア・アンサンブルのコーラス部隊が大健闘!近頃のモード?ピリオドで用いられるコーラスは少人数傾向だけれど、アレイディア・アンサンブルは、少し余裕(?)を持って人数を揃え、しっかりとした手応え、迫力を聴かせてくれる。ヨーロッパの精緻さとは違う、コーラスそのものの、みんなで歌う!という感覚が、"イスラエル人"主役のオラトリオには、合っているのかもしれない... さて、そのコーラスにも参加するソリスト陣の歌も、要所要所で、しっかりと歌い、コーラス、テンコ盛りの中、アクセントとして、オラトリオ全体を引き締めてくれる。
そこに来ての、いつもながらのマロン+アレイディア・アンサンブル(器楽部隊)の見事な演奏!ヨーロッパのピリオド・オーケストラとは、やはり一味違う魅力というのか、"ピリオド"を強調した「荒事」で、聴き手を煙に巻くのではなく、的確に、丁寧に、無理のないサウンドを志向しつつ、けしてフラットにはしてこないバランス感覚。ヘンデルでは、より彼らの感覚が活きるようで、初演は失敗した?第1部はカット?なんて、不思議に思えるような、堂々たるオラトリオを聴かせてくれる。

HANDEL: Israel in Egypt

ヘンデル : オラトリオ 『エジプトのイスラエル人』 HWV 54

ローラ・アルビノ(ソプラノ)
ニルス・ブラウン(テノール)
ジェニファー・エンス・モドロ(メッゾ・ソプラノ)
ペーター・マホン(カウンターテナー)
イヴ・レイチェル・マックリード(ソプラノ)
ジェイソン・ネデッキー(バリトン)
バド・ローチ(テノール)
ジェニー・サッチ(ソプラノ)
シーン・ワトソン(バリトン)
ケヴィン・マロン/アレイディア・アンサンブル

NAXOS/8.570966




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