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さて、2009年も2月に入りましたが、あともう少し2008年の続きを...
で、この前は、B級な魅力を放つアルバム、という、大変、無礼な括りで、個性極まる5枚を取り上げたのだけれど、今回は、もう少し個性のヴォリュームを下げて、クラシックとして、興味深いアルバムを取り上げてみようかなと。いや、クラシック、ど真ん中の音楽も充実していた2008年。ベートーヴェンなんかは、特に充実していた印象があって... というより、充実し過ぎなくらいで、振り返ってみると不思議かも。第九の初演を再現したクリストフ・シュペリング+ダス・ノイエ・オーケスター、『エグモント』の物語を大胆に現代に翻案し新たな音楽劇を生み出したケント・ナガノ+モントリオール響など、モダン、モダン+ピリオドのハイブリッド、そしてピリオドと、実に多彩だったなと... ということは、新たなるベートーヴェン・ブームの予感?だったら、素敵!
と、ベートーヴェンに一気に流れて行きそうになったところで、軌道修正... 2008年、クラシックとして、興味深いアルバム、クラシックを逸脱してしまいかねないブっ飛んだ個性ではなく、クラシックにおけるマニアックなアルバムを、最後にさっくりと振り返る。

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まずは、独特の感性(クールだけど深く、熱い?)が印象的なヴァイオリニスト、クリスティアン・テツラフによる、名曲、ブラームスのコンチェルト。そして、名曲、ブラームスのコンチェルトの初演者にして、その名曲に大きく関わったヨアヒムのコンチェルト(2番)も演奏しているあたりが、マニアック!で、そのヨアヒムのコンチェルト... これが、実に魅力的で... ロマンティックであることに躊躇無い、19世紀、ヴィルトゥオーゾ・ワールド全開のそのサウンドは、教科書的なクラシックには収録されなかったコテコテ感がたまらなかったり... テツラフも、そうしたあたりに上手く乗っかって、ノリまくっていて、そんなヨアヒムとブラームスを並べると、ブラームスが如何に教科書的なクラシックであるかを思い知らされてみたり... そんな感覚も味わえる、取り合わせの妙。なかなか刺激的...
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というテツラフも参加したアルバム、ブーレーズがアンサンブル・アンテルコンタンポランを指揮して再録音したベルクのピアノ、ヴァイオリン、13管楽器のための室内協奏曲。ピアノには内田光子と、ゴージャスな面々が揃っての12音技法は、リッチに薫って、たっぷりと酔わされる。一方で、同じく13管楽器で演奏されるモーツァルトの「グラン・パルティータ」をベルクの前に演奏するのだけれど... あり得ないカップリング?いや、これまた取り合わせの妙。何より総音列大権現がモーツァルトを指揮するという驚き!そんなブーレーズだからこそ生まれる正確無比な「グラン・パルティータ」は、何だかバレル・オルガンのような感触があって、どこかチープ。けど、この機械仕掛けのような様相が、実にポップ!リッチに響かせるベルクと一緒に聴けば、余計にそのおもしろさが際立つ。
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「ブラヴーラ」ってワードがツボ... その意味を知らずに聞いたら、ウケるよね... なんてことはさて置きまして、新進コロラトゥーラ・ソプラノ、ダムラウのアリア集、"ARIE DI BRAVURA"。で、そのブラヴーラが半端無かった!圧巻のコロラトゥーラ、もの凄い超絶技巧なのに、余裕すら感じられて、何だか笑ってしまう。一方で、ウィーンのオペラ・シーンでしのぎを削ったモーツァルトとサリエリの対決を克明に捉えてもいて、聴き応え十分。1780年代のウィーンのオペラ・シーンの盛り上がりを、ブラヴーラという最も華々しい瞬間を集めて繰り広げられると、ただただ魅了されるばかり... で、そんなダムラウを好サポートのローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニがまたすばらしかった!フランスからの新たなピリオド・オーケストラということで、今後が大いに楽しみに!

ここで、ちょっと視点を変えて、2008年、その活躍ぶりに目が離せなかったアーティストを振り返る... で、まず印象に残るのが、テツラフのブラームスのコンチェルトでも好サポートを見せていた、デンマークの鬼才、マエストロ、ダウスゴー。モダン+ピリオドのハイブリッド、スウェーデン室内管との刺激的な"Opening Doors"のシリーズでは、シューマンの交響曲、1番、それから3番と4番をリリース、ツィクルスを完成。"Opening Doors"の今後の展開が大いに気になる!一方で、ベートーヴェンのツィクルスのその後が待たれるところ... さて、ベートーヴェンのツィクルスを快調に進めているのが、パーヴォ・ヤルヴィ。やはり、モダン+ピリオドのハイブリッド、ドイツ・カンマーフィルとの「運命」もまた、おもしろかった!そんなパーヴォがhr響と開始したブルックナーのツィクルス、第1弾、7番が、パーヴォらしく個性的でありながら、本当に美しくて、これからが楽しみ!それでいて、近代音楽にも余念が無いパーヴォ、シンシナティ響とのプロコフィエフの5番も実に刺激的だった。そんなパーヴォがパリ管のシェフに!ここでは、どんな音楽を聴かせてくれるのか、今からワクワクしてしまう。
そして、その存在感、ますます大きくなるばかりのマエストラたち、ヤングオルソップの活躍も印象的だった。保守的なクラシックに在って、「女性指揮者」という新奇さを、過去のものにしてしまう確かな音楽性... 下手に男勝りになることなく、女性らしさをも活かし、聴き知った作品に新しい姿を与えていたのが特に心に残る。大地母神的なヤングのブルックナー、飄々とスコアを捌いて行くオルソップのバルトーク。彼女たちの今後はもちろんのこと、彼女たちの活躍によって広げられるだろうクラシックの幅こそが楽しみ!

最後に、もうひとり、稀代の鍵盤楽器奏者、アンドレアス・シュタイアー!
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2008年にリリースされた彼のアルバムを振り返ると、この人、やっぱり、ただものではないなと... まずは、チェンバロで弾く、バッハの初期作品集、"Frühwerke"。そこで掻き鳴らされるチェンバロのインパクトは、ただならない... 楽器のイメージを覆す、音圧?チェンバロってこうもファンキーなのか?!それはもう、バッハを、チェンバロを、超越してしまうような、そんな壮大さを響かせていて、もはやユニヴァーサル!てか、初期作品集ですよ、これ... いや、音楽の父も若かった!若いからこその向こう見ずさが、思い掛けないスケール感を生み出していて、晩年のバッハとは違うパワフルさに圧倒され、それを容赦無く掻き鳴らすシュタイアー... 畏るべし...
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チェンバロからのピアノ... で、シューマンがバッハにオマージュを捧げた作品を集めたアルバム、"Hommage à BACH"では、1837年製、エラールのピアノを弾いて、作曲家の内に籠められた世界を丁寧に紐解き、その密やかな美しさに息を呑む。バッハからシューマンを見つめるというべきか、シューマンからバッハを見つめたというべきか、このトレース感がおもしろく、シューマンにとっても過去だったものを、さらに現代、19世紀、シューマンの時点に還って、シューマン、さらにバッハを響かせようという重箱的なピリオド・アプローチが、興味深かった。しかし、ユニヴァーサルなバッハの後で、インティメイトなシューマン、このギャップが凄いなと...
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さて、最後はモーツァルト。で、モーツァルト、最期の年、1791年に迫るフライブルク・バロック管のアルバム、"The Last Concertos"で、27番のピアノ協奏曲を弾いたシュタイアー。その当時の演奏慣習、ピアノ・ソロの伴奏を弦楽四重奏が担い、ピアノ五重奏と、オーケストラが交替しながら、ひとつのコンチェルトを織り成すというチャレンジングな試みをやってのけた。が、聴き慣れない音量の変化に最初は戸惑いを覚えたものの、聴き深めていけば、モーツァルトの36年の生涯をやさしく慈しむような"心"が見えて来る演奏でもあって、静かに、何気なくも、感動的。で、演奏ごとに、ベクトルを変えて、こうも攻めてくる演奏家、なかなか他にはいない。
いや、バッハ、シューマン、モーツァルトと聴いて来て、その恐るべき幅に、恐れ入るばかりのシュタイアー... 2009年は、ヘンデル、ハイドン、メンデルスゾーンのメモリアル。そのあたり、シュタイアーが弾いたなら、おもしろくなりそうな予感!けれど、そうしたあたりを、するりとかわして、我が道を行ってしまいそうでもあり、どちらにしても、さらなるシュタイアーの活躍が楽しみ!




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