SSブログ

フランスから、ラインを越えて、アルプスを越えて... [2009]

さて、2009年も動き出している... 新譜もいろいろリリースされ... そうした中で、naïve から、気になるリリースが2つ。フランス"ピリオド"界の第二世代を担う、マルク・ミンコフスキ(b.1962)によるバッハに、ジャン・クリストフ・スピノジ(b.1964)によるヴィヴァルディ。両者ともに一筋縄ではいかない魅力を放つ存在だけに、大いに興味は掻き立てられるわけで。どんなサウンドを聴かせてくれるのか?
ということで、naïve移籍、第2弾、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルによるバッハ、ロ短調ミサ(naïve/V 5145)と、naïve名物、ヴィヴァルディ・エディションから、最新のオペラ、スピノジ+アンサンブル・マテウスによる『忠実なニンファ』(naïve/OP 30410)を聴く。


ラインを越えて、バッハ、

V5145.jpg
1010.gif
ピリオド・アプローチで、鮮烈なビゼー(『カルメン』と『アルルの女』)を聴かせてくれた前作(naïve/V 5130)から一転、バッハ... という選択に、多少、不安も感じなくもなく、聴いてみる、マルク・ミンコフスキ率いるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの、ロ短調ミサ。
"ピリオド"の世界で、フランスからドイツものへと挑むチャレンジの難しさと、演奏し尽くされた観すらある傑作だけに、フランス"ピリオド"界のアンファン・テリヴル、ミンコフスキが、どう挑んでくるのか、とても気になるわけだ。が、彼ならば、こうくるのだろうな... という期待を裏切らない、「荒事」的アプローチが炸裂!力強さと、この人ならではの生々しさというのか、そうした感性が綾なして生まれる、うねるような感覚は、斬新。バッハ演奏の定石から、巧みに身をかわして(この「天の邪鬼」さが、ミンコフスキの魅力?)、驚くほど新鮮に、一気に描かれていくロ短調ミサは、印象的。 一方で、腕利き揃いのレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの魅力をフルに引き出して、ディテールでも、+αな美しさを響かせて、パッハの音楽をあちらこちらでキラキラと輝かせつつ... 声楽陣は、10人のソリストによるアンサンブルを組み、色彩豊かで、濃密なハーモニーを紡ぎ出し、ソロでは、時折、ゾクっとくるような艶っぽさすら盛り込んでみたり...
ロ短調ミサというと、バッハの音楽にしては、多彩で、明るさに溢れているわけだが、ミンコフスキの「荒事」で聴けば、そうした気分はさらにさらに増幅されて、サーカスにでも迷い込んでしまったような、そんな躍動感、そして色彩感が、ミサであることを忘れさせてしまう?パワフルで、ポップですらあって、メイド・イン・ジャーマニーのミサにして、フランスの気分がムンムンしているあたりがおもしろい。
が、フランスからライン川を越えて行くには、これほどまでに「荒事」で、大見得を切らなくてはならないのか?という思いも、どこかで過る。おもしろいことは間違いないのだけれど、バッハそのものを信頼し、肩の力を抜いて、ドイツに飛び込んでみても、おもしろかったのでは?しかし、これが、受難曲であったならどうだったろう?とも... 何か、もっとおもしろいことが起こったような気もしてくる。いや、そんな続編をミンコフスキに期待してみたくもなる... ヨハネ... マタイ...

bach messe in h-moll les musiciens du louvre ・ Grenoble marc minkowski

バッハ : ミサ ロ短調 BWV 232

ルーシー・クロー(ソプラノ)
ジョアン・ラン(ソプラノ)
ユリア・レージネヴァ(ソプラノ)
ブランディーヌ・スタスキェヴィチ(ソプラノ)
ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)
テリー・ウェイ(アルト)
コリン・バルザー(テノール)
マークス・ブルチャー(テノール)
クリスティアン・インムラー(バス)
ルカ・ティットート(バス)
マルク・ミンコフスキ/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

naïve/V 5145




アルプスを越えて、ヴィヴァルディ、

OP30410.jpg
1010.gif
フランス"ピリオド"界、もう一人のアンファン・テリヴル、ジャン・クリストフ・スピノジ... そして、彼が率いるアンサンブル・マテウス... 彼らの存在を、良くも悪くも(?)思い知らされたのが、ヴィヴァルディのオペラ、『試練の中の真実』(OPUS 111/OP 30365)。強烈なコントラストを付けてくる過激な演奏に震撼。もはや、ミンコフスキの「荒事」の騒ぎではない... その「ヤリ過ぎ!」な演奏は物議を醸し、革新なのか?破壊なのか?賛否両論を呼んだわけだが、リリースを重ねるごとに、そうしたエキセントリックさだけでない、しっかりとした音楽性も熟成させて...
『グリゼルダ』(naïve/OP 30419)以来、2年半ぶり?再び取り組むヴィヴァルディのオペラは、『忠実なニンファ』。そこには、確実に、彼らなりの深化を遂げた姿があって。彼らならではのテンション、彼らならではの激情が、見事に昇華され、美しさ、繊細さすら伴った"バロック・ロック"を展開してくる。
一方で、キャスティングが凄い!ピオー、カンヘミ、ルミュー、ミンガルド、ジャルスキー、レーティプー、レガッツォ、セン... ピリオド系の実力派がずらり... なんとゴージャスな!もちろん、超絶なるヴィヴァルディのオペラだけに、生半可なキャストでは、乗りきれないわけで... しかし、歌える人たちが集まって歌えば、とんでもないことになるのがヴィヴァルディのオペラ。もちろん、ゴージャスな面々は、とんでもないことを、軽々と起こしてしまっている!超絶のコロラトゥーラ、そんなアクロバティックなあたりは、気持ちいいぐらいに決めてきて。歌うところはたっぷりと歌い、イタリア・バロックならではの、艶めかしさをスパイスに、3枚組、全35場、どれも聴き劣りするものがないから驚かされる。
それを支える、スピノジ+アンサンブル・マテウスの演奏は、実に丁寧でもあり、シーンごと、豊かな表情を付けて、アグレッシヴさだけでない、その音楽性には、改めて感心させられ、何より、歌手たちとの一体感は、ただならない。そうして、度々、息を呑む瞬間が訪れる。何より、長丁場を、まったく飽きさせず、綴っていく。その濃密な感覚が凄い。その隙の無さに驚かされる。
naïveによるヴィヴァルディ・エディションのおかげで、ヴィヴァルディのルネサンスは、大いに前進したわけだが、ここにあるものは、その結晶かもしれない。ヴィヴァルディのオペラの魅力は、こういう演奏でこそ輝くなと... やっぱり、スピノジ+アンサンブル・マテウスのヴィヴァルディは凄い。

Vivaldi La fida ninfa

ヴィヴァルディ : オペラ 『忠実なニンファ』 RV 714

リコリ : サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)
モラスト : ヴェロニカ・カンヘミ(ソプラノ)
エルピーナ : マリー・ニコル・ルミュー(コントラルト)
オラールト : ロレンツォ・レガッツォ(バス)
オズミーノ : フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
ナレーテ : トピ・レーティプー(テノール)
ジュノーネ : サラ・ミンガルド(コントラルト)
エオーロ : クリスティアン・セン(バス・バリトン)

ジャン・クリストフ・スピノジ/アンサンブル・マテウス

naïve/OP 30410




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

遊泳する...その先へ... ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。