SSブログ

第1次世界大戦下の交響曲、アルプス交響曲と「滅ぼし得ざるもの」。 [2011]

今年は、第1次世界大戦終結から100年... とはいえ、日本人にとっての戦争は、やはり第2次大戦(1939-45)であって、第1次大戦は、何となくインパクトに欠ける?しかしながら、最初の近代戦であり、戦車、毒ガス、機関銃、潜水艦が戦場に出現、それまでにはあり得なかった数の犠牲者を生み、戦争の在り方を大きく変えてしまったのが第1次大戦... 人類の歴史において、欠くことのできないターニング・ポイントと言える。一方で、前線こそ凄惨な状況が続くも、前線から離れれば、思いの外、平和な光景も広がっており、ドイツなどでは、戦争景気に後押され、音楽シーンが活況を呈していたこともあったのだとか... こうしたあたりは、第2次大戦に比べれば、随分と牧歌的だったなと、何だか隔世の観がある。とはいえ、戦時の緊張感は世界を覆い、様々な場面で影を落とす。当然ながら音楽も様々に影響を受ける。興味深いのは、前回、聴いた、『惑星』をはじめ、魅力的な作品が多く生み出されていること... 戦争という死と直結した状況が、作曲家の感性を鋭くさせるのか?
ということで、第1次大戦中に作曲された音楽に注目してみる。アンドリス・ネルソンスが率いた、バーミンガム市交響楽団の演奏で、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲(ORFEO/C 833 111 A)と、ミケル・シェーンヴァントの指揮、デンマーク国立交響楽団の演奏で、ニールセンの4番の交響曲、「滅ぼし得ざるもの」(DACAPO/8.224156)の2タイトルを聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

プッチーニ、三部作。 [before 2005]

5565872.jpg
今年は、第1次世界大戦の終戦から100年... ということで、前回、第1次大戦中のドイツ=リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)と、デンマーク=ニールセン(1865-1931)に注目してみたのだけれど、南に下って、イタリア=プッチーニ(1858-1924)に注目してみる。で、プッチーニの戦争の向き合い方は、どこかリヒャルトに似ている。『ラ・ボエーム』(1896)、『トスカ』(1900)、『蝶々夫人』(1904)を立て続けに世に送り出し、国境を越えて人気を獲得していたオペラの大家にとって、ヨーロッパが2つに分かれて戦うなんて、ナンセンス... そもそも、プッチーニの国、イタリアは、ドイツ―オーストリアと三国同盟を結んでおきながら、第1次大戦が勃発すると中立を宣言。その1年後には、イギリス―フランス―ロシアの三国協商側に立って参戦するというカメレオンっぷり... こうしたあたりは、プッチーニの行動にも見受けられ、中立国、スイスを介し、敵国となったオーストリア、ウィーンからの仕事をこなしてしまう大胆さ!そうして作曲されたのが『つばめ』... さすがにウィーンでの初演は難しくなり、1917年、中立国、モナコで初演されるのだけれど、いやはや強か。リヒャルトみたいに、アルプスに引き籠るようなことはしない。そして、そんな『つばめ』と並行して作曲されていたのが、意欲作、三部作。
アントニオ・パッパーノの指揮、ロンドン交響楽団の演奏、マリア・グレギーナ(ソプラノ)、クリスティーナ・ガイヤルド・ドマス(ソプラノ)、アンジェラ・ゲオルギュー(ソプラノ)ら、スター、実力派、ふんだんにキャスティングされた豪華歌手陣で、1幕モノのオペラ『外套』、『修道女アンジェリカ』、『ジャンニ・スキッキ』からなる、プッチーニの三部作(EMI/5 56587 2)を聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

第1次世界大戦下、兵士の姿を見つめる音楽、兵士の物語、タラス・ブーリバ... [2018]

今年は、第1次世界大戦の終戦から100年... ということで、第1次大戦中の音楽に注目しております。とはいえ、戦時下、音楽どころではなかったのも事実。終戦の年、プッチーニが三部作を初演しようとした時、歌手たちはみな戦場に駆り出されており、ヨーロッパでの初演を見送っているほど... そう、多くの音楽家たちが、戦闘に立たされたのが第1次大戦。ヴォーン・ウィリアムズは、義勇兵としてイギリス軍の砲兵隊に加わり、ラヴェルはフランス軍で輸送兵として働き、イベールは海軍士官を務めていた。さらに、オネゲルはスイス軍(スイスは中立国だったが... )に従軍し、国境警備にあたり、ヒンデミットはドイツ軍の軍楽隊に、シェーンベルクとベルクはオーストリア軍に召集され、それぞれ、故国のために戦っている。いや、まさに、敵味方に分かれて戦っていたわけだ... 音楽性を巡って対立することはあっても、実際に銃口を突き合わせていたとは、かなり衝撃的。もちろん、それが戦争の現実ではあるのだけれど、第1次大戦は、20世紀音楽を彩る作曲家たちを兵士にしていた。
ということで、第1次大戦下に書かれた兵士たちの物語... ジャン・クリストフ・ガイヨーの指揮、オリヴィエ・シャルリ(ヴァイオリン)ら、フランスの音楽家によるアンサンブルで、ストラヴィンスキーの『兵士の物語』(harmonia mundi/HMM 902354)。ジョナサン・ノットが率いた、バンベルク交響楽団の演奏で、ヤナーチェクの『タラス・ブーリバ』(TUDOR/TUDOR 7135)を聴く。

続きを読む...


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

ラヴェル、クープランの墓。 [before 2005]

4760941.jpg
今年は、第1次世界大戦の終戦から100年... そして、本日、11月11日が、まさにその100年目の日となります。さて、『惑星』に始まり、第1次大戦中に作曲された音楽をいろいろ聴いて来たのだけれど、戦時下でも、作曲家の創作意欲は衰えず、様々な作品が生まれていたことに驚かされる。一方で、音楽どころではなかったのも事実... そして、多くの命が失われた現実... 音楽界からも多くの犠牲者が出ました。これから才能を開花させただろう若き作曲家たち、イギリスのバターワース(1886-1916)や、ドイツのシュテファン(1887-1915)らが、兵士として戦場に散り... また、民間人にも多くの犠牲を出した第1次大戦、フランスのマニャール(1865-1914)は、西部戦線に近い自らの屋敷に留まって、ドイツ兵と撃ち合いとなり、屋敷諸共火を掛けられ命を落としている。スペインのグラナドス(1867-1916)は、アメリカからの帰国の途上、乗船していた客船がドイツの潜水艦の攻撃を受け、ドーヴァー海峡で亡くなっている。そんな、多くの犠牲を悼み、追悼の曲を聴く。
自らも兵士として戦場に赴いたラヴェルが、戦場に散った戦友たちに捧げたトンボー、ピアノのための組曲、『クープランの墓』を、終戦から100年、レクイエムの代わりに... ロジェ・ミュラロのピアノで、ラヴェルのピアノ作品全集(ACCORD/4760941)で聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

没後50年、ピツェッティとカステルヌウォーヴォ・テデスコ。 [2009]

さて、11月も半ばになろうとしております。で、秋は、深まっているのでしょうか?ここのところ、変に気温の高い日があって、戸惑います。が、それでも、暦の上では、2018年の終わりが見えて参りました。そこで、今年、メモリアルを迎える作曲家を、改めて見つめてみようかなと... でもって、これまで取り上げて来た中(没後400年のカッチーニ、生誕350年のクープラン、生誕200年のグノー、没後150年のロッシーニ、没後100年のドビュッシーなどなど... )でも、最も新しいメモリアル、没後50年の作曲家に注目!20世紀、イタリア近代音楽を彩った2人の作曲家、ピツェッティとカステルヌウォーヴォ・テデスコ... 師弟関係にありながらも、1930年代、ファシズムが2人の運命を分かつ。師、ピツェッティは、体制に接近し、ユダヤ系のカステルヌウォーヴォ・テデスコは、アメリカへと亡命を余儀なくされる。が、奇しくも、同じ年、1968年に亡くなった2人...
クレイグ・ヘッラ・ジョンソンが率いるアメリカの合唱団、コンスピラーレの、ピツェッティのレクイエムを含む、近現代のレクイエムを集めたアルバム、"Requiem"(harmonia mundi/HMU 807518)と、アレッサンドロ・マランゴーニが弾く、ピアノでイエスの物語を綴る、カステルヌウォーヴォ・テデスコの『エヴァンゲリオン』(NAXOS/8.573316)の2タイトルを聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

生誕100年、ベルント・アロイス・ツィンマーマン。 [2016]

WER73402.jpg
11月も後半となり、紅白がどうのと話題に出て来ると、年の瀬感、俄然、出て来ます。となると、来年はどーなんだ?世の中的には、改元というビッグ・イヴェント(平成が終わるばかりでなく、明治以来の世が改まる... 何しろ、上皇さま、復活!)が待っておりますが、クラシック的には、どんな一年になるのかな?と、来年、メモリアルを迎える作曲家を、ざっと見渡してみた。ら、意外と少な目?ベルリオーズの没後150年が目玉になって来るとは思うのだけれど、今年に比べると、何となくインパクトに欠ける一年となるのか... モーツァルトではなく、そのパパ、レオポルトの生誕300年だったり、シューマンではなく、その妻、クララの生誕200年だったり... いや、こういう大家を支えた人物たちにスポットが当たることは、大家の新たな一面もクローズアップされ、大歓迎なのだけれど、やっぱり物足りない?とか思ってしまうのは、今年が、あまりにお祭り状態だったからだろうな... すでに10人のメモリアルを迎えた作曲家を取り上げたのだけれど、まだまだいる取り上げたい作曲家たち!
ということで、没後50年のピツェッティ、カステルヌウォーヴォ・テデスコに続いて、生誕100年、ベルント・アロイス・ツィンマーマンに注目... ペーター・ヒルシュの指揮、ケルンWDR交響楽団の演奏で、ツィンマーマンの1楽章の交響曲、ジョストラ・ジェノヴェーゼ、弦楽オーケストラのための協奏曲、ユビュ王の晩餐の音楽(WERGO/WER 7340-2)の4作品を聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

没後50年、リャトシンスキー。 [2014]

メモリアルを派手に祝われる大家の一方で、メモリアルを切っ掛けに、再発見する作曲家もいる。いや、普段、なかなか注目され難いマニアックな存在こそ、メモリアルの意味合いは重要になって来ると思う。でもって、当blog的には、マニアックなメモリアルこそ祝いたい!ということで、没後50年のピツェッティ(1880-1968)、カステルヌウォーヴォ・テデスコ(1895-1968)、生誕100年のツィンマーマン(1918-70)と、注目して来たのだけれど、いずれもメインストリームから外れた存在で、普段ならスルーされがち?なのだけれど、改めて見つめるその存在は、思い掛けなく味わい深かったり、インパクトを放っていたりで... またその音楽に、より時代を感じるところもあって... いや、この3人が歩んで来た激動の20世紀に、感慨を覚えずにいられない。そして、翻弄される作曲家たちが愛おしくなってしまう。で、もうひとり、激動の20世紀を生き作曲家に注目してみる。
没後50年を迎える、ロシア革命の混乱を乗り越え、ソヴィエトを生きた、ウクライナの作曲家、リャトシンスキー... テオドレ・クチャルの指揮、ウクライナ国立交響楽団の演奏による、リャトシンスキーの全5曲の交響曲、1番(NAXOS/8.555578)、2番と3番(NAXOS/8.555579)、4番と5番、「スラビャンスカヤ」(NAXOS/8.555580)の3タイトルを聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

グノー、ピアノ作品集。 [2018]

4816956.jpg
近頃、あまりに陽が短く感じられて、びっくりしている。もちろん、冬至が近付けば、そういうものだろうけれど、いつもの年より余計に短く感じられるようで、不思議(もうすぐ、ひとつの時代としての平成が終わることを象徴しているのかな?なんて、漠然と解釈してみる... )。一方で、秋の夜長とは、まさに!その夜長を活かし、『パリ左岸のピアノ工房』という本を読み始めた。まだ、この先、どうなるかは、わからないけれど、ピアノの中身を描く物語(ピアノの修理工房の話し... )って、なぜか、穏やかな空気感に包まれていて、読んでいると、やさしい気持ちになれる(若き調律師の成長を描く『羊と鋼の森』にも通じるなと... )。ピアノという楽器は、極めて華麗なイメージに包まれ、クラシックの屋台骨を支えるマシーンとしての威容も誇るわけだけれど、その中身を覗けば、実に繊細な世界が広がっている。その繊細さに纏わる物語は、当然、穏やかなものに落ち着いて行くのかなと... いや、ひとつの楽器が、内と外で、こうも印象が変わるのが、おもしろい。いや、そのギャップこそが、より深い響きを生み出し、希有な存在感を与えるのだろうな... とか、思いを巡らす秋の夜長、ピアノを聴いてみたくなる。
そこで、パリ左岸生まれ、生誕200年のグノーのピアノ作品を聴く。ロベルト・プロセッダの弾く、グノーのピアノ作品集(DECCA/4816956)... いやー、今月は、第1次大戦だ、第2次大戦だ、ファシストだ、亡命だ、アンチ戦後「前衛」だ、検閲だと、ちょっとヘヴィーに音楽と向き合って来たものだから、無邪気にすら思えて来る19世紀の美しいピアノ響きが、やたら沁みる。

続きを読む...


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

没後200年、コジェルフ。 [2012]

ACD148.jpg
クラシックで、チェコというと、スメタナ(1824-84)の『我が祖国』に始まる国民楽派のイメージが強い... そして、ドヴォルザーク(1841-1904)の「新世界」に、ヤナーチェク(1854-1928)のシンフォニエッタ... 定番の人気作品が並ぶわけだけれど、それ以前については、あまり触れられることは無い。が、音楽史を丁寧に見つめたならば、チェコの音楽のピークは、国民楽派の面々が生まれる前、18世紀だったのではないか?と思わせる情景が浮かび上がって来る。18世紀、古典主義の時代、ハイドン、モーツァルトのすぐ傍で、ハイドン、モーツァルトと肩を並べて活躍したチェコ出身の作曲家たち。ナポリ楽派の華麗さは無いにしても、ナポリ楽派を凌ぐほどの作曲家をヨーロッパ中に送り出した、驚くべき地、チェコ。18世紀のイギリスの音楽学者、チャールズ・バーニー(1726-1814)は、チェコを「ヨーロッパのコンセルヴァトワール」と評したほど... この史実、今、あまり伝えられていないことが、もどかしい... ということで、国民楽派以前のチェコ出身の作曲家に注目してみる!
ヤロスラフ・ティエル率いる、ヴロツワフ・バロック管弦楽団の演奏で、今年、没後200年を迎えたコジェルフから、レイハ、ヴォジーシェクと、古典主義からロマン主義へとうつろう時代の、チェコ出身の作曲家による交響曲(CD accord/ACD 148)を聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

没後250年、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ。 [2011]

OC720.jpg
さて、11月、最後のupとなりました。いやはや、2018年も、残すとこひと月ですよ。こんな年、早く終わっちまえ!なんても思いましたが、やっぱり感慨もあるのかなと... という中で、今年、メモリアルを迎える作曲家たちを、駆け込みで追っております、今月後半... それにしても、追い付かないくらいに多い、メモリアルを迎えた作曲家たち。でもって、興味深い作曲家ばかりで... いや、マニアックな作曲家ほど、おもしろかった!没後400年、カッチーニ(1551-1618)に、没後100年のボーイト(1842-1918)、リリ・ブーランジェ(1893-1918)、没後50年のリャトシンスキー(1895-1968)、生誕100年のツィンマーマン(1918-70)などなど、思いの外、刺激的な2018年だったなと振り返ってみる。のだけれど、まだまだおりまして... ということで、没後200年のコジェルフから、半世紀を遡って、没後250年、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ!フィレンツェに生まれ、ヴェネツィア、ドレスデン、ロンドンと、18世紀を代表する音楽都市を虜にしたヴァイオリンのヴィルトゥオーゾに注目...
ピリオドの名手たちが集まったアンサンブル、リリアルテの演奏、リュディガー・ロッターのヴァイオリンと、ドロテー・オベリンガーのリコーダーを軸に、フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニと、その師で、叔父、アントニオ・ヴェラチーニのソナタを取り上げるアルバム、"The Enigmatic Art Of Antonio And Francesco Maria Veracini"(OEHMS CLASSICS/OC 720)を聴く。

続きを読む...


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。