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豪奢なドレスデン、ピエタの濃密、広がるヴィヴァルディのパースペクティヴ。 [2013]

ラグビーのワールドッカップ、開幕しましたね!って、おもいっきり"にわか"ではございますが、開幕戦、ガッチガチな前半を乗り越えての日本勝利、テンション上がりまくりでした。ところで、クラシックでラグビーというと、オネゲルの交響的運動、第2番、「ラグビー」!オネゲルがラグビーを観戦していたところ、スポーツを音楽で表現できますか?と、あるジャーナリストから問われ、やったる!と、書いたのが、「ラグビー」だそうです(wiki情報)。いや、改めてラグビーの試合を見てみると、なかなか見事にゲームを音楽に落とし込めていたのだなと、感心。一方で、ラグビーの試合が、それ、まさに、交響的運動のようだった!スクラム組んで、ガッツリ対峙して、ボールを後ろにパスしながら前進して行く姿は、どこか交響楽を構築して行くような趣きがあって、「交響的運動」というネーミング、ドンピシャやん!そして、交響的運動、ラグビーの魅力に、今さらながら、惹き込まれております。で、予選プール、突破なるか?!いやー、しばらくワクワクが止まらなくなりそう... てか、芸術の秋、スポーツの秋に押されそう... いやいや、音楽も盛り上がってくよ!ということで、クラシック、ど真ん中を聴いて参りました今月、このあたりで、気分を変えまして、バロックへ!バロック、ど真ん中、ヴィヴァルディ!
アレクシス・コセンコ率いるレザンバサドゥールの演奏で、ザクセン選帝侯の豪奢なドレスデンの宮廷のために書かれたコンチェルトの数々、"Concerti per l'Orchestra di Dresda"(Alpha/Alpha 190)と、カフェ・ツィンマーマンの演奏で、ヴェネツィア、ピエタ慈善院の優秀な教え子たちのために書かれたコンチェルトからなる『調和の霊感』を軸としたアルバム、"Estro Armonico – Libro secondo"(Alpha/Alpha 193)の2タイトルで、ヴィヴァルディをガッツリ聴く。


バロックのワーグナー!いとも豪奢なドレスデンの宮廷のためのコンチェルト。

Alpha190.jpg
ブオブォーン!ブオブォーン!のっけから、ホルンの勇壮なサウンドに、おおっ!!!となる。いや、ホルンばかりでなくて、オーボエも花やかな色を添え、ヴァイオリンも華麗にフレーズを刻んで盛り立てる1曲目、ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルン、チェロのための協奏曲(track.1-3)。いつものヴィヴァルディとは一味違う聴き応えに、大いに魅了されてしまう。てか、何とゴージャスな!これが、バロック期、アルプス以北で最も豪奢なザクセン選帝侯のドレスデンの宮廷のサウンド(バッハも憧れておりました... )。ヴィヴァルディである前に、その華麗さに、まず耳が持って行かれる。管楽器が加わることで、一気に色彩感を増すバロックのオーケストラ... ヴィヴァルディも、その規模を存分に活かしながら、合奏協奏曲ならではのコンチェルティーノ(ソリストたち)とリピエーノ(オーケストラ)が織り成す大小のコントラストもしっかり利用し、ただ豪奢なだけでない表情の幅も見せる。いや、これが実に巧み!ドレスデンの宮廷は、コンサート・マスター、ピセンデル(1687-1755)をヴェネツィアに派遣し、ヴィヴァルディの下で修行(1716)させているのだけれど、納得。当時、まだまだ音楽後進国だったドイツからすれば、ヴィヴァルディの音楽は、ただならず最先端だったはず... そして、その音楽を持ち帰ったピセンデル... ヴィヴァルディはこれを切っ掛けにドレスデンとのコネクションを築き、当時、ヨーロッパ屈指の規模を誇ったドレスデンの宮廷のオーケストラのために、ここで聴くドレスデン仕様のコンチェルトの数々を作曲する。
という、ドレスデン仕様のコンチェルトを4曲と、教皇、アレクサンデル8世(在位 : 1689-91)を輩出した、ヴェネツィアの名門、オッボーニ家(音楽史においては、ローマで活躍してパトロン、オットボーニ枢機卿でお馴染み... )の教会での祝祭のために書かれた、これまた豪奢な、ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルン、チェロのための協奏曲、「聖ロレンツォの祝日のために」(track.7-9)を取り上げる、コセンコ+レザンバサドゥール。バロックのオーケストラだけに、当然、モダンのオーケストラからしたら、グンと規模は小さい... けれども、メンバー、ひとりひとりが、自信を以って自らの楽器を鳴らし切り、編まれる、充実のサウンドは、規模を凌駕する聴き応えをもたらし、圧巻!それでいて、徹底して透明感を失わない彼らのアンサンブル... ヴィヴァルディのドレスデン仕様のコンチェルトは、ややもすると大味な印象を受けることも無くは無いのだが、コセンコの指揮は、きっちりヴィヴァルディならではのエッジの効いた構造を見失わない。そして、スケールの大きさと、細部の繊細さの間を、器用に行き来するレザンバサドゥールの演奏は、合奏協奏曲の形を丁寧に際立たせ、その音楽のおもしろさを引き立てる。さらには、ヴァローヴァのヴァイオリンがすばらしく... ヴィヴァルディならではのヴァイオリンの華麗さを素直に奏で、独奏協奏曲の魅力も加えて、また聴き入ってしまう。それにしても、ドレスデン仕様のコンチェルトを聴いていると、ヴィヴァルディはバロックのワーグナーだ!なんて、言いたくなってしまう。

ANTONIO VIVALDI per l'Orchestra di dresda
Alexis Kossenko - Les Ambassadeurs


ヴィヴァルディ : ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルン、チェロのための協奏曲 ヘ長調 RV 569
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルン、ファゴットのための協奏曲 ヘ長調 RV.568
ヴィヴァルディ :
   ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルン、チェロのための協奏曲 ニ長調 RV.562 「聖ロレンツォの祝日のために」
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルンのための協奏曲 ヘ長調 RV.571
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルンのための協奏曲 ヘ長調 RV.574
ヴィヴァルディ : グラーヴェ
   〔ヴァイオリン、2つのオーボエ、2つのホルン、ファゴットのための協奏曲 ヘ長調 RV.568 から 第2楽章 異稿〕

アレクシス・コセンコ/レザアンバサドゥール

Alpha/Alpha 190




バッハ好みの骨太感... 硬派にして芳しき"フィーリエ"のためのコンチェルト。

Alpha193
ドレスデン仕様のコンチェルトの後で、ヴィヴァルディが手塩に掛けて育てたピエタ慈善院のレディース・オーケストラ、"フィーリエ(娘たち)"のために書かれたコンチェルトを聴くのだけれど、勝手知ったる面々に当て書きした音楽の、何という濃密さ!1曲目、『調和の霊感』、11番の合奏協奏曲(track.1-5)、その1楽章、短調の重々しさを纏いながら、しっかりと構築される対位法のヘヴィーさは、空気を変える!そして、一気に聴き手を惹き込んで来る。ピエタ慈善院(孤児院にして、職業訓練校... で、女の子たちには音楽教育プログラムが用意されていた。そして、ピエタ慈善院付属音楽学校の卒業生たちにより組織されていたのが、"フィーリエ"!)は、基本的に教会が運営する組織だっただけに、そこで奏でられる音楽は教会音楽... この合奏協奏曲も教会コンチェルト(ミサの合間に演奏するために作曲された作品で、ミサに相応しく、ルネサンス以来の伝統を受け継ぐ対位法を用い、荘重な音楽を編む... )であって、ドレスデンの華やかさとは対極の重々しさを見せる。いや、硬派!ヴィヴァルディの音楽は、ドラマティックで、エンターテインなイメージが強いけれど、『調和の霊感』にまとめられたコンチェルトは、アカデミック。だから、バッハも、ここで聴く、10番、4つのヴァイオリンのための協奏曲(track.17-19)を、4台のチェンバロのために、8番、2つのヴァイオリンのための協奏曲(track.26-28)と、前述の11番(track.1-5)をオルガン独奏用にアレンジしている。そんなバッハ好み骨太感がたまらない!また、そういう音楽を"フィーリエ"のために書いているわけで... そこから、彼女たちへのヴィヴァルディの揺ぎ無い信頼、彼女たちの確かな腕も窺えて、なかなか興味深いなと... 一方で、7番の合奏協奏曲(track.6-10)では、長調の朗らかさに包まれて、花々しい!けど、その花々しさは、ドレスデンとは全く異なる、ふんわり乙女感を漂わせて、芳しい。当時、絶大な人気を集めていたという"フィーリエ"、納得の芳しさが、そのスコアからも匂い立つよう...
という、ヴェネツィアでのヴィヴァルディの仕事をフィーチャーする、カフェ・ツィンマーマン。『調和の霊感』からのコンチェルトでは、彼らならではの実直な演奏が、バッハ好みのヴィヴァルディをグっと引き立てて、聴き応え満点!あれ?これって、バッハだったっけ?みたいな錯覚を覚えるほど... いや、こういうのもヴィヴァルディであることを改めて知らしめる演奏にもなっている。一方で、ソロ楽器のコンチェルト、『調和の霊感』の9番(track.11-13)、12番(track.20-22)のヴァイオリン協奏曲では、ヴァレッティ(ヴァイオリン)のソロが真っ直ぐな音色を聴かせてくれて魅了されずにいられない。また、RV 414のチェロ協奏曲(track.14-16)では、スカルカ(チェロ)のソロが、快活にして、端々艶っぽく、表情に富んだ演奏を聴かせてくれて、さらに魅了されずにいられない!で、そんな2人が対話するように繰り広げられるヴァイオリンとチェロのための協奏曲、「プロメテウス、または世界の転覆」(track.23-25)がまたいい味を出していて... いや、いろいろなテイストで楽しませてくれるカフェ・ツィンマーマンのヴィヴァルディ、飽きさせない!

Estro Armonico – Libro Secondo
Café Zimmermann


ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『調和の霊感』 Op.3 から 第11番 合奏協奏曲 ニ短調 RV 565
ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『調和の霊感』 Op.3 から 第7番 合奏協奏曲 ヘ長調 RV 567
ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『調和の霊感』 Op.3 から 第9番 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV 230
ヴィヴァルディ : チェロ協奏曲 ト長調 RV 414
ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『調和の霊感』 Op.3 から 第10番 4つのヴァイオリンのための協奏曲 ロ短調 RV 580
ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『調和の霊感』 Op.3 から 第12番 ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 RV 265
ヴィヴァルディ : ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ヘ長調 RV 544 「プロメテウス、あるいは、世界の転覆」
ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『調和の霊感』 Op.3 から 第8番 2つのヴァイオリン協奏曲 イ短調 RV 522

カフェ・ツィンマーマン

Alpha/Alpha 193




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