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メンデルスゾーン、真夏の夜の夢。 [2015]

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あぁぁぁ... あまりの暑さに身体も頭も停止気味です。みなさん、熱中症などになってはおられませんか?それにしても、連日、最高気温が、36度とか、37度とか、場所によっては、38度?39度?もうついていけません。いや、温暖化もギアが入って参りました(おい、小氷河期はいつ来るんだよ!?)。温室効果ガスの排出削減とか、もはやそういうレベルではなく、大気そのものを冷やす新たな技術を開発しなきゃいけないような気がして来る、今日この頃... で、こう暑いと、音楽を聴くのも、ちょっと億劫になってしまうようなところがあって... そんな時に聴く、さらりと楽しめる音楽。メンデルスゾーンがいいかなと... 18世紀の残り香を感じさせる瑞々しいサウンドと、19世紀ならではのキャッチーさによって織り成される、ロマン主義がまだ若々しさを失っていなかった頃の音楽。クラシック切っての優等生が織り成す卒の無さは、聴き手に負担を与えず、楽しませてくれる。
ということで、メンデルスゾーンの夏!トマス・ダウスゴー率いる、スウェーデン室内管弦楽団の演奏、スウェーデン放送合唱団、カミラ・ティリング(ソプラノ)、マグダレーナ・リスベリ(ソプラノ)の歌で、メンデルスゾーンの劇音楽『真夏の夜の夢』(BIS/BIS-2166)を聴く。

ロマン主義の音楽は、基本的に熱い。いや、熱いからこそロマン主義!なのだけれど、ロマン派、メンデルスゾーン(1809-47)の音楽というのは、いつもどこか涼しげ... で、この涼しげな表情は、どうやって生まれるのだろう?と、ちょっと不思議に思う。ロマン主義がまだ煮詰まる前の瑞々しさを保っていた頃だから?いや、メンデルスゾーンの音楽に底流する、古典主義の精神がそこにあるように思う。19世紀に入ってから生まれたメンデルスゾーン(ハイドンがこの世を去る数か月前にメンデルスゾーンは誕生しているのだよね... )ではあるけれど、10代にしてすでに才能を開花(15歳で1番の交響曲、17歳で「真夏の夜の夢」序曲を作曲!)させていた早熟のメンデルスゾーン、その早熟を育てた1820年代は、ウィーン古典派、最後の巨匠、ベートーヴェン(1770-1827)の晩年の頃にあたる。古典主義は、若きメンデルスゾーンの周囲にまだ息衝いていただろう。そして、早熟だったからこそ、誰よりも18世紀の遺産を受け継ぐことができたか... メンテルスゾーンの丁寧に構築された音楽、その見通しの良いサウンド、そうして生まれる端正さは、古典主義の蓄積の上に成り立っているように感じる。なればこそ、安易に感情的な方へと流されることなく、どこか涼しげな表情が生まれるのかなと... 一方で、そのあたりがメンデルスゾーンの優等生っぽさを強調し、他のロマン派の作曲家に比べるとインパクトに欠ける?
メンデルスゾーンの音楽は、どんなオーケストラでも、さらりと演奏できてしまうイメージがある。それだけ、しっかりと準備された音楽であって、優等生、メンデルスゾーンならではのクウォリティなのだと思う。けど、さらりと演奏してしまうと、品は良いものの、インパクトに欠けてしまうというジレンマ... そのジレンマを打ち破って来るのが、ダウスゴー+スウェーデン室内管!いやー、おもしろく聴かせてくれるだろうことは予想していたけれど、その予想をひょいと越えて来るのが彼らの凄さ。モダンとピリオドのハイブリッドによる室内オーケストラという、まさに21世紀型の彼らの在り様は、どこかトップ・アスリートを思わせて、精密で、ダイナミックで、魅せる!そうしてクラシックのスノッブさを鮮やかに断ち切り、かつての作品に、もう一度、輝きを取り戻すかのよう。ということで、その1曲目、『真夏の夜の夢』のインターリュードのように取り上げられる「美しきメルジーネの物語」序曲(track.1)から、グイっと惹き込まれる。1833年の作品となると、ロマン主義は深まり、よりドラマッティックな音楽を展開されるも、優等生、メンデルスゾーンならではのクウォリティを感じさせ... そんな作品の全ての音符を活性化し、精緻でありながら勢いと表情をしっかりと作り出すダウスゴー。水の精、メルジーネの物語(ヨーロッパ版、鶴の恩返し?あるいは、雪女の話しに似ているような... )のミステリアスさ、スリリングさこそを際立たせて、クール。
で、「美しきメルジーネ... 」が絶妙な扉となって始まる劇音楽『真夏の夜の夢』(track.2-15)。1826年に作曲された序曲(track.2)を素に、劇音楽へと拡大され、1843年に完成した作品は、まだ古典主義の影響下にいた若きメンデルスゾーンのセンスが十分に活きており、「美しきメルジーネ... 」に比べると、はっきりと古風。なのだけれど、その古風さが、かえってファンタジーを引き出していて、マジカル。そして、ダウスゴーの手に掛かると、もうひとつのモーツァルトの『魔笛』を聴くような魅力を感じてしまう。ロマン派であるより、最後の古典主義者というのか... あるいは、モーツァルトが至れなかったロマン主義者像を、メンデルスゾーンが体現する?古典主義のカウンター・カルチャーとして登場するロマン主義なのだけれど、メンデルスゾーンは、そういう対立構造をあっさりと乗り越えて、ひとつに結んでしまう。それを過渡的なものとしてではなく、進化系の新たな古典主義として提示し来るダウスゴー... いや、これこそメンデルスゾーンの真骨頂!ロマンティックな古典主義... 分かち難く融け合い、他のロマン派の作曲家では味わえない魅力、まさにファンタジーを楽しませてくれる。
そして、ポストリュード、「フィンガルの洞窟」序曲(track.17)では、しっかりとしたロマン主義が展開され、この切り返しがまた絶妙... これぞロマン主義、スコットランドの奇岩と、そこに打ち付ける荒波を描き出す音楽の、パワフルで、劇的なこと!1830年に作曲されたこの作品は、20歳のメンデルスゾーンがスコットランドを旅して得たインスピレーションをそのまま表現した作品。その若さとダイレクトさが、見事、ロマンティックに昇華されており、ここでは、優等生は影を潜め、聴く者を否応無しに引き込む。そんな音楽を、映像のように繰り広げるダウスゴー... スウェーデン室内管も、細部まで丁寧に鳴らして、精緻に荒々しさを表現し尽くすおもしろさ!定番の作品も、生まれたてのように新鮮。やっぱり、ダウスゴー+スウェーデン室内管が織り成す音楽は、つまらないところが一切無い。そんな演奏に触れると、元気が出る!

Mendelssohn ・ A Midsummer Night's Dream; Overtures – SCD/Dausgaard

メンデルスゾーン : 序曲 「美しきメルジーネの物語」 Op.32
メンデルスゾーン : 劇音楽 『真夏の夜の夢』 Op.61 ***
メンデルスゾーン : 序曲 「フィンガルの洞窟」 Op.26

トマス・ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団
カミラ・ティリング(ソプラノ) *
マグダレーナ・リスベリ(ソプラノ) *
スウェーデン放送合唱団(女声) *

BIS/BIS-2166




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