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テレマン、伊式、仏風、18世紀音楽カタログ、「クァドリ」。 [before 2005]

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クラシックで、多作家というと、モーツァルトの名前がすぐに思い浮かぶ。41番まである交響曲、27番まであるピアノ協奏曲、23番まである弦楽四重奏曲、18番まであるピアノ・ソナタ... 改めて並べてみると、クラクラしてしまう。のだけれど、さらにインパクトがあるのが、バッハのカンタータ!世俗カンタータを含めると216番までもあって... もちろん、カンタータばかりでなく、オペラ以外の様々な作品を、ただならず残したバッハ。2001年にリリースされたBrilliant Classicsからのバッハ全集のボックスは、何と160枚組だった(自分だったら、絶対に聴き切れない... 絶対に... )。やっぱり、"音楽の父"は、父だけのことはある。が、それを越えて来るヴィヴァルディ... バッハが書かなかったオペラを、94作品も書いたと豪語!現存するのは54作品とのことだけれど、それでも54作品もオペラがあるなんて、ちょっと信じられない。でもって、協奏曲に至っては500曲を越えるらしい... しかーし、クラシック切っての多作家は、テレマン!4000曲以上の作品(確認できる作品は3600曲以上で、現在も発掘が進んでいる... )を書いたとされ、ギネス認定されているのだとか... いや、もう、笑っちゃう。
という、テレマンを聴いております、今月... パリ四重奏曲集、無伴奏フルートのための12のファンタジーと聴いて、フルート尽くしなのだけれど、もう1枚、フルート!フライブルク・バロック・コンソートの演奏で、フルート四重奏曲集、「クァドリ」(harmonia mundi FRANCE/HMC 901787)。この作品集、ギネス作曲家、テレマンの、ポートフォリオのようで、興味深いのだよね...

テレマンがハンブルクに移って、9年目となる1730年に出版されたフルート四重奏曲集、「クァドリ」。で、"quadri"とは、イタリア語で四重奏とのこと... けど、後の四重奏とは印象が異なるのか?フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバあるいはチェロ、そして通奏低音による「クァドリ」は、通奏低音の部分に若干の幅が生まれ得る。ここで聴く、フライブルク・バロック・コンソートの演奏では、チェンバロに、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバあるいはチェロも加わって通奏低音を編み、四重奏のイメージを越える響きの厚みを生み出す。でもって、そうあることが、より「クァドリ」の多彩さを引き出すのかもしれない。6曲からなる「クァドリ」、実は、2つのコンチェルト、2つのソナタ、2つの組曲で構成され、フルート四重奏というひとつのイメージで括れない様々なスタイルの音楽から成っている。で、コンチェルトは、いわゆるソロ・コンチェルトではなく、合奏協奏曲のような形(ソリストたちと通奏低音の対比... )を採り、ソナタは、教会ソナタ(ポリフォニックで、古風な形に基づく緩急緩急の4楽章構成... )に倣い、組曲は、フランス式の舞踏組曲を織り成す。つまり、イタリアの伝統とフランスのお洒落をひとつにまとめたのが、「クァドリ」。さながら、バロック期における器楽曲のカタログのよう... 何より、テレマンの作曲家としての器用さ、力量が見事に示されていて、その硬派な音楽に聴き入ってしまう(って、普段は軟派?)。
テレマンというと、どうしてもノリの良さだったり、ギミックなおもしろさに耳が行くのだけれど、それは、テレマンの聴衆に対する徹底したサービス精神の表れなのだろう。一方、「クァドリ」は、聴衆ではなく、演奏家に向けて書かれた音楽と言えるのかもしれない。ひとりひとりの演奏家が、しっかりと仕事をし、なおかつ、心地良くアンサンブルを紡ぎ出す。フルート四重奏曲ではあっても、フルートが突出するわけでなく、それぞれの楽器の存在がしっかりと活かされ、またバロックの音楽の根幹とも言える"対比"の概念をしっかりと咀嚼し、ソリストたちと通奏低音、それぞれの楽器が巧みに響き合い、引き立て合い、思い掛けない豊かな色彩を見せてくれる。そこには、テレマンのより感覚的な感性が効いているのだろう... 6曲中、4曲が、コンチェルト、ソナタと、より形式を重んじるスタイルで書かれながらも、そのことが重石にはならず、巧みにおもしろみに昇華され、音楽に広がりが生まれる妙。それでいて、華やかなコンチェルトに、雰囲気のあるソナタ、最後はテレマンらしさに溢れる舞曲が連なった組曲と、卒なく、その違いをもアクセントとし、抜け目ない。裏を返せば、自由自在!いやこれは、テレマンがそれまで培って来たものの結晶なのかもしれない。という「クァドリ」は、1736年、パリでも出版され、音楽の都の音楽家たちも魅了... テレマンはパリに招かれ、1738年、続編、パリ四重奏曲集が誕生することに...
さて、フライブルク・バロック・コンソートの演奏なのだけれど、母体である、フライブルク・バロック管の朗らかさが、そのまま繰り出され、とても心地良い音楽が繰り広げられる。まさに、ピリオド界切っての腕利きのメンバーが揃っての、ご機嫌な演奏!いや、ご機嫌なばかりでもないか... どことなく翳を帯びるようなところもあり、朗らかさと相俟って、音楽にスケール感を生み出す。そのあたりは、ヴィオラ・ダ・ガンバのパール、リュートのサンタナのコンビが、フライブルク・バロック管の朗らかさに、もうひとつの表情を加えるのだろう。朗らかでありながら、どこか倹しくもあり、また陰影がアンサンブル全体を引き立たせ、表情が多層的に紡がれるのが、おもしろい。なればこそ、テレマンの音楽の、一筋縄には行かないあたりを、しっかりと浮かび上がらせる。フルート四重奏という、一見、可憐な編成が、まるでオーケストラのように機能し、シンフォニックにすら感じられ、驚かされる。クリアで、軽快なのに、シンフォニック!この感覚、おもしろい。

Telemann ・ Pariser Quartette ・ Freiburger Barockconsort

テレマン : フルート四重奏曲 第1番(第1コンチェルト) ト長調 TWV 43:G1 〔フルート四重奏曲集 「クァドリ」〕
テレマン : フルート四重奏曲 第2番(第2コンチェルト) ニ長調 TWV 43:D1 〔フルート四重奏曲集 「クァドリ」〕
テレマン : フルート四重奏曲 第3番(第1ソナタ) イ長調 TWV 43:A1 〔フルート四重奏曲集 「クァドリ」〕
テレマン : フルート四重奏曲 第4番(第2ソナタ) ト短調 TWV 43:g1 〔フルート四重奏曲集 「クァドリ」〕
テレマン : フルート四重奏曲 第5番(第1組曲) ホ短調 TWV 43:e1 〔フルート四重奏曲集 「クァドリ」〕
テレマン : フルート四重奏曲 第6番(第2組曲) ロ短調 TWV 43:h1 〔フルート四重奏曲集 「クァドリ」〕

フライブルク・バロック・コンソート
カール・カイザー(フルート)
ペトラ・ミュレヤンス(ヴァイオリン)
クリスティン・フォン・デア・ゴルツ(チェロ)
ヒレ・パール(ヴィオラ・ダ・カンバ)
リー・サンタナ(リュート)

harmonia mundi FRANCE/HMC 901787




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