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フランス・バロック、鳥たちのさえずり。 [before 2005]

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酉年ということで、「鳥」についての音楽を探ってみた。いや、改めて見つめると、おもしろいくらいある!ストラヴィンスキーの『火の鳥』、リムスキー・コルサコフの『金鶏』のような、ファンタジー。で、『金鶏』もそうだけれど、ストラヴィンスキーの『夜うぐいす』、ワーグナーの『ジークフリート』のように、鳥が美しく歌うオペラ。あるいは、ディーリアスの「春、初めてのかっこうを聴いて」、ヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」、シベリウスの「鶴のいる情景」など、鳥から広がる絵画的、映像的な作品。そして、真骨頂、鳥の鳴き声に注目したヴィヴァルディの「ごしきひわ」、ヘンデルの「かっこうと夜うぐいす」、ハイドンの「めんどり」に「ひばり」などなど、鳥の個性的なさえずりを取り込んだ作品。こうして見てみると、鳥たちは音楽の先輩と言える存在なのかもしれない。
さて、メシアンに続いての鳥の音楽。って、鳥ばかりじゃないのだけれど... 日本を代表するアコーディオンのマエストラ、御喜美江が、そのアコーディオンで、ラモー、クープラン、ダカン、フランス・バロックのクラヴサンのために書かれた作品に挑む、"French Baroque Music"(Challenge Classics/72014)を聴くのだけれど... いや、思いの外、鳥が鳴く、フランス・バロック!

メシアンの鳥の見つめ方は、かなりイってしまっているように思うのだけれど、よくよくフランスの音楽を見つめると、メシアンばかりでない?フランスの伝統を感じられなくもない?時代をグンと遡って、中世末、アルス・スブティリオルの作曲家、ヴァイヤンのヴィルレー"Par maintes foys"では、鳥のさえずりがふんだんに取り込まれていて、中世のメシアン?なんて思わせるところも。そして、バロック... クラヴサンのために書かれた組曲の中には、よく鳥が登場する。御喜が"French Baroque Music"で取り上げる中にも、ラモーの「鳥のさえずり」(track.3)に、有名な「めんどり」(track.11)、クープランの「恋の夜うぐいす」(track.16)、ダカンの「つばめ」(track.21)と「かっこう」(track.24)。という具合に、様々な鳥たちが登場する。何より、音楽の中で、その鳥たちが、活き活きとさえずり、やがてメシアンへと至る観察眼を、そこに見出せる気もする。また、身近なものを巧みに音楽に落とし込むフランスの作曲家のヴィヴィットな感性が感じられ、興味深い。ラモーの「つむじ風」(track.6)の中間部、風が逆巻くイメージ、クープランの「葦」(track.15)の、葦原を思わせる、ちょっと寂しげな風景、「小さな風車」(track.17)の、風を受けクルクルと忙しなく回る様子など、どこか俳句に通じる瑞々しさがあって、フランスの音楽の描写力の高さに、改めて感心する。こうしたあたりに、ドイツの音楽との違いを強く感じる。
そんなフランス性を際立たせるのが、アコーディオンの音色!ヴィヴィットでいて、人懐っこくもある、その独特なトーン... 普段のクラシックとは一味違うトーンが、フランス・バロックのクラヴサンのための作品を奏でて生まれるケミストリー!ヴェルサイユを飾ったクラヴサンの繊細さ、ちょっとスノッヴな雰囲気は取り払われ、音楽がより明確に響き出し、ひとつひとつのナンバーがはっきりと個性を表し、息衝いて来る感覚がおもしろい。で、何よりおもしろいのが、アコーディオンで奏でられることで、ピアフの時代のシャンソンのように歌い出すフランス・バロックのメロディー!まるで、パリの街角から聴こえて来そうな気の置け無さが広がり、軽やかで、キャッチーで、本当にバロック?なんて思ってしまう。いや、ピアフの時代とフランス・バロックは地続きであることを思い知らされる。そして、そこに、ジャンルを越えたフランス音楽のDNAを見出せて、とても興味深い。で、そういうフランス性を、さらりと掘り起こしてしまうアコーディオンという楽器のマジカルさ!これもまた、興味深い。
というアコーディオンを聴かせてくれるのが、御喜美江。ウーン、唸ってしまうほど、見事!全ての音が淀み無く、スムーズに展開されて、それでいて、一音一音の存在感が半端無い... そうしたタッチからは、ちょっとバレル・オルガンを思わせる感覚さえ生まれ、スコアに対して圧倒的。だからこそ、全てが輝いて聴こえて、そのキラキラとしたサウンドに、ただならず惹き込まれてしまう。また、そういうクラリティの高い演奏だからこそ、ニュートラルにフランス・バロックとも向き合えていて、作品そのもの良さを余すことなく引き出し切っている。で、ヴィルトゥオーザ、御喜の、さらに凄いところは、それがアコーディオンであることを忘れてしまうほどの、洗練の極みにあるスーパー・パフォーマンス!その演奏、作品に対してのみならず、楽器に対してもニュートラルと言えるのかもしれない。だからこそ、音楽そのものが強調される。そうして味わうフランス・バロック、アコーディオンは、これまで聴き馴染んだイメージを凌駕して、ただならず新鮮!

Mie Miki - French Baroque Music

ラモー : エジプト女
ラモー : 村人
ラモー : 鳥のさえずり
ラモー : ロンドー形式のミュゼット
ラモー : タンブーラン
ラモー : つむじ風
ラモー : ミューズたちの会話
ラモー : 未開人
ラモー : ロンドー形式のジーグ
ラモー : 歓喜
ラモー : めんどり
クープラン : 牧歌
クープラン : クープラン
クープラン : タンブーラン
クープラン : 葦
クープラン : 恋の夜うぐいす
クープラン : 小さな風車
クープラン : 修道女モニク
ダカン : ロンドー形式のミュゼット
ダカン : ロンドー形式のリゴドン
ダカン : つばめ
ダカン : 歓喜
ダカン : ロンドー形式のタンブーラン
ダカン : かっこう

御喜 美江(アコーディオン)

Challenge Classics/72014




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