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ブルックナーらしさ... 未だ御し切らぬ3番のラディカルさ! [before 2005]

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はぁぁぁ... ニュースを見ていると、もはや、散々ですね。いや、こういう時こそ、絶対音楽!音楽そのものへと集中を促す、その在り方は、何か修行を思わせるところがあって... 例えば、交響曲であるならば、その規模の大きさに身を浸して、音そのものと向き合うと、俗世と切り離されるような感覚を味わう。って、ちょっと仰々し過ぎるか... けど、改めて「交響曲」を考えてみると、単に楽しい音楽ではない、求道的な魅力が間違いなくある。そのあたりが、21世紀のリアルとかけ離れているのだろうけれど、一方で、21世紀に欠けているものが、その姿勢にあるような気もする。ということで、絶対音楽=交響曲、ハイドンシューベルトと来て、その先へ...
ということで、絶対音楽の頂?ブルックナーの峻厳なる交響曲!ケント・ナガノが率いたベルリン・ドイツ交響楽団の演奏で、ブルックナーの3番、「ワーグナー」(harmonia mundi FRANCE/HMC 801817)を聴いて、俗世の諸々から、一時、解放されてみる。

ブルックナーの交響曲は、ただならず凄い。凄過ぎて、取っ付き難い。それは、あられもないほどに絶対音楽だから... たとえ絶対音楽=交響曲であっても、音楽的な感性が働き、耳に心地良い流れを創り出すのが作曲家の性だと思うのだけれど、ブルックナーは、そういう器用なことはしない。ガツンと絶対音楽を聴く者にぶつけて来るのみ。でもって、ここで聴く3番は、それが際立っている。未完の9番も含め、11曲の交響曲を残したブルックナー... その中でも、3番の絶対感は、さらに突き抜けたものを感じる。ブルックナーらしさが初めて表れた交響曲でありながら、ブルックナーらしさが未だ定まっていない状態ゆえの、加減を知らない絶対感... なればこそ、3番は、頂の中の頂きと言えるのかもしれない。それにしても、どうして、こんなに尖がっている?
オーストリア、第3の都市、リンツの南、アンスフェルデンという小さな村で、オルガニストも務める小学校の先生の父の下、1824年に生まれたブルックナー(1824-96)。幼い頃からオルガンに接し、才能を発揮、アンスフェルデンから程近い、由緒ある聖フローリアン修道院の聖歌隊(1836-40)の一員として過ごすも、父と同じ、教師を志し、教員養成所へと進む。そして、17歳の時、チェコ国境に近いヴィントハークという小さな村の小学校の先生(1841)となる。が、反りの合わない校長とゴタゴタがあり、聖フローリアン修道院の恩師、アルネート修道院長の計らいで、修道院の近くの小さな町、クロンシュトルフの小学校に転任(1843)。教師としてこどもたちを教えながら、自らも修道院でオルガンの腕を磨き、1845年に補助オルガニスト、1851年には専任オルガニストとなり、ローカルな環境の中、オルガンを通じて音楽を自らのものとして行った。そうした日々から四半世紀が過ぎ、ウィーン音楽院の教授を務めるまでになっていた頃、1873年に完成したのが3番の交響曲。
ワーグナーにインスパイアされ、ワーグナーに献呈されたことで、「ワーグナー」というタイトルが付されるものの、そこから響き出す音楽は、まさにブルックナー!で、そのブルックナーらしさを構築しているものは何だろうか?先生をしながらオルガンに向かっていた若き日々の思い出のような気がする。農作業も手伝った田園風景の鮮やかさ、田舎の飾らない雰囲気、それは粗忽と言ってもいいくらいのもので... 一方で、修道院の古風な壮麗さがあり、教会に鳴り響いたパイプ・オルガンの輝かしさがあり... そうした記憶の断片が、過去を振り返るセンチメンタルさを滲ませながら、パイプ・オルガンの残響のように次々と広がり、せめぎ合い、峻厳な表情を刻んで行く。改めて見つめると、実に希有な音楽だと思う。この感覚、アイヴズの音楽にすら重なる気がする。それくらいだから、ロマン主義の時代のレトリックなど、ほぼ無視されて、我が道を突き進んでいて... そんなことだから、最初に準備された初演(1875)は演奏不能とされ、大改訂を経ての初演(1877)は大失敗する。
という3番は、一世紀半近くが過ぎた今でも、十分に尖っている。なればこそ、ひとつ覚悟を決めて、向き合ってみるのだけれど... ケント・ナガノ、ベルリン・ドイツ響の演奏は、思いの外、ナチュラル!より豊かな表情を掘り起こしていて、驚かされる。いや、だからこそ、絶対音楽の向こう側に、様々なイメージが喚起されるのか... ケント・ナガノならではのニュートラルなスタンスが、取っ付き難い3番のイメージを乗り越えて、ブルックナーその人に共感するような、親密さすら醸し出すところがある。そんなマエストロに応えるベルリン・ドイツ響も、スコアの隅々まで明晰に響かせながら、とてもフレキシブルな演奏を繰り広げていて、絶対音楽に捉われないような姿勢を見せるのか... そうして浮かび上がる、ブルックナーの瑞々しい心象。どこか映像的な感覚もあるのかも... いや、思い掛けなく新鮮なブルックナー!魅了される。

Bruckner / Symphony n⁰3 / Kent Nagano

ブルックナー : 交響曲 第3番 ニ短調

ケント・ナガノ/ベルリン・ドイツ交響楽団

harmonia mundi FRANCE/HMC 801817




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