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星々は巡る、十二宮、音で捉えて紡ぎ出す豊かなイメージ。 [before 2005]

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選挙は終わりました。そして、特別、代わり映えのしない風景が広がります。てか、どっちを向いても漠然としていて、論点は空回り、掴み所のない選挙。で、いいの?これほど世界が不透明となって行く中、日本における問題も様々に膨らむ中、そういうリアルに、政治家たちは反応できていたのだろうか?こういう疑問を持つ段階で、投票する方としては、正直、腰砕け... 一方で、その後の開票速報を伝えるテレビの熱気には、中てられるやら、白けるやら... いや、このあたりで、本腰を入れて政治をしないと、日本も、明日の米国(トンデモ大統領候補の出現)、英国(国民の向こう見ずな選択)となりかねないですよ!と、永田町のセンセイ方に言いたい。
なんてことを書いていると、気分が滅入って来るので、視線を上げる!星々への憧憬を響かせたケクランに続いて、星そのものを見つめる音楽?トロンボーンの鬼才、マイク・スヴォボダを中心に、個性派が結集したアンサンブルで挑む、シュトックハウゼンのオルゴールのために書かれた奇作、『十二宮』、星座のための12のメロディー(WERGO/WER 6659 2)を聴く。

シュトックハウゼン(1928-2007)というと、まさに"ゲンダイオンガク"のイメージ。そして、戦後「前衛」らしく、3つのオーケストラを同時に演奏させてしまうとか、ヘリコプターに弦楽四重奏を乗せたとか、世界中の国歌を素材にしてしまうとか、指環がかわいらしく感じられてしまうほどの長大なオペラを書いたりとか、トンデモな雰囲気も漂わせる。いや、戦後の本当に尖がっていた世代というのは、タダモノではない... で、シュトックハウゼンの場合、そのタダモノでないあたりに、人懐っこさもあるような... 難解ではあるのだけれど、ブーレーズのようなエリート主義を貫いての難解さとは一味違う、突っ込み所ありの気安さを感じる?ブっ飛んでるからこそのキャッチーさとでも言おうか、"ゲンダイオンガク"にして、意外と間口は広い気がする。そんなシュトックハウゼンの、『十二宮』、星座のための12のメロディーなのだけれど、これがまた、ブっ飛んでいる!何たって、オルゴールのために書かれた音楽(オルゴールを製作する会社の委嘱とのこと... )。いや、オルゴールというだけあって、その音楽は至ってシンプル。とても素直な音楽を繰り出し、"ゲンダイオンガク"ということを忘れて、素敵ですらある。で、これを素に、旋律楽器と和音楽器によるものから、歌が加わるもの、エレクトロニクスを用いるもの、オーケストラによるものまで、いくつかのヴァージョンが生み出されるのだけれど、ここで取り上げられるのは、スヴォボダによる大胆な解釈を加えて、よりヴァリエイションを見せる、『十二宮』、星座のための12のメロディー(track.1-24)。
12のメロディーを3つずつに小分けして、2回ずつ繰り返し、どちらか一方にはインプロヴィゼーションを加えて、変化を見せる。そうして、全体を織り成すスヴォボダ。素がオルゴールのためのシンプルな音楽であることを最大限に活かし、より自由なイメージを紡ぎ出していて、おもしろい!何より、バス・クラリネット、トロンボーン、アコーディオン、ヴィブラフォン、パーカッション、チェロ、コントラバス、そして、オルゴールという、ひと癖あるアンサンブル!まさにスヴォボダ・カラーのアンサンブルが響かせる不思議なトーン... それは、"ゲンダイオンガク"という堅苦しいイメージをあっさり拭い去って、ニュー・エイジで、アヴァン・ポップで、とても現代的!シュトックハウゼンは、星占いに基づく性格を12のメロディーに籠めたのだけれど、スヴォボダとそのアンサンブルが響かせるトーンは、宇宙空間に浮かぶ星々の明滅、あるいは、都会のネオン・サインの明滅を思わせて、スペイシーで、クール。また、インプロヴィゼーションによって、そこはかとなしに浮かび上がるジャジーさ... シュトックハウゼンの音楽には、時折、ジャズの臭いがすることがあるけれど、学生時代、ジャズ・ピアニストをしていたこともある作曲家だけに、12のメロディーからジャジーな気分がこぼれ出すのも、ちょっと粋に感じられ、魅惑的。
しかし、シンプルなオルゴールのためのメロディーから、豊かなイメージを紡ぎ出したスヴォボダのセンス!作曲家としての才能も発揮して、おもしろいアルバムを繰り出すスヴォボダならではのシュトックハウゼンになっている。というスヴォボダ流を、見事に音にして来る、ひと癖あるアンサンブルの腕利きの面々... いつもながら舌を巻く、縦横無尽のスヴォボダのトロンボーンを軸に、そこにそっと寄り添うリースラーのバス・クラリネット、フッソングのアコーディオンは切れ味鋭く、ローラーのチェロ、フェルナウのコントラバスは渋く、ヴィブラフォン、パーカッションのキーダイシュの絶妙な存在感... それぞれのサウンド、個性がしっかりと息衝きながらも、スヴォボダのセンスにまとまるフレキシブルさ。いや、この感じ、まるで星々の運行のようで、おもしろい。自らのサウンドを響かせながら、ひとつの天体図を見せるかのよう。近付いては離れ、そしてまた近付き、確固としてありながら、スリリングなセッションを仕掛け、ハーモニーを織り成す。

Karlheinz Stockhausen TIERKREIS ・ ZODIAC

シュトックハウゼン : 『十二宮』 星座のための12のメロディー

ウォルフガング・フェルナウ(コントラバス)
シュテファン・フッソング(アコーディオン)
ミヒャエル・キーダイシュ(パーカッション/ヴィブラフォン)
ミヒャエル・リースラー(バス・クラリネット)
スコット・ローラー(チェロ)
マイク・スヴォボダ(トロンボーン/オルゴール)

WERGO/WER 6659 2




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