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夜の音楽のモーツァルト、星々も踊るパーティーへ! [before 2005]

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世界は、一体、どーなってるんだ?!という事態が、途切れなく続いています。もうね、遣る瀬無さ過ぎで、苦しくなってしまう。という時には、とりあえず、モーツァルト... モーツァルトの屈託の無い音楽で、癒されたい。いや、元気になりたい!で、ふと考えたのです。なぜ、モーツァルトの音楽を聴くと、癒され、元気になれるのか?1/fの揺らぎもあるかもしれないけれど、何より、36年という短い人生を、モーツァルトが、目一杯、走り抜いたからではないか... そういう、シャカリキから生まれた音楽に、我々の耳は、知らず知らずの内に共感しているのではないか... 幼い頃から旅に次ぐ旅を経て、ヨーロッパ中の音楽を貪欲に学び、吸収し、青年となってからも、パリに挑み、ウィーンで奮闘し、まさに努力の人だったモーツァルト。天才の音楽というより、努力から生まれた音楽だからこそ、人々の心を捉えるように感じる。アマデウス=神に愛された、という、ステレオタイプは、時として、モーツァルトの音楽の邪魔にすらなるようにも思える。もちろん、人並み外れた才能はあった。けれど、何よりもがんばった人、モーツァルト!そんなモーツァルトを感じながら、今、改めて、モーツァルトの名曲を聴く。
アンドルー・マンゼが率いていた、イギリスの老舗、ピリオド・アンサブル、イングリッシュ・コンサートの演奏で、モーツァルトを代表する名曲、お馴染み、アイネ・クライネ・ナハトムジーク(小夜曲)を中心に、モーツァルトの夜の音楽(七夕も近いしね!)をフィーチャーしたアルバム、"MOZART Night Music"(harmonia mundi FRANCE/HMU 907280)を聴く。

13番のセレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(track.1-4)に、6番のセレナード「セレナータ・ノットゥルナ」(track.8-10)、モーツァルトのナイト・ミュージックを代表する2作品に、まさに冗談な、音楽の冗談(track.11-14)、冗談の対極、対位法が厳めしく繰り出される、アダージョとフーガ(track.5, 6)、さらには、モーツァルトの弟子、アトウッドがアレンジしたメヌエットとトリオ(track.7)... セレナードに、冗談に、対位法に、実に多彩な作品が盛り込まれた"MOZART Night Music"。ちょっと取り留めもないようで、しっかりまとめて来るマンゼ。いや、そのセンス、なかなかでして... アイネ・クライネ・ナハトムジーク(track.1-4)の後で、ちょっと勿体ぶってアダージョとフーガ(track.5, 6)が始まると、何だか冗談のように聴こえ... 実際に、アルバムの最後で、音楽の冗談(track.11-14)が取り上げられ、あの調子外れの脱線で、アルバムの全てが締め括られるという、モーツァルト流のキッチュを強調した仕上がり。そこには、モーツァルトのステレオタイプを崩そうという意図があるのだろうか?始まりのアイネ・クライネ・ナハトムジーク(track.1-4)から、どこかユーモラス。いや、思いの外、楽しげ。マンゼが仕掛けるモーツァルトの夜は、ユーモアに富んだ楽しいパーティー!凄く、魅惑的!
洗練された美しい音楽... というより、モーツァルトが籠めた遊びを拾い集めて、楽しさを際立たせるマンゼ、イングリッシュ・コンサート。すると、聴き知った音楽も、いつにも増して息衝くものを感じ、アイネ・クライネ・ナハトムジーク(track.1-4)などは、程好くワイルド。取り澄ましてなんていられない、夜のモーツァルト?ティンパニーが活躍するセレナータ・ノットゥルナ(track.8-10)は、さらに表情豊かで、ちょっとお酒でも引っ掛けたような調子で、いい調子... 何より、ティンパニーがいい味を出して来る!そもそも弦楽とティンパニーという構成が凄い... 弦楽の流麗な響きに対して、臆することなく太鼓感を目一杯に繰り出して、スパイスを効かせてしまうのだから... また、ハウズが叩くティンパニーに味わいがあって、終楽章(track.10)のカデンツァの誇らしげな姿のユーモラスさ!こういったところでも冗談が感じ取られ、ますます楽しくなってしまう。けれど、ただ楽しいのではない、どこか夜風を感じさせるような心地良さもあって、セレナータ・ノットゥルナ(夜のセレナード)、ナイト・ミュージックであることを忘れさせないマンゼ、イングリッシュ・コンサート。その巧みで繊細でもある演奏が印象的。
で、彼らの演奏が、より映える、モーツァルトの極めて真面目な作品、アダージョとフーガ(track.5, 6)。確かなハーモニーと、エッジの鋭さが捉える、モーツァルトの対位法の見事さ... さらには、ベートーヴェンを予感させる、アダージョ(track.5)のドラマティックさ、バッハに負けず、良い意味でモーツァルト像を裏切って来る、フーガ(track.6)の重々しさ... その重々しさが醸し出す、仄暗さ... ちょっとホラーちっくで、インパクトがある。で、そのインパクトが"MOZART Night Music"に在っては、浮いている!浮かせて、ユーモアに昇華させるマンゼ、イングリッシュ・コンサート。見事な演奏を聴かせれば聴かせるほど、"MOZART Night Music"のおもしろさが引き立つ妙!これは、アダージョとフーガ(track.5, 6)の対極にあるはずの音楽の冗談(track.11-14)でも言えて... その演奏が見事であればあるほど、冗談が決まって来る!終楽章(track.14)の、鮮やかな疾走の果てに、ズコーっとなる、モーツァルトのキッチュを、クールにやり切るシュールさ... さあ、笑わせまっせぇ!という構えが無い、ちょっと通り魔的な笑いが、たまらない。いや、モーツァルトは楽しい!
で、この楽しさは、どこから来るのだろう?と、考える。36年という短い人生を、モーツァルトが、目一杯、走り抜いたからではないか... 密度の濃い、悲喜交々が、モーツァルトの音楽をより鮮やかなものとしている気がする。楽しい音楽は、より楽しく、時として、悪ノリなくらいに、盛り上がって見せて、聴く者を笑顔にする。確かな腕を以ってして、理屈抜きに楽しませる作曲家、モーツァルトの真摯さ!マンゼ、イングリッシュ・コンサートは、その真摯さに丁寧に向き合っている。実際に、そのアプローチは、とても繊細だし、聴けば聴くほど、下手にユーモラスにしようなんてところは微塵も探せない。だからこそ、モーツァルトが息衝く。息衝くモーツァルトが、聴く者を癒し、元気にする。そういうことなんだと思う。

MOZART NIGHT MUSIC ・ THE ENGLISH CONCERT / ANDREW MANZE

モーツァルト : セレナード 第13番 ト長調 K.525 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
モーツァルト : アダージョとフーガ ハ短調 K.546
モーツァルト : メヌエットとトリオ ハ長調 K.485a 〔編曲 : アトウッド〕
モーツァルト : セレナード 第6番 ニ長調 K.239 「セレナータ・ノットゥルナ」
モーツァルト : 音楽の冗談 ヘ長調 K.522

アンドルー・マンゼ/イングリッシュ・コンサート

harmonia mundi FRANCE/HMU 907280




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