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モーツァルトの時代のモダンなサウンド、クラリネット... [before 2005]

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みなさぁーん!!!合唱をやってみたくはありませんかァ?!
NHK、BS世界のドキュメンタリーで放映中、『ギャレス・マローンの職場で歌おう!2』。合唱指揮者、ギャレス・マローンが、コンサート・ホールではなく、イギリスの市井に分け入って、素人掻き集めて、即席の合唱団を組織するという奮戦記。これが、おもしろいんです。とにかく、ギャレス先生シリーズは、欠かさず見ているのだけれど、今シリーズは、殊の外、ズシリと来る。Brexitで露わになった、イギリスの社会的分断。それが、リアルなものとして眼前に展開される『ギャレス・マローンの職場で歌おう!2』。単に楽しい音楽番組ではない、BS世界のドキュメンタリーだなと... そして、その分断を、歌うことで、ハーモニーを創ることで、再生しようとするギャレス。その特異な存在感、不思議なイノセンスさが、疲弊した社会に癒しと笑顔の切っ掛けを生み出す。もちろん、これで全てが解決!なんてことはないけれど、それでも社会における音楽の役割を再認識させられ、ウルっとせずにいられない。いや、上手い下手ではない、みんなで歌うことのすばらしさに感動。そして、我々の社会も、イギリスに近付いていることを意識しなくては... ちなみに、明日、深夜より、後半戦
さて、イギリスのみならず、今、世界は、本当に癒しを必要としているのかもしれない。ということで、クラシック切ってのイノセンス、モーツァルトを聴いてみようと思う。チャールズ・ナイディックのクラリネット、ピリオドの名手たちによるアンサンブル、ラルキブデッリの演奏で、モーツァルトの美しい名曲、クラリネット五重奏曲(SONY CLASSICAL/SK 53366)を聴く。

1789年、友人のクラリネット奏者、シュタートラーのために作曲されたモーツァルトのクラリネット五重奏曲(track.1-4)。今では、クラリネットで演奏されるわけだけれど、本来は、クラリネットを一回り大きくした楽器、バセット・クラリネットのために書かれた作品(ちなみに、ナイディックは、1796年、グレンザー製、バセット・クラリネットのコピーで演奏... )。という、バセット・クラリネット... シュタートラーによって開発された楽器で、クラリネットより音域が広いのが特徴。現在では、この楽器のために書かれたモーツァルトの作品をオリジナルのまま演奏するために、モダンの楽器として復活しているものの、それ以前は忘れられた存在だった。が、モーツァルトがクラリネット五重奏曲を書いた頃は、真新しい楽器!そのあたりを意識して、クラリネット五重奏曲を聴いてみると、また違った印象を受ける?いや、この名曲、改めて聴いてみると、とてもモダンに感じられる。
1789年というと、モーツァルトの死の3年前、その音楽は十分に円熟し、モードやイズムを越えて、独自の世界を響かせる。その独自性に焦点を合わせると、モーツァルトを取り囲んでいた古典主義の音楽とは何か違う境地を見出せるようで、興味深い。いや、だからこその名曲なのだろう。が、ナイディック、ラルキブデッリの演奏は、そういう名曲感を煽ることなく、さらりと演奏して、よりモダンを際立たせるから、おもしろい!ピリオド・アプローチなのに、モダン?まず、ラルキブデッリのピリオドならではの落ち着いた響きが印象的。が、下手に枯れたようなサウンドで、ピリオドを強調することなく、ヴィヴラートを抑えて、スーっと、瑞々しい響きを放つ!それでいて、名曲という雰囲気に流されることなく、軽快に音楽を進めて、思いの外、心地良い音楽を繰り出す。この心地良さに、不思議とモダンを感じてしまう。そこに、主役である、ナイディックのバセット・クラリネットの朗らかな音色がナチュラルに奏でられ、気負うことの無い新鮮なメロディーを紡ぎ出す。いや、本当に新鮮!聴き知った名曲のはずが、生まれたてのようなピュアな表情を見せて、ちょっと驚かされる。この新鮮さ、モダンの気分、この音楽に触れた、当時の人々の感覚を追体験しているのかも... そんな感覚を引き出す演奏に、今さらながら圧倒される。
1799年、モーツァルトの死から8年を経て出版された、34番のヴァイオリン・ソナタに基づく、クラリネット四重奏曲(track.5-7)が続くのだけれど、クラリネット五重奏曲の後だと、チープ?その死後、早くも伝説となっていた「モーツァルト」の名で商売しようというのが透けて見えるような音楽。が、商売する分、キャッチー?何だか、絶妙に人懐っこいから、おもしろい。一方、この当世風にアレンジされた音楽を聴くと、クラリネット五重奏曲(track.1-4)の秀逸さが際立つ... で、最後に取り上げられるのが、クラリネット三重奏曲、「ケーゲルシュタット・トリオ」(track.8-9)。クラリネット奏者、シュタートラーとの交友から、数々の優れたクラリネットのための作品を生み出したモーツァルト、その始まりが、この作品... ピアノ、クラリネット、ヴィオラという、おもしろい編成から響くハーモニーは、落ち着いたトーンが印象的で、シュタートラーを囲んでの、気心の知れた仲で演奏するための音楽ということもあり、気負いのない表情が印象的。また、そこに、モーツァルトらしさが際立つ。
という具合に、五重奏、四重奏、三重奏と、楽器の数を減らして行く展開が興味深く、次第にクラリネットという楽器に焦点が絞られて行くような印象を受けるのだけれど、実際は、クラリネットがアンサンブルに融けて行くような展開で、一見、クラリネットをフィーチャーしながら、そうはしない、ちょっと天の邪鬼な姿勢も垣間見られて、おもしろい。いや、そういう遊びが、モーツァルトの音楽の多彩さを際立たせ、音楽の楽しみにこそ焦点を合わせる、ナイディック、ラルキブデッリ。その演奏は、とにかく、新鮮。いや、この新鮮さを前にすると、モダン楽器による演奏の方が、よっぽど古めかしい。何より、作品が生まれた時の楽しさを蘇らせる演奏に、元気付けられる!楽しいと元気が出る!そして、モーツァルトは楽しい!

MOZART: CLARINET QUINTET・QUARTET・TRIOC ● NEIDICH・L'ARCHIBUDELLI

モーツァルト : クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581 ****
モーツァルト : クラリネット四重奏曲 変ロ長調 〔ヴァイオリン・ソナタ 第34番 変ロ長調 K.378(K.317d) の編曲〕 **
モーツァルト : クラリネット三重奏曲 変ホ長調 K.498 「ケーゲルシュタット・トリオ」 **

チャールズ・ナイディック(バセット・クラリネット/クラリネット)

ラルキブデッリ
ヴェラ・ベス(ヴァイオリン) *
ルーシー・ファン・ダール(ヴァイオリン) *
ユルゲン・クスマウル(ヴィオラ) *
アンナー・ビルスマ(チェロ) *
ロバート・レヴィン(フォルテピアノ) *

SONY CLASSICAL/SK 53366




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