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ロシア由来のイタリア印象主義、レスピーギの輝き! [before 2005]

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はぁ... 何かこう、力なくため息をつくばかりの今日この頃です。日本を見つめても、世界を見渡しても、遣る瀬無いというか、もどかしいというか、ニュースを見ていられなくなるような日々... なので、気分を変えるために、景気の良い音楽を聴く!でもって、近代イタリアの音楽を巡って来たからには、やっぱり、これを聴かなくては... 全ての道はローマに通じる?近代イタリアの音楽のアイコン、レスピーギのローマ三部作!なのだけれど、振り返ってみると、この作品の印象が薄いことに気付く。てか、どんな音楽だった?あまりに有名過ぎて、これまで、ちゃんと向き合ったことがないのかも... と、反省を籠めて、久々に聴いたら、目が覚めた!
ということで、今さらながらに惹き込まれております。マリス・ヤンソンスと、彼が率いていたオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による、レスピーギの代表作、交響詩「ローマの松」、「ローマの噴水」、「ローマの祭り」(EMI/5 55600 2)を聴く。

オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)。
ボローニャ楽派や、マルティーニ神父を輩出した、音楽の伝統を誇る街、ボローニャに生まれたレスピーギ。音楽教師だった父の下、幼い頃から音楽の手解きを受け、やがてボローニャの音楽学校に進み、ヴァイオリンとヴィオラ、さらに古楽(近代イタリアの作曲家にとっては必修課程か?)を、そして、近代イタリアの音楽を切り拓いたマルトゥッチから作曲を学ぶ。卒業後は、サンクト・ペテルブルクへ渡り、1901年から2シーズン、マリインスキー劇場の首席ヴィオラ奏者を務め、この時、リムスキー・コルサコフに師事、当代一流の管弦楽法を吸収し、大きな影響を受ける。イタリアに戻ってからは、演奏家として活動した後、新たな音楽の中心として興隆するベルリンを訪れ(1908-09)、大いに刺激を受けた後、1913年、ローマの名門、サンタ・チェチーリア音楽院の教授に就任(後には院長に... )。以後、ローマを拠点とし、やがて、代表作、ローマ三部作が誕生する。
ということで、そのローマ三部作を聴くのだけれど... いやー、何というキラキラ感!響きがこんなにもクリア(だからこそのキラキラ!)で、美しいとは... とにかく、目から鱗... それはもう、高解像度でローマの細部を撮らえるかのようで、息を呑む。でもって、その澄んだ美しさに、リムスキー・コルサコフの音楽が思い浮かぶ!ロシアの音楽というのは、遅れてやって来た印象が強い(実際には、中世以来の伝統が脈々と受け継がれていて... しかし、バロック期の西欧化により、後進国という位置付けがなされてしまったわけだけれど... )。が、19世紀後半、独自の花を咲かせるに至ってからは、ヨーロッパの辺境で、近代音楽の呼び水となるような興味深い音楽を展開。ドビュッシーやラヴェルといったフランスの印象主義も、ロシアからの影響を巧みにフランスらしさに置き換えていて... 特に、オーケストレーションの魔術師、ラヴェルの、そのオーケストレーション自体が、リムスキー・コルサコフにインスパイアされており... そんなラヴェルに通じる、レスピーギ・サウンドの澄んだ美しさは、やはりリムスキー・コルサコフ由来なのだなと、納得。で、よりリムスキー・コルサコフを感じさせるローマ三部作... そこには、直伝を強く意識させるものが多々あり、例えば、ローマを描きながらも、ロシアや、その東のオリエンタルさが滲むところ... その淡いエキゾティシズムが、かえって古代から続くローマをファンタジックに魅せていて、印象的。近代イタリアの音楽のアイコンも、ロシアという視点から見つめると、また違った表情を見出せるのかもしれない。
という、ローマ三部作、最初に作曲されたのが「ローマの噴水」(track.5-8)。レスピーギがローマにやって来て3年目、1916年に作曲された第1作には、より瑞々しいヴィジョンが現れていて、夜明け(track.5)、朝(track.6)、昼(track.7)、晩(track.8)と、4つのパートで描かれる時間の経過、静から動へ、そして再び静へと向かう流れが映像的でもあり、またとても詩的で、魅了される。そして、「... 噴水」から8年後の1924年に完成した第2作、「ローマの松」(track.1-4)は、よりヴィジュアライズされた音楽がキャッチー。第2部、「カタコンバ(地下墓地)の松」(track.2)のおどろおどろしい荘重さ、第3部、「ジャニコロの松」(track.3)での鳥たちがさえずり(録音されたもの... って、ミュージック・コンクレートを先取り?)には、惹き込まれる。一方で、第1部、「ボルゲーゼの松」(track.1)の煌びやかさ、第4部、「アッピア街道の松」(track.4)の勇壮さも聴きどころで、そうしたあたりがより強調されるのが、「... 松」の4年後、1928年に作曲された第3作、「ローマの祭り」(track.9-12)。古代(track.9)、中世(track.10)、ルネサンス(track.11)、そしてレスピーギの時代(track.12)となるのか、時代祭り的な展開と、それを映画音楽のような豊かな表情で描き出して、特に、最後、「主顕祭」(track.12)のセンチメンタルからの賑やかさは、フェリーニの映画を思わせる味わいがあって、魅惑的。
って、もうね、重ね重ねも、今さらながらにして、ローマ三部作に魅了。で、それを決定付けるのが、ヤンソンス、オスロ・フィルの鮮やかな演奏!マエストロ、ヤンソンスが、オスロ・フィルを率いて、一躍、注目を集めた頃だけに、若い!何というか、オスロ・フィルが放つサウンドが、思いの外、発色が良く、若々しい!時を経て、今のヤンソンスも見事なのだけれど、若い時なればこその魅力が、このローマ三部作には充ち溢れている気がする。そして、オスロ・フィルの、北欧ならではのトーン、一音一音を鮮やかに鳴らし切って生まれる鮮烈さ!イタリアの作曲家を北欧から捉えることで、レスピーギの音楽的ルーツ、リムスキー・コルサコフの存在が、より強調されて、おもしろい。何より、クリアで、色彩豊かで、三部作それぞれの味わいを巧みに引き出しながら、聴く者を最高に楽しませてくれるヤンソンス、オスロ・フィル。はぁ~ こういう、すばらしい音楽、すばらしい演奏を、すっかり忘れていたとは、改めて反省するばかりであります。

RESPIGHI: ROMAN TRILOGY
JANSONS

レスピーギ : 交響詩 「ローマの松」
レスピーギ : 交響詩 「ローマの噴水」
レスピーギ : 交響詩 「ローマの祭」

マリス・ヤンソンス/オスロ・フィルハーモニー管弦楽団

EMI/5 55600 2




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