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ある若者の旅の出会い、イタリアのメンデルスゾーン... [before 2005]

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普段のクラシックでは、あまりに軽く見られているかもしれないイタリア... いや、あまりに当たり前だから、特別に注視したりしないのが"イタリア"なのかも... クラシックのベースを作り上げたイタリアなればこそ、その存在はクラシックそのものであり、目立ち難いのかもしれない。が、ベースを作るほどの国... 如何にしてベースを作り上げたかに焦点を当てると、音楽史の最も興味深い展開が浮かび上がり、イタリア、凄い!となる。そうしたあたりを見つめて来た今月、ますます惹き込まれてしまうのだけれど、ここで、ブレイク。で、イタリアを旅し、インスパイアされた作品を残した作曲家... ベルリオーズに続いての、メンデルスゾーン!
ということで、ジョン・エリオット・ガーディナーの指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、メンデルスゾーンの4番の交響曲、「イタリア」を、原典版と並べて取り上げるという、意欲的な1枚(Deutsche Grammophon/459 156-2)を聴く。

21歳のメンデルスゾーンは、1830年の秋から翌年の夏まで、いわゆる"グランド・ツアー(アルプス以北の良家の子女が、アルプス以南の過去の英知に触れる... )"のような形で、イタリア各地を旅し、ひと揃い美術館や遺跡、景勝地などを見て回り、その様子をすばらしい水彩画(これが半端ない!)に残している。もちろん、音楽もいろいろ聴いたようなのだけれど、ドイツ―オーストリアがヨーロッパの音楽の主導権を握った頃だけに、イタリアの音楽にはあまり魅力を感じなかったようで... 一方、様々な人物たちと出会っている。ミラノでは、ベートーヴェンの愛弟子にして、「不滅の恋人」ではないかとも言われるピアニスト、ドロテア・フォン・エルトマン男爵夫人と会い、楽聖について貴重な話しを聞き... モーツァルトの長男で、ミラノで会計官吏をしていたカール・トーマス・モーツァルトにも会った... そしてローマでは、留学中のベルリオーズと親交を深めているのがなかなか興味深い。水と油のような音楽性を持つ2人の作曲家、5歳違いの若者が、仲良く一緒に過ごしていたというから、何だか微笑ましい。そんなイタリア滞在の思い出を綴ったのが、4番の交響曲、「イタリア」(track.1-4)。イタリア滞在中からすでに書き始められていたのだけれど、ベルリンへと帰った後、1832年に、ロンドンのフィルハーモニック協会から委嘱を受け、本格的に作曲。翌、1833年に完成、ロンドンで初演され、大成功!が、メンデルスゾーンはそれに満足せず、改稿を重ね、結局、今に聴く完成版は、メンデルスゾーンの死後に初演され、出版されている。
メンデルスゾーンは、何に苦慮していたのだろう?1楽章の瑞々しさなど、イタリアで描いた水彩画そのもので、メンデルスゾーンならではの品の良さ、端正さに磨きが掛かり、ブリリアント!なのだけれど... そこで、ガーディナーは、一通りイタリア交響曲を演奏してから、5番、「宗教改革」(track.5-8)を挿み、1833年、ロンドンで初演された原典版を用い、2楽章か終楽章(track.9-11)までを、もう一度、演奏。どうブラッシュ・アップされたのかを、炙り出す。いや、非常に雑然としている原典版... ベルリオーズと出歩いていたローマの猥雑さというか、そういうリアルが漂い、独特の緊張感を孕む。それは、ベルリオーズっぽい?なんて、言ってみたくもなる感覚... 自ら書いてはみたものの、これは自分の音楽ではない... そんなつぶやきが聞えて来そうなサウンドにも思える。そこから、改めて聴き馴染んだ完成版(track.1-4)を聴いてみれば、やっぱりメンデルスゾーンが描いた水彩画そのもの!パシっと構図が決まり、緻密で、繊細で、そこから瑞々しさを発する、ある種のアルカディアとしてのイタリアが広がる。原典版と完成版を聴き比べると、生々しい記憶を如何に美しい思い出に昇華するか、メンデルスゾーンの奇妙な葛藤を見出すようでおもしろい。そこに、メンデルスゾーンの本質が表れるのかも...
そんなメンデルスゾーンを聴かせてくれたガーディナー、このマエストロならではの凝ったアプローチに膝を打つ!いやー、メンデルスゾーンという作曲家の内側を露わとしてしまうようで、ドキドキさせられる。そういう部分を見せないのが、優等生、メンデルスゾーンだけに... もちろん、演奏も見事!ウィーン・フィルのクラシカルな響きと、ガーディナーならではの端正さが、いい具合に作用し合って、メンデルスゾーンの音楽性を引き立てる!無駄の無さと、その中で紡ぎ出される豊潤さの絶妙な塩梅... それは、イタリア交響曲のみならず、5番、「宗教改革」(track.5-8)でも活き、優等生、メンデルスゾーンの折り目正しさと、ロマン主義なればこその瑞々しさを、しっかりと響かせて、実に魅力的に織り成す。

MENDELSSOHN: SYMPHONIES NO.4 "ITALIAN" & NO.5 "REFORMATION"
GARDINER/WIENER PHILHARMONIKER


メンデメスゾーン : 交響曲 第4番 イ長調 Op.90 「イタリア」
メンデメスゾーン : 交響曲 第5番 ニ短調 Op.107 「宗教改革」
メンデメスゾーン : 交響曲 第4番 イ長調 Op.90 「イタリア」 1833/34年版 から 2、3、4楽章

ジョン・エリオット・ガーディナー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

Deutsche Grammophon/459 156-2




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