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"Viaggio Musicale"、初期バロック、北イタリアを旅する。 [before 2005]

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さて、5月となりました。連休です。みなさんは、どんな風にお過ごしですか?当blogは、家で音楽!ということで、先月から、クラシックにおける"イタリア"に注目しているのだけれど、そのイタリアの音楽が、最も勢いがあった頃、17世紀へ... それは、フィレンツェで生まれたオペラが急成長を遂げる世紀で... そのオペラと対を成すオラトリオが生まれ、教会における音楽がよりヴァラエティに富み、発展した世紀で... その教会を中心に、器楽曲が大きく進化を遂げた世紀でもあって... そうした背景には、ストラディヴァリといった名工がおり、さらには、世紀の最後で、クリストフォリがピアノを発明するに至る... まさに、イタリアが音楽を大きく変えた世紀!そんなイタリアの17世紀を、少し砕けた調子で、軽やかに旅するアルバムを聴いてみようかなと...
ジョヴァンニ・アントニーニ率いる、イル・ジャルディーノ・アルモニコが、初期バロック、器楽曲を大きく進化させた、北イタリアの作曲家たちの作品を拾い集め、活きのいい演奏で楽しませてくれる"Viaggio Musicale"(TELDEC/8573-82536-2)を聴く。

"Viaggio Musicale"、音楽旅行というタイトルが付けられたアルバムのジャケットには、チェロのケースが置かれたコンパートメントの情景... 音楽が始まる前から、旅の気分を掻き立てる。そう、これは旅なのかもしれない... "Viaggio Musicale"が取り上げるのは、ルネサンスを脱し、勢いよく新しい時代、バロックへと飛び出した若々しい音楽ばかり。つまり、それは、コレッリや、その後に続く盛期バロックの作曲家たちを準備する過渡的な音楽なのだけれど、この過渡的なあたりに、音楽そのものの「旅」を見出すのか... うつろいゆく音楽の、一所には留まれないとても自由な気分。旅に出る時のあのワクワクとした心地が、"Viaggio Musicale"に並べられた作品から響き出す。ルネサンス・ポリフォニーの複雑さから解き放たれ、シンプルな姿を惜しみなく繰り出す初期バロックの器楽曲の数々は、現代からしても驚くほど魅力的。中世以来の音楽の集大成としてのルネサンスの終焉と、今に至るクラシックの確固たる枠組み生み出したバロックの狭間にあるからこその、自由な在り様が、とても現代的に感じられ、何かクラシックのイメージを逸脱する瑞々しさ、輝きに触れたようで、驚かされる。
始まりは、モンテヴェルディの『ウリッセの帰還』のシンフォニア... まさに、オペラの重々しい緞帳が上がるような、芝居掛かった音楽で幕を開ける"Viaggio Musicale"なのだけれど、そこからコンティヌオが小気味よくリズムを刻み、空気は一変!メールラのチャッコーナ(track.2)を聴いていると、軽快に流れて行く車窓が浮かぶよう。そして、旅立ちの期待と晴れがましさが、そのシンプルな音楽に広がり、のっけから惹き込まれてしまう。で、その流れを、ダントーネが弾くチェンバロによるインプロヴィゼーション(track.3)がナチュラルに受け、続く、カステッロのソナタ、第4番(track.4)へと絶妙につなげる!単に作品を並べるのではない、全体をひとつの作品のようにまとめて来るアントニーニ... 緩急を付けて、様々な表情で彩って、北イタリアの都市を巡るような"Viaggio Musicale"、音楽旅行を綴る。また、リッチョの4声のソナタ(track.8)のポリフォニックなあたりには、ルネサンスの伝統が未だ息衝いていることを感じさせ、カステッロのソナタ、第10番(track.7)に用いられるコーリ・スペッツァーティ(分割された2つの声部の掛け合いがエコーのような効果を生む... )では、ヴェネツィア伝統の流儀がアクセントを加え、過渡期なればこそのスタイルのヴァリエイションも幅広く提示。が、初期バロックのかなりマニアックなあたりを細かく取り上げながらも、そういう堅苦しさ、気難しさを微塵も感じさせない巧みさには、脱帽。
しかし、何と言っても"Viaggio Musicale"の魅力は、初期バロックのシンプルなあたりから訴え掛けて来る、何とも言えないキャッチーさ!メールラのチャッコーナ(track.2)の、ほのぼのとしたオスティナートに乗って繰り出される明朗なフレーズは、そよ風のように心地良く... ウッチェリーニの「ラ・ベルガマスカ」に基づくアリア(track.11)の、掻き鳴らされるキタローネは、ギターのようにカッコよく、リコーダーはラヴリーに歌い、聴いていると何だか笑顔になってしまう!ピッチニーニのトッカータ(track.14)では、リュートが爪弾くやさしげなメロディーに、ほっと一息... マリーニの「ラ・モニカ」に基づくソナタ(track.10)では、ヴァイオリンがエモーショナルに歌い、そのメロディーを聴いていると切なくなってしまい、ウッチェリーニの「針箱」に基づくアリア(track.21)から聴こえて来るセンチメンタルさには、懐かしい記憶が蘇るようで、ジーンと来てしまう。この表情の豊かさ!ルネサンスと決別する感情のビッグバンのフレッシュさ!これって後のクラシックでは味わえないものかも...
そんな、フレッシュな初期バロックを聴かせてくれる、アントニーニ+イル・ジャルディーノ・アルモニコ。ま、彼らなら当然の息衝く音楽なのだけれど、ヴィヴァルディあたりの盛期バロックでないことが、彼らのバロック・ロックを絶妙にいなすこととなり、尖がり過ぎず、思いの外、ナチュラル!これが、また魅力的で... とはいえ、各所に挿まれたインプロヴィゼーションや、それぞれのナンバーでの超絶技巧は鮮やかに決まっていて、さすが!いや、もう隙が無い。とにかく、腕利き揃いが事も無げに全てのナンバーを見事に演奏してのけて、舌を巻く。それもそのはず、ダントーネのチェンバロに、プルハルのハープ、テュベリーのリコーダー、オノフリのヴァイオリン、ギエルミのガンバと、今じゃ、それぞれアンサンブルを率いる面々... これはもう、スーパー・アンサンブルだわ... もちろん、アントニーニのリコーダーも冴え渡る!

Viaggio Musicale Il Giardino Armonico

モンテヴェルディ : オペラ 『ウリッセの帰還』 から シンフォニア
メールラ : チャッコーナ
即興演奏
カステッロ : ソナタ 第4番
スパーディ : 再びわかれて 〔ローレのマドリガーレに基づく〕
即興演奏
カステッロ : ソナタ 第10番
リッチョ : 4声のソナタ
即興演奏
マリーニ : 「ラ・モニカ」に基づくソナタ
ウッチェリーニ : 「ラ・ベルガマスカ」に基づくアリア
ロッシ : 3声のシンフォニア
フォンタナ : ソナタ 第15番
ピッチニーニ : トッカータ
ウッチェリーニ : ソナタ 第18番
ロッシ : エコーによる3声のシンフォニア
ロニョーニ : 野も丘も 〔パレストリーナのマドリガーレに基づく〕
ロッシ : 4声のガリアルダ 「ザンバリーナ」
ロッシ : 5声のシンフォニア・グラーヴェ
メールラ : カンツォン 「ラ・カッタリーナ」
ウッチェリーニ : 「針箱」に基づくアリア
チーマ : ソナタ
メールラ : ルッジェーロ
ロッシ : 5声のガリアルダ 「ノルシーナ」

ジョヴァンニ・アントニーニ/イル・ジャルディーノ・アルモニコ

TELDEC/8573-82536-2




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