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ベルカント・オペラ?リソルジメント・オペラ、ノルマ! [2013]

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日本が地震大国だということは、当然のこととして認識しているわけだけれど、またも大きな地震があると、ちょっと挫けそうになります。それでもね、前に進むしかないわけで、そうして歩んで来た日本であって、2011年からの5年であって、熊本で避難を余儀なくされているみなさん、ささやかながら、ここ東から、一日も早い復旧を、心から願っております。何より、早急に余震が収まりますよう、願っております。さて、何を取り上げようか、迷ってしまう。そもそも、音楽のことなどを書くべきか、考えてしまう。けれど、ここはひとつ、あえて、予定通りに、『アイーダ』に続いての、『ノルマ』... いや、改めて聴いてみると、元気付けられるオペラであって、パワフル!こういう時だからこそ、挫けない音楽が沁みるのかも... そんな、力強いプリマが一本筋を通すオペラ!
バロック・ロックの鬼才、ジョヴァンニ・アントニーニの指揮、チューリッヒ・オペラのピリオド部隊、オーケストラ・ラ・シンティッラの演奏、チェチーリア・バルトリがタイトル・ロールを歌う、刺激的なベッリーニのオペラ『ノルマ』(DECCA/478 3517)を聴く。

ベルカント・オペラの傑作、『ノルマ』。で、「ベルカント」というと、美しい声という意味の通り、美しさこそのイメージがあるのだけれど、そういうステレオ・タイプをばっさりと切り捨てるのがアントニーニ!序曲から、このマエストロならではのテンションの高さで繰り出され、目が覚めるよう。そして、フィナーレまで一気に、そのテンションで駆け抜けて行く... で、いいのか?!いいんです!という有無を言わさぬ説得力に痺れてしまう。嗚呼、音楽を聴いている、音楽を聴いて熱くなっている、という、この実感たるや... そうそう味わえるものではない。もちろん、ベルカント・オペラとしての美しさを放棄しているわけでなく、この傑作の代名詞であるカスタ・ディーヴァ(disc.1, track.9)のやわらかな音楽、ノルマにより歌われるスローなメロディーに、バルトリならではの得も言えぬ装飾が施されれば、まさに声の美しさに深く、深く、聴き入らざるを得ない。いや、ため息するしかない。が、改めて『ノルマ』というオペラを見つめ直すと、実に勇壮なオペラであったことを思い知らされる。
1831年、ミラノ、スカラ座で初演された『ノルマ』は、現在のフランス、ガリアを舞台とし、太古以来のケルト文化と、進出して来たローマ帝国の文化衝突を背景に、ケルトの精神的支柱である巫女、ノルマが、ローマのダメ男に引っ掛かってしまってスキャンダルとなり、みんなからブっ叩かれるという、最近も、どっかで見たぞ?という悲劇... 悲劇だけれど、一本筋を通したノルマの男気(女だけど... )に、みんなが涙するという、人間の弱さと強さを見せつける壮絶な物語。で、その背景たる文化衝突と、ケルトのローマへの蜂起に、オーストリアの影響下に置かれていた当時のイタリアが重ねられ、イタリア統一運動=リソルジメントを秘めたオペラとして、ヴェルディのオペラ(例えば『ナヴッコ』... )に先駆けた作品だとも言える。いや、支配する側がローマであることで、巧くカモフラージュされてはいるものの、抑圧に人々が立ち上がる姿は、間違いなくリソルジメント・オペラと言える。そういう緊張感を孕んだ作品にとって、ベルカント・オペラという看板は、時として邪魔になるのかも...
アントニーニは、まさにリソルジメント・オペラとしての『ノルマ』を掘り起こすかのよう。文化衝突の緊張感、常に戦争の影を感じさせるキナ臭さ、そうした背景をきっちりと描いて、だからこそのテンションを以って繰り出される濃密なドラマ。ベッリーニが籠めたものをきちっと捉えると、圧倒的な力強さを放つ『ノルマ』は、間違いなくその後に続くヴェルディの熱いオペラの登場を準備した作品だと感じられる。それでいて、ベルカントの巨匠なればこその美しさが、単に勢いだけではない充実した音楽も響かせていて、若きヴェルディの及ばないクウォリティというものを味あわせてくれる。また、ワーグナーにも影響を与えているベッリーニ... 端々からワーグナーへとつながるサウンドを見出し、実に興味深い。そんな風に見つめると、『ノルマ』は、19世紀オペラの二大巨頭の分水嶺とも言える作品なのかもしれない。いや、そういうイメージを喚起させるアントニーニの辣腕に感服するばかり。そんなアントニーニを信頼し切っての、圧倒的なパフォーマンスを見せるバルトリも凄い!
いつもながらの鮮やかなテクニックの上に、アントニーニに共鳴して、力強いイメージを発するバルトリ... その男気さえ感じさせる歌声のカッコよさと来たら、もう!もちろん、ダメ男へとフラフラっとよろめいてしまった弱さもあった、嫉妬に狂ってしまうこともあった、けれど、それら全てにけじめをつける覚悟を孕んだ確かな歌声は、ただ美しいだけではない、まさにカリスマを感じさせるもので、熱く、濃密。巫女としての聖性、ひとりの女としての嫉妬、母としての母性、指導者としての毅然、それらがひとつのロールに落し込まれ、表情が紡がれてゆく迫力。ノルマの複雑さを全力で歌い切るバルトリの姿は、単なるプリマとは一線を画す。アリアが、二重唱がすばらしいというだけではない、何かオペラと一体化してしまったような、そんな印象すら受ける。
で、ノルマをよろめかした、今はアダルジーザが好きと言ってのけるダメ男、ポリオーネを歌うオズボーンの明朗なテノール!よろめくのもわかる。そして、アダルジーザを歌うジョーのソプラノの可憐さ!ノルマがメッゾで、アダルジーザがソプラノだからこそ、ノルマがより力強く映える妙。という歌手たちを支える、オーケストラ・ラ・シンティッラがまた見事!モダン・オーケストラでは絶対に出し得ないカラーで、全ての音を徹底して息衝かせる。「ベルカント」の裏に隠された、ザワつくような迫真のサウンドに興奮を覚えずにいられない。さらに、畳み掛けるようにドラマを盛り上げる、チューリッヒ歌劇場合唱団!アントニーニ、バルトリに負けず、熱いコーラスを繰り広げて... それらがひとつとなっての熱量たるや!

BELLINI NORMA
CECILIA BARTOLI


ベッリーニ : オペラ 『ノルマ』

ノルマ : チェチーリア・バルトリ(メッゾ・ソプラノ)
アダルジーザ : スミ・ジョー(ソプラノ)
ポリオーネ : ジョン・オズボーン(テノール)
オロヴェーゾ : ミケーレ・ペルトゥージ(バス)
クロティルデ : リリアーナ・ニキテアヌ(メッゾ・ソプラノ)
フラーヴィオ : レイナルド・マシアス(テノール)
チューリッヒ歌劇場合唱団

ジョヴァンニ・アントニーニ/オーケストラ・ラ・シンティッラ

DECCA/478 3517




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