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秋、クラシックの"東"、 [selection]

さて、日に日に秋を感じるようになって参りました。朝夕は冷え込むようなことも... そうしたら、早速、どこかで風邪をもらって来てしまい、数年ぶりの発熱!で、もう、焦る。片付けてしまうもの、後に回すもの、あれをこーして、これをあーして... 熱でぼぉーっとしている頭をフル回転。下手をすると、普段の方が、よっぽど、ぼぉーっとしているのかも。と、反省。いや、元気でいられるって、ありがたいなと、つくづく。今年も風邪の季節が間もなくやって来ます。みなさんも、気を付けて!という、風邪の季節の前に、秋です。この秋に聴いてみたいアルバムをセレクションしてみようかなと... 冬、北欧を巡り春、フランスを巡り夏、アメリカを縦断しての、秋は、クラシックの"東"を見つめる。西を核に成立したクラシックの"東"には、中心からの距離が生む独特な温もりや、手触りが残るのかも... そんなことを感じた、先月、中東欧の国民楽派を巡って、からの、東方の教会音楽の諸相に触れて。すっかり"東"に魅了され、またそこに秋の匂いを見つけ、クラシックの"東"を散策することに...
ということで、ひとつのエリアとしての東ではなく、クラシックの中心たる西に対しての周縁、辺境としての"東"の音楽、"東"にインスパイアされた音楽から、8タイトルをセレクション。西の中心のように先端的にならない、ありのままを受け入れ、マイペースさから繰り出される"東"の音楽の、様々な表情から秋を見出し、いつものクラシックとは一味違う音楽世界を彷徨う?

クラシックにおける東は、エキゾティシズムの格好の題材を提供してくれるエリア... 『後宮からの誘拐』に、『サムソンとデリラ』、あるいは、『トゥーランドット』に、『蝶々夫人』。オペラでは、とても魅惑的に描かれる東だけれど、改めてその存在を丁寧に見つめると、また違う広がりや深みを見出せて、西には無い感性や可能性の宝庫として再認識させられる。ある意味、それは、ロジックでないエリア... というと語弊があるかもしれないが、西欧的な価値観とは違うスケールが用いられる"東"の、西欧的なロジックに縛られないマイペースさが、クラシックという西のフォーマットにケミストリーを起こすのかもしれない。そんなケミストリーを追う8タイトル。何を以ってして"東"なのか、曖昧なところもあるけれど、それもまた"東"かなと、言い訳しつつ...

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まずは、バロックから... ヨーロッパの東、チェコに生まれ、東の音楽の都、ドレスデンで活躍したゼレンカ。国民楽派の登場の一世紀前の作曲家でありながら、すでにチェコが育む独特のトーンを滲ませ、バロックにして印象的なサウンドを響かせる。そこに、ドレスデンならではのゴージャスさが加わり... ルクス+コレギウム1704による、ゼレンカのミサ・ヴォティヴァには、時に野卑にも感じる力強さ、西欧とは一味違う煌びやかさが広がり、そこはかとなしに"東"の魅力が聴く者を包み込むのか... そんな音楽を聴いていると、鮮やかな紅葉の森に迷い込むようで、西欧のバロックとは違う豊かなイメージを喚起されるのかも。
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時代を下って、古典主義からロマン主義にうつろう頃を彩ったピアノのヴィルトゥオーゾ、フンメル。スロヴァキアに生まれ、ウィーンで活躍したフンメルの2番のピアノ協奏曲を、コンメラートのピリオドのピアノで... そのピリオドのピアノが、ツィターを思わせるようなサウンドを奏でていて... そのせいか、ロマン主義の民俗性が際立ち、スロヴァキアで生まれたフンメルのアイデンティティが思い掛けなく浮かび上がるよう。それは、ショパンを先取りするセンス... フンメルはドイツ系だけれど、どこか国民楽派を意識させられるサウンドに惹き付けられて。フォークロワが楽しげに弾みキャッチーでありながら、どこかセンチメンタルでもある、さり気ない"東"感が素敵。
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クラシックの"東"には、人懐っこさのようなものを特に感じる。その人懐っこさが、秋という季節に沁みるような... そんな印象を勝手に持っているのだけれど... ルーマニア生まれで、パリを拠点に活躍したエネスクの音楽には、"東"の人懐っこさに、パリの華やかさが加わって、人を酔わせる独特のマジカルさを生み出す。そのあたりを鮮やかに増幅してみせた、クレーメル+クレメラータ・バルティカ。弦楽オーケストラ版で聴くエネスクの八重奏曲は、まるで実り多き秋の収穫祭のような賑やかさ!その一方で、どこか怪しげでもあり、この妖しげさが、より魅惑的な雰囲気を醸していて惹き込まれる。ん?ハロウィン?
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そう、"東"には西欧にない「不思議」がある気がする。ロジカルな西欧とは違い、「不思議」の存在を許容する懐の深さがあって、より豊かなイマジネーションを掻き立てられる。まさに、そんなオペラだろうか、ゲルギエフ+マリインスキー劇場による、リムスキー・コルサコフのオペラ『見えざる街、キーテジの伝説と乙女、フェヴローニャ』。ロシアならではのトーンに彩られた優しげなメロディーと、リムスキー・コルサコフならではのガラス細工のような精巧なオーケストレーション。そうして綴られる、儚げで切ない物語は、ファンタジーなればこそ、他国に侵略される哀しみが美しく昇華されて共感を呼び、今のロシアとは正反対!

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さて、ちょっと視点を変えまして、"東"にインスパイアされた音楽を聴いてみる。で、ギリシャ正教会に帰依した風変わりなイギリス人、タヴナーの作品集、"ETERNITY'S SUNRISE"。永遠の日の出... ウーン、神秘的なタイトル。それを東方教会風のトーンで、現代音楽にして極めてシンプルに、アンビエントに紡ぎ... また、グッドウィンの指揮、アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックの、ピリオドならではの透明感を湛えた演奏で奏でれば、この世のものとは思えない音楽に仕上がる。ソリスト、コーラスの澄み切った歌声もまたそれを際立たせ... この、深く深く厭世的な気分は、一体、何なのだろう?いや、まさに、ニルヴァーナ...
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西から見つめる"東"というのは、やっぱりミステリアスなのだろう... 東の極みで生活している者には、なかなか解り難い感覚だけれど... そんなミステリアスを、フランスの印象主義で蒸留して、美しく響かせた作品、ファン・ラートのピアノで聴く、ケクランの『ペルシアの時』。イランを旅する旅行記を基に作曲された組曲に、具体的なオリエンタルはまったく感じられない。けれど、明らかに西ではないサウンド... いや、エキゾティシズムを解脱した"東"の姿の瑞々しさたるや!ファン・ラートのタッチも相俟って、ミステリアスで、クリアで、東の極みに在っても、この"東"には、魔法を感じてしまう。時に"東"とは、方角を超越した世界を示すのかもしれない。
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さて、本来の東へと戻りまして、中国へ... ヘレヴェッヘの指揮、アンサンブル・ミュジック・オブリクの演奏、レンメルト(アルト)、ブロホヴィッツ(テノール)の歌による、室内楽版、マーラーの「大地の歌」。唐代の漢詩をテキストに、程好くシノワズリーを用いて、嫌味にならないエキゾティシズムを香らせる。それはまさに期待に違わぬ"東"なのだけれど、そこに悠久の時の流れを感じさせるのが「大地の歌」の他とは違う"東"との向き合い方のように思う。そうして生み出される、西欧には無いスケール感... おもしろいのは、室内楽版になって、よりそのあたりが強調されていること... いや、あらゆる意味でスケールを越える"東"の姿がここにあるのかも。
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そして、日本へ... 武満の邦楽器による作品集、"IN AN AUTUMN GARDEN"。様々な視点から"東"を散策して、秋の庭へと辿り着くのだけれど、そこは"東"の極み、ただならぬ場所。尺八が奏でるサウンドは、風そのもので、琵琶が奏でるサウンドは石や水そのもの... 自然がそのまま響きとなって厳しい表情を見せるのか。もはや音楽であることすら超越している武満の音楽。西から見つめる"東"ではなく、"東"が自らを見つめて到達した境地が持つ迫力... 20世紀、クラシックは、極東に辿り着き、自然そのものへと還るのか?武満による秋の庭には、すでに冬の空気が漂うかのよう。




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