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ドヴォルザークの、スラヴ、ダンス・カタログ! [before 2005]

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フォークロワを取り入れて人懐っこい国民楽派は、クラシックには欠かせない定番のレパートリーを多く抱えている。が、その気安さからか、何となく安易なイメージで捉えていたような気も... スメタナの『我が祖国』を、今一度、じっくりと聴いてみて、思い掛けなく味わうドイツ・ロマン主義のカクテル。国民楽派のイメージを裏切ってくれる新鮮さ!もちろん、ドイツ・ロマン主義は、国民楽派の先生であり、その基盤となったイズム... 似ていて当然ではあるのだけれど、ドイツ語圏からの独立を目指したチェコの国民楽派が、こうもドイツ・ロマン主義的であると、民族主義に裏打ちされたはずの音楽としては、ちょっと拍子抜け?が、そう簡単に線引きできないのがヨーロッパであって、その上での民族主義の難しさを、国民楽派の一筋縄には行かない音楽に見出すことができるのかもしれない。そして、再び、チェコの国民楽派... 今度は、もう少し民族主義...
イヴァン・フィッシャー率いる、ブダペスト祝祭管弦楽団の、ドヴォルザークのスラヴ舞曲集、全曲(PHILIPS/464 601-2)。『我が祖国』とは違って、より素直にフォークロワを取り入れてのキャッチーなナンバーの数々... チェコではなくて、スラヴ?という疑問を抱えつつ、ヴァラエティに富むスラヴ民族の様々な地域、もちろんチェコのものも含むダンス・カタログを楽しむ!

ドヴォルザークのスラヴ舞曲は、ブラームスのハンガリー舞曲にインスパイアされて生まれた。が、"チェコ"舞曲ではなく、なぜ"スラヴ"舞曲となったのだろう?チェコ語は西スラヴ語系に分類されるとはいえ、"国民"楽派が、より大きな集団、スラヴ民族(東はロシアから南はマケドニアまで、中東欧の大多数を占める民族... )に注目したことに、不思議を感じていた... ということで、前回、『我が祖国』を聴くにあたり、さらりとチェコの歴史をさらって、気になるキーワードに出くわす、汎スラヴ主義!19世紀、オーストリアからの独立を目指したはずのチェコだが、一方で、スラヴ民族という大きな集団への関心を強めていた。支配者、ドイツ語圏と、被支配者、スラヴ民族という、わかり易く、よりダイナミックな対立軸を打ち出して、オーストリアに対抗しようとしたチェコは、自治を獲得した1848年、プラハにおいて汎スラヴ会議を主催。被支配者、それぞれの独立だけではない、スラヴ民族の連帯という新しいムーヴメントが生み出される(間もなく、汎スラヴ主義の理想は、ロシアの覇権主義に絡め取られてしまうのだが... )。そうした延長線上に、ドヴォルザークのスラヴ舞曲集は存在している。
1878年に、ピアノ連弾のための作品として、第1集、8曲が作曲されたスラヴ舞曲集。ドヴォルザークは、この作品でブレイク。そうして、人気作曲家となって8年を経た1886年に、第2集、8曲が作曲されて、現在の全16曲が出揃う。で、スラヴ舞曲の名の通り、チェコ、ウクライナ、スロヴァキア、ポーランド、クロアチアといった、スラヴ系の国々の様々なリズムを取り込み、時にはそれらをカクテルし闊達に繰り広げる、まさにスラヴのダンス・カタログ!より幅広くスラヴに題材を求めたことで、ヴァラエティに富むダンスが次々と繰り出されて、飽きさせない!改めて丁寧に聴いてみると、それぞれにトーンがあって、興味深い。第1集、1番の、景気の良いチェコのフリアントに始まって、やはりチェコのダンスが多くを占めるのだけれど、陽気で楽しく、牧歌的な表情も見せるチェコのダンスの人懐っこさは、本当に素敵。一方、ウクライナのドゥムカの仄暗さが、スラヴ舞曲集に味わいを加えていて... 全16曲中、最も有名な、第2集、2番(track.10)の、センチメンタルが色濃い音楽もまた、このドゥムカ... それから、何となくウィーンの匂いがして来る、スロヴァキアのオドゼメック、第2集、1番(track.9)、クロアチアのコロ、第2集、7番(track.15)の軽やかさ、第2集、8番(track.16)の、締めに優雅なワルツというのも乙。でもって、それらみな舞曲だけに、一曲一曲がコンパクトだというのが魅力的。コンパクトだからこそ、そこに詰め込まれた民族性がより濃厚に響き、インパクトを生む。いやー、久々に聴くと、一曲一曲の充実度に目を見張る!似通って民族的な全16曲... なんて、安易な仕事はして来ないドヴォルザークに感心!
で、それをまた徹底して強調して来るチーム・ハンガリー、イヴァン・フィッシャー+ブダペスト祝祭管ならではのセンス!グローバルが常態となった21世紀、オーケストラ・サウンドにも均一化という言葉がチラつくのだけれど、ブダペスト祝祭管には、そうした時勢にまったく頓着しない... というより、見事に抗って、ハンガリーというローカル性を、確信を以って繰り出して来るおもしろさがある。またそうしたセンスが、ドンピシャではまるのが、スラヴ舞曲集であって... のっけから、泥臭さを絶妙に効かせて、中東欧ならではの民族性をきっちりと引き立てて来る。すると、一曲一曲が活き活きと表情を膨らませ、音楽としての味わいをグンと高めてしまうから凄い。いや、ブダペスト祝祭管の演奏は、ワールド・ミュージックにカテゴライズされても良いのでは?とすら思えて来る。思えて来はすれど、しっかりとクラシックのオーケストラでもあるのだから、その表現力というのは、並々ならぬものがある。だからこそ、息衝くスラヴのダンス!誰が聴いてもワクワクさせられるようなストレートな魅力を、深みを以って、鮮やかに解き放つ彼らの姿は、もの凄くクールだ。

DVORÁK: SLAVONIC DANCES
BUDAPEST FESTIVAL ORCHESTRA/FISCHER


ドヴォルザーク : スラヴ舞曲集 第1集 Op.46
ドヴォルザーク : スラヴ舞曲集 第2集 Op.72

イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管弦楽団

PHILIPS/464 601-2




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