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スペイン・バロック、エキゾティック、リテレス! [before 2005]

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さて、アメリカ大陸からヨーロッパへと戻るのだけれど、メインストリームには戻らない... クラシックの夏休みということで、ワールド・ミュージックから眺めるクラシックの続き。クラッシクの周縁にあって、常に個性的な存在感を見せるスペインへ!周縁であるがゆえに、普段、注目されることはあまりないが、改めてスペインにおける音楽史を振り返ると、その独特な展開に興味深いものを感じてしまう。イスラム勢力の支配を経験したイベリア半島ならではの、西欧とは違う文化気質... 中世のカンティーガや、トロバドゥールの活躍は、特にエスニックな表情を見せ... かと思えば、フランドル生まれの国王(カルロス1世)の即位により、本場のルネサンス・ポリフォニーが移植され、ルネサンスの最後の大輪をスペインで咲かせることに... が、バロックが到来すると、スペインの土地に根差したサウンドを吸い上げて、スペイン情緒へとつながる独特のセンスが醸成されてゆく。
そんなスペイン・バロックが生み出した、スペイン語による、スペイン独自のオペラ、サルスエラから、1708年、マドリードで初演された、もちろんスペイン情緒が彩りを添える隠れた佳曲... エドゥアルド・ロペス・バンゾ率いる、アル・アイレ・エスパニョールによる、リテレスのサルスエラ『アシスとガラテア』(deutsche harmonia mundi/05472 77522 2)を聴く。

アントニオ・リテレス(1673-1747)。
そもそも、スペイン・バロックというもの自体がマニアック... なので、リテレスとなると、もう... いや、極めてローカルな存在なわけです。しかし、そのローカルなあたりを21世紀から見つめると、思い掛けなく魅惑的となるからおもしろい!そんなリテレスが生まれたのが、現在はリゾートとして、またクラシックにおいてはショパンの療養先として知られるマヨルカ島。が、どんなこども時代を過ごしたのか、どんな風に音楽と出合ったのかはよくわからず... しかし、1688年にはマドリードの王室礼拝堂の聖歌隊に加わり音楽を学んでいたらしいから、抜きん出た音楽の才能があったのだろう。やがて、王室礼拝堂のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者(1693-)となり、キャリアをスタートさせると、宮廷のための舞台作品を手掛ける機会を得て、程なく成功、宮廷作曲家としての名声を得ることに... そうした作品のひとつが、ここで聴く、1708年に初演された、サルスエラ『アシスとガラテア』。
1708年というと、ヘンデル(1685-1759)はまだロンドンへ渡っておらず、ヴィヴァルディ(1678-1741)はオペラに乗り出す目前、オペラの都、ヴェネツィアが最後の輝きを見せる中、ナポリ楽派がそれに取って代わるのは、あともう少し... バロックの到来とともに産声を上げたオペラが大きく花開き、さらにその先にバロック・オペラの爛熟期が始まろうとする頃、スペインでは王朝交代があり、新しい王家はイタリア・オペラの導入に積極的だった。そういう背景を意識しながらリテレスのサルスエラ『アシスとガラテア』を聴くと、俄然、興味深さが増すような気がする。まず、耳を捉えるのは、いきなり陽気なラテンのリズムが弾けること!カスタネットが小気味良く鳴らされて、まさにスペインにやって来た!という感じに... 物語こそ、ギリシア神話に基づく、ニンフ、ガラテアと、羊飼いのアシスの恋の行方を牧歌的に綴るものだけれど、サルスエラとなれば、たっぷりとスペイン情緒に彩られるわけで、同時代のバロック・オペラにはないエキゾティックさが魅惑的。何より、スペイン情緒から繰り出されるキャッチーさ!それが、音楽劇の純粋な楽しさを引き立てていて、屈託の無い音楽を繰り広げ、キラキラしている。
その一方で、イタリア・オペラの影響も実に大きい。サルスエラは、ドイツ語圏におけるジングシュピールのように、台詞と歌による歌芝居の形を取るものだが、『アシスとガラテア』では、レチタティーヴォが用いられ、台詞のほぼ全てが歌われ、よりオペラ的。また、全編に散りばめられたスペイン情緒のベースには、西欧のバロックのスタイルが裏打ちされており、音楽として、しっかりとした聴き応えを生み出している。スペイン情緒の合間に置かれたアリアなどは実に堂々としたものがあって、同時代のイタリア・オペラにまったく引けを取らない。やはり、宮廷作曲家として、王家の嗜好は無視できないところもあったのだろう。が、リテレスの見事なところは、器用にオペラの要素をサルスエラに落とし込めているところ。それが、音楽劇として、かえって強化されたところもあり、極めて充実した音楽を聴かせてくれる。さらには、サルスエラとバロック・オペラの融合から、ナポリ楽派を予感させるような流麗さが聴こえて来て、バロックの爛熟期を飛び越し、その先を思わせる音楽も響き出すから、おもしろい。ローカルと最新モードのカクテルが、思わぬ化学変化へとつながる妙... リテレスは侮れない...
というリテレスを掘り起こした、スペインのピリオド・アンサンブル、バンゾ+アル・アイレ・エスパニョール。スペイン・バロックにも、こういうおもしろい存在がいたのですよ!という、強い思いに溢れる、歌声にして、演奏であって... カスタネットに、ギターが、スペインの色彩を際立たせれば、オーケストラも負けずにスパーク。ピリオドならではのキレ味の鋭さから、カラっとしたサウンドを生み出せば、スペインの色彩をより発色の良いものとする。そうして紡がれる、アシスとガラテアのドラマは、歌手たちの好演があって、活き活きと、楽しげに繰り出され、いつものバロック・オペラとは一味違う、気安さもあり、サルスエラとしての魅力も余すことなく伝えてくれる。しかし、このキラキラとした音楽!大いに惹き付けられる。

ANTONIO DE LITERES ・ ACIS Y GALATEA
AL AYRE ESPAÑOL ・ EDUARDE LÓPEZ BANZO

リテレス : サルスエラ 『アシスとガラテア』

アシス : ロラ・カサリエゴ(メッゾ・ソプラノ)
ガラテア : マルタ・アルマハノ(ソプラノ)
グラウコ : クセニヤ・メイアー(メッゾ・ソプラノ)
ネリダ : マリア・ルイス・アルバレス(ソプラノ)
ティスベ : マリナ・パルド(メッゾ・ソプラノ)
モモ/ポリフェモ : ホルディ・リカルト(バリトン)
ドリス : マリサ・ロカ(メッゾ・ソプラノ)

エドゥアルド・ロペス・バンゾ/アル・アイレ・エスパニョール

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