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夏、アメリカ大陸を縦断する。 [selection]

梅雨、明けました。夏です。温暖化の只中にある中で、夏が楽しい、なんて、とても言えたものではないのだけれど、それでも、どこかでワクワクするものがあるのはなぜだろう?真っ青な空に立ち上がる入道雲を見つめると、どうも解放的な気分になる。そして、ちょっぴり懐かしく感じる。学校から解き放たれたこどもの頃の記憶なのか?そんな風にシンプルに日々が過ぎていた頃の懐かしさだろうか?あるいは、お盆の帰省の記憶?いつか泳いだ海の記憶?「夏」を噛み締めてみると、じわっといろいろな味が心の中に広がるようで、不思議な気分にもなる。そんな「夏」を音楽で辿る... 四季を音楽で旅する試み。冬、北欧を巡り、春、フランスを巡っての、夏はアメリカを縦断してみようかなと... クラシックも夏休みというか、ヴァケイションのような感覚で。てか、ギリシャ疲れ?少しヨーロッパを離れたくなったか?南北アメリカの広大な中に生まれた音楽を聴いてリフレッシュ!
ということで、「夏」を意識して... いや、夏こそアメリカの音楽じゃないか?アメリカの音楽はどこか夏っぽい... という、何となくの思いから、8タイトルをセレクション。クラシックの故郷、ヨーロッパから離れての、広い空の下(って、勝手なイメージ... )、カラリとした(ばかりではないけれど... )、元気いっぱい(ばかりでもないけれど... )の音楽で、南北アメリカを縦断してみる。

アメリカの音楽を、「夏」と言ってしまってよいものか... なんたって、南北アメリカは、北極圏から南極大陸の向かいまで、あらゆる文化が混在する巨大な大陸。が、音楽に関しては、ぼんやりと、共通する感覚が、あるような気がする。それは、ヨーロッパの音楽に対しての歴史の浅さだろうか?ま、当然と言えば、それまでなのだけれど、新しいからこそ、まだ煮詰まっていない新鮮な在り様というか、時に、伝統に則っていては実現し得ないような大胆さを響かせる。で、アメリカの音楽だからこそできる冒険が、「夏」の気分をもたらしてくれるような... という、勝手な、そして、おぼろげなイメージからのセレクション、まずは南から!

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最初は、夏休み!みたいな感じで、アゲて行きたいと思います!ドゥダメル+シンモン・ボリバル・ユース・オーケストラによる、ラテン・アメリカの管弦楽作品集、"FIESTA"。レブエルタスのセンセマヤに始まり、お約束、ヒナステラの『エスタンシア』など、ズバリ、「祭り」というタイトルが示す通りの、盛り上がり!で、ユースの面々が、とにかく元気がいい!この屈託の無さから繰り出されるラテン・サウンドというのは、芯からホット!で、ありながら、若さから来る爽快感もあって、クール!最後のバーンスタインのマンボの弾けっぷりなんて、もう...
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ところで、アメリカの音楽の歴史は浅い?いや、そうでもない... というあたりを聴かせてくれる、古楽アンサンブル、ハープ・コンソートによる"MISSA MEXICANA"。メキシコにおけるバロック期の音楽に迫る興味深い1枚は、スペインからの音楽と、メキシコの土に根差したサウンドが融合して、独特の風合いを見せる。それは、ちょっとスパイシーで、キャッチーで、ヨーロッパのバロックには無い素朴さと、だからこその味わいが、得も言えず... 目を閉じると、陽炎の揺らめきの中に広がるメキシコの風景が浮かび上がるよう...
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もうひとつ、古楽アンサンブルによるラテン... こちらは、完全にラテン!プルハル+ラルペッジャータによる、ピアソラのナンバーをタイトルとした"LOS PAJAROS PERDIDOS"。アカデミズムとフォークロワがきっちりと分離されていない頃の音楽を範疇とする古楽は、ある意味、ワールド・ミュージックなのだと思う。ということを知らしめるのか、実にナチュラルに、あっけらかんとラテンを繰り広げてしまう驚き!あのジャルスキーがラテンを歌ってしまうという大胆さ!何より、ラテンの広がりと、味わい深さと、カッコ良さに魅了されるばかり。

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ここで、クラシックに立ち返りまして... けど、ちょっぴりクラシックからは外れる?ヘンシェル・クァルテットによるヒナステラの弦楽四重奏曲集。アルゼンチンを代表する作曲家、ヒナステラは、実はロッカーだった?!いや、一部、プログレにも影響を与えたということで知られるだけに、そのモダニズムには、期せずしてロックに聴こえてしまう要素が... そして、それが顕著な2つの弦楽四重奏曲。ヘンシェル・クァルテットのエッジの効いた演奏が、ヒナステラのロックをより際立たせていてクール!プログレッシヴな弦楽四重奏はおもしろい!
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ロックと来たら、次はトランス?なのか?これは... シュライエルマッハーがピアノのみならず、電子オルガンをも弾く、グラスの鍵盤楽器のための作品集、"Dance & Sonata"。グラスがミニマリズム全開だった頃のサウンドというのは、もーね、理屈抜きですよ!そう、それはサイケデリックだった時代... 電子オルガンが放つ原色のパルスにただひたすら打たれて至る忘我... 暑さも忘れる?いや、この繰り返しの暑苦しさたるや!暑苦しさの中に、めくるめくポジティヴなサウンドが繰り広げられての酩酊感...

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さて、音楽によるアメリカの縦断の旅は南から北へと進んでおります。で、これぞアメリカ!という音楽を聴いてみる。ハーモニー・アンサンブル・ニューヨークによる、ガーシュウィンのアルバム、"GERSHWIN BY GROFÉ"。タイトルの通り、グローフェがアレンジャーとして活躍していた頃、ガーシュウィンがまだそういうサポートを必要としていた、ブレイクして間もない頃を再現する意欲作!聴こえて来るのは、狂騒の時代のニューヨークの景気の良さ、アール・デコの時代の金ピカ感。1920年代のイケイケな気分が最高!
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で、金ピカの後、アメリカは大恐慌に見舞われるのだけれど、それが転機となって生み出された音楽... MTT+サン・フランシスコ響の、コープランドの三大バレエを取り上げるアルバム、"COPLAND THE POPULIST"。今一度、アメリカを見つめ直して生まれた、アメリカの原風景を捉える音楽の清々しさたるや... その清々しさにあるのは、アメリカそのものの空気感だろうか?ドライで、見通しがよくて... 嗚呼、この感じがアメリカなんだなと。保守的な音楽を展開しても、ヨーロッパとは違う感覚を見出す。それでいて、郷愁を誘うのだよね...
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そうして、アメリカの原風景、そのものへ... カントリーやゴスペルの昔の姿を探る、古楽ヴォーカル・アンサンブル、アノマニス4の"GLORYLAND"。つまり、ここで繰り広げられるのは、アメリカの古楽なのだと思う。けど、そこまで遠い昔ではない、不思議な距離感... この"近過去楽"が見せる懐かしさは、アメリカを知らずとも誘う郷愁で充ち溢れている。ひとつひとつのナンバーの、素朴で、屈託の無い表情は、まるで夏休みのスナップ。そんなアルバムを聴き終えての余韻は、夏の終わりの寂しさだろうか?

ということで、南から北へ、「夏」を求めて、アメリカを縦断する8タイトル。あえて、ヴァラエティに富むアルバムを選んだこともあるかもしれないけれど、8タイトルから聴こえて来る音楽の多様さに驚かされる。そして、これだけの多様を生む可能性の大きさこそ、アメリカなのかなと... その可能性に掛けた作曲家たちのチャレンジングなあたりが、ヨーロッパとは違う、アメリカの音楽を生み出したのかなと... ヨーロッパの古い伝統から解き放たれた音楽に、某かの「夏」を見出す。




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