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宇宙にして哲学... 古代ギリシアの突き抜けた音楽世界。 [before 2005]

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えーっ、前回に続いてギリシャです。って、なぜならギリシャはおもしろい!白亜の神殿がファンタジーだと知って、向き合うこととなったリアルなギリシャの衝撃... 何なんだ?!この国は... と、世界中が衝撃を受けているわけですが、衝撃を与える、古典ではないギリシャの新鮮さ!白日の下となった実際のギリシャの姿が、とても興味深いのです。いや、我々は、古代ギリシアに関心があっても、近代ギリシャについてほとんど知らなかった。そうして触れたテオドラスキのゾルバ!たまらなく人懐っこく、それでいて味わい深い... そこには、重ねられた古今東西の文明の地層を感じ、独特のハーモニーを響かせるようで、魅惑的。とても興味深く感じられた。で、地層の最も奥深いところが気になった。近代ギリシャの遠い、遠い祖先、古代ギリシアの音楽...
古代ギリシアを大胆に再現し、大きな衝撃を与えた1978年の録音。録音でも高く評価された名盤。グレゴリオ・パニアグアによる古楽アンサンブル、アトリウム・ムジケ・デ・マドリッドによるアルバム、"Musique de la GRÈCE ANTIQUE"(harmonia mundi FRANCE/HMA 1951015)を聴く。で、今を以ってしても、やっぱり衝撃を受ける。何なんだ?!この音楽は...

ピューン、ドドドドン、シャリシャリン!まるで、何かをひっくり返してしまったようなサウンドで始まる"Musique de la GRÈCE ANTIQUE"。いきなりの騒音にドキっとさせられ、のっけから衝撃的。けど、このドキっ!が、タイム・スリップのスイッチとなるのか... 扉の音楽は、パニアグアによるオリジナルなのだけれど、古代ギリシアの楽器を再現して生まれるミステリアスなサウンドは、まったく異質なもので、軽く、慄きすら覚える。そうして始まるエウリピデスの悲劇『オレステス』からのコーラス(track.2)... いや、正しくは"コロス(古代ギリシアの演劇における群衆役、その台詞は歌われていた... )"であって、クラシックにおける"コーラス"とはまったく異質なもの... しかし、"コロス"こそ、"コーラス"の原初の姿であるのも事実... そして、この異質さに、古代ギリシアが如何に遠いかを思い知らされる。奇妙に半音階が割り込んで来るメロディーを、飄々としたリズムに乗って、淡々とユニゾンで歌えば、まるで呪文のよう。それは、我々が考える音楽とは根本的に違うような気がして来る。
古代ギリシアの音楽は、紀元前4世紀(アレクサンドロス大王が大活躍する世紀... )以降のものが、40ほど残されている。が、その記譜法は、我々の知るもの(は、中世ヨーロッパに始まる... )とは違うもので、古代ギリシアの音楽を正確に読み解くことはできない。だから、ここで聴く音楽も、古代ギリシアの人々が聴いた音楽とは言い切れない。この失われてしまった音楽という事実が、古代ギリシアの遠さを改めて思い知らされる。一方で、わかっていることも多い。例えば、古代ギリシアにおける音楽の位置付け... 古代ギリシアにおける音楽の存在は、我々の音楽よりもより重要な意味を持っていた。音楽は自然科学の一端であり、宇宙の法則を音楽として捉え、音の波長を数学から割り出し、それらをまた哲学に結び付け... 一般教養として音楽を学ぶことは当然であり、音楽は単に楽しむものではなく、秩序や美徳を学ぶものだったらしい。そういう古代ギリシアの人々の音楽の向き合い方を知ると、現代を生きる我々の音楽に対する姿勢のいい加減さ、だらしなさが、ちょっと恥ずかしくなる。とはいえ、なかなか古代ギリシアの人々の境地に達するには、一筋縄では行かない。宇宙にして哲学だもの...
という背景はさて置き、"Musique de la GRÈCE ANTIQUE"から響いて来る音楽の衝撃はただならない。古典美を極めた古代ギリシアのイメージからは想像も付かないプリミティヴさ。古代ギリシアは、ヨーロッパ文明の原点と言われるが、その音楽のプリミティヴさは、間違いなく西欧のそれとは違う。もちろん、パニアグアによる再創造であることを念頭に入れなくてはいけない。にしても、突き抜けている。何と言うか、無難なイメージに落とし込むことがまったくできない。西欧的でなければ、オリエント風だ。なんて、安易なことが言えない。いや、この突き抜けている状態が古代ギリシアなのだろうなと... 我々が触れることのできる世界の音楽、ワールド・ミュージックの数々のイメージは、この後に成立するのだから... それだけ古代ギリシアは古い。そうした中で、実に奇妙なのが日本の古い音楽に似ていること... 三味線を思わせる乾いた響き、数え唄のようなメロディー、はたまた雅楽のようなトーンが浮かび... デルフォイのアポロン賛歌、第2(track.21)の後半部なんて、もうニッポン!この既視感は一体... 日本の古い音楽もまたプリミティヴ、ということか?もの凄く、気になってしまう。
そんな古代ギリシアの音楽を蘇らせた、グレゴリオ・パニアグア+アトリウム・ムジケ・デ・マドリッド。その作業は模索の連続であったと思うのだけれど、聴こえて来る音楽からは迷いを感じない。信じるイメージをやり切って生まれる本物感とでも言おうか、確固たる古代ギリシアが響いて来るから凄い。それでいて、そのミステリアスなサウンドにグイグイと惹き込まれてしまう。それは、ただ聴くのとは違う感覚?宇宙から哲学まで... の、古代ギリシアにおける音楽の在り様を実現している?

Musique de la Grèce Antique GREGORIO PANIAGUA

グレゴリオ・パニアグア : アナクルシス
『オレステース』 の スタシモン
デルフォイのアポロン讃歌 第1
テクメッサの嘆き
パピルス・ウィーン 29825
太陽神への賛歌
ムーサへの讃歌
ネメシスへの讃歌
パピルス・ミシガン
アエナオイ・ネフェライ(不断に流れる雲)
セイキロスの墓碑銘
パイアン パヒルス・ベルリン 6870
Anonymi Bellermann 97-104
ピュティア祝勝歌 第1
パピルス・オクシュリンコス
オクシュリンコスのキリスト教讃美歌
ホメロスの讃歌
パピルス・ゼノン カイロ断片
テレンティウス 『義母』 第861行
『道徳詩』 第1歌 第11行から第12行
デルフォイのアポロン讃歌 第2
パピルス・オスロ 1314 A/B/グレゴリオ・パニアグア : エピロゴス―カタストロフ

グレゴリオ・パニアグア/アトリウム・ムジケ・デ・マドリッド

harmonia mundi FRANCE/HMA 1951015




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