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クワっ!何?沼の妖精、プラテー、嫁に行く... [before 2005]

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じわりじわりと梅雨入りしてゆく日本列島。関東平野も梅雨入りしました。いや、何気に例年通りで、ほっとする。のは、今年こそエル・ニーニョ、だとか、5月の夏日が多過ぎ!とか、そんなニュースが続いたからか... 梅雨らしく、雲多めの仄暗さに、何か落ち着くものがあり、この仄暗さに、居心地の良さを感じたりして... 花々しかった春に、若干、疲労感?あじさいのブルーに、癒される今日この頃であります。ところで、6月は"june bride"。また何で梅雨時に結婚式?とも思うのだけれど、6月は結婚の女神、juno(ギリシア神話のヘラにあたる、古代ローマの女神、ラテン語ではユーノー、で、今回、取り上げるものに関しては、フランス語でのジュノンとなる... )の月、女神にあやかっての6月の花嫁... ということで、婚礼のためのオペラを聴いてみる。
1745年、ヴェルサイユ宮にて、スペイン王女とフランス王太子の婚礼で上演された作品、ジュノンのせいでひと騒動、沼の妖精が涙を見て、クワッ、クワッ、カエルが大合唱!マルク・ミンコフスキ率いる、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの演奏による、「梅雨」にして「ブライド」な、ラモーのオペラ『プラテー』(ERATO/2292-45028-2)。梅雨入りしたら取り上げようと思っていた!

1733年、パリ、オペラ座にて、『イポリトとアリシ』でオペラの世界にデビューしたラモー(1683-1764)。50歳という満を持してのデビューは、フランス・オペラに新風をもたらすことに... そして、『優雅なインドの国々』(1735)、『カストールとポリュックス』(1737)、『ダルダニュス』(1739)など、代表作を立て続けに世に送り出し、あっという間にフランス・オペラの大家となる。さらに、1745年には、ヴェルサイユ宮で『ナヴァールの王女』を上演し、王室作曲家の称号を与えられ、同年、王太子の婚礼のためのオペラを作曲するという栄誉に浴する。で、その婚礼のために作曲された作品が、ここで聴く、バレ・ブフォン『プラテー』。なのだけれど、これって本当に王家の婚礼に相応しいか?おもしろいけど、悪ノリが過ぎないか?と、心配になるところも...
浮気な夫(ジュピテル)、嫉妬深い妻(ジュノン)、さらには偽装結婚、あげくどブスな沼の妖精、プラテー(まるちゃんに出てくる、みぎわさんのキャラそのもの!)を、みんなで笑い物にするという、何ともめでたくないストーリー。いや、ジュピテル、ジュノン夫妻の仲直りがあって、めでたしではあるのだけれど... 何でも、スペイン・ブルボン家からブルボン本家に嫁いで来た新婦が、実際に見場が悪かったらしく、何か悪意があったのか?本家と分家の婚礼に関しては、王太子の父、ルイ15世(この人が、典型的な浮気な夫!)が、新婦の姉との結婚をドタキャンした過去があり、両家はギクシャク... なお、新婦の父、スペイン王、フェリペ5世(ルイ15世の叔父... )は、フランス王位を狙っていたこともあり、本家と分家の微妙な関係が裏にあったのかもしれない。救いは、新郎新婦が仲睦まじかったこと... が、結婚の翌年、新婦は産後の肥立ちが悪く、亡くなってしまう。
という裏話しはともかく、ラモーの音楽はキレている。悪ノリもラモーの音楽で繰り広げれば実に表情豊かで魅力的。ヴェルサイユ宮の初演から4年後には、パリ、オペラ座でも上演され、人気を集めたとのことだが、納得。キャラの立った登場人物たちに、笑わせるヘンテコなツボが散りばめられ... 特にカエルたち!プラテーは沼の妖精だけに、カエルたちを引き連れていて... で、"quoi(クワ)"、何で?と、大合唱(disc.1, track.13)!クワッ、クワッ、クワッ、クワッ、クワッ!フランス語を解さなくともウケる。それから、フランス・オペラには欠かせないバレエ!ラモーらしいシンコペーションを効かせたリズムから繰り出されるダンスのカッコ良さと来たら、もう... そのスパークリングな音楽に触れれば、心躍らずにいられない。もちろん、バレエに限らず、あらゆるナンバーがキャッチーで、フランスらしいメローさにも彩られ、バロックを脱しつつある、ロココの趣味の良さも感じる。お洒落でありながら、絶妙にズッコケて、それでいてスタイリッシュでもあるラモーの音楽。悪ノリを、上質かつ多彩な音楽で仕上げて、活き活きと物語を紡ぎ出すラモーのセンスに、改めて感服。大いに魅了される。
そんなラモーを鮮やかに繰り広げる、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル!とにかく、このコンビならではの最高に活きのいいサウンドが、ラモーの音楽を、まるで、今、生まれたかのようなフレッシュさで響かせる!そうして、どんどん調子付いて来ると、これってクラシック?なんて思いすら過り... 今となってはアカデミックなオペラであり、ラモーともなれば雅やかなフランス・バロックの象徴のように捉えられるわけだけれど、当時は音楽シーンをリードした切っ先の鋭い音楽であって、そういう当時の生々しさを蘇らせることに長けたミンコフスキ。18世紀、宮廷を、劇場を沸かした刺激的な音楽は、今を以ってしても刺激的。
ところで、この『プラテー』を特徴付けるのが、タイトルロール。神々の長、ジュピテルに求婚され、有頂天の沼の妖精、プラテー嬢を、何と男性が歌う!それは、ドラァグ・クイーンを先取るような感覚だろうか?カストラートがヒロインを歌うこともあった時代ではあるけれど、そうした時代に在って、確信犯的なグロテスクとしての女装... 初演でプラテーを歌ったジェリヨットの肖像を見ると、まさにドラァグ・クイーンの元祖といった雰囲気(さすが、ラ・カージュ・オ・フォールの国!)。そうしたあたりも、妙に新しい?このオペラ、現代においても、様々な可能性を秘めていそうな気がしてならない...

RAMEAU
Platée
MARC MINKOWSKI


ラモー : バレ・ブフォン 『プラテー』

プラテー : ジル・ラゴン(オート・コントル)
フォリー/タリー : ジェニファー・スミス(ソプラノ)
テスピス/メルキュール : ギ・ドゥ・メイ(オート・コントル)
ジュピテル/サティール : ヴァンサン・ル・テジエ(バリトン)
ジュノン : ギィユメット・ロランス(メッゾ・ソプラノ)
シテロン/プロローグのモミュス : ベルナール・デルトレ(バス)
  アムール/クラリーヌ : ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)
2幕と3幕のモミュス : ミシェル・ヴェルシェーヴ(バリトン)
アンサンブル・ヴォーカル・フランソワーズ・ヘール(コーラス)

マルク・ミンコフスキ/レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル

ERATO/2292-45028-2




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