冬、北欧を巡る... [selection]
「北欧」というと、もの凄く遠い印象がある。そういう距離感もあってか、あまり馴染みが無い。
そうか?そうなのか?よくよく見渡せば、日本人は人知れず「北欧」が大好きだったりする。ずばり、HOKUO(ESSENCE OF SCANDINAVIA... )というパン屋があって、アンデルセン(お手本は、いつもデンマーク... )というパン屋もあって... その名前の元になったアンデルセン(デンマークが誇る童話作家... )の童話に、ムーミン(フィンランドのヤンソンが生み出した... )の絵本は、こどもたちには欠かせない。LEGO(デンマーク製ブロック... )もだ。それから、北欧デザインも忘れるわけには行かない... これが一気に一般化したのが、IKEA(スウェーデン発の家具... )であり、FLYING TIGER(デンマーク発の雑貨... )であり。様々に日本人を惹き付ける「北欧」。知らず知らずの内に、じわっと浸透している「北欧」の魅力って、何だろう?そして、普段、あまり意識することのない「北欧」という括りが発するイメージの多様さに、とても興味深いものを感じる。
そこで、音楽に目を向けて... 生誕150年のメモリアル、ニールセンとシベリウスを聴いて来た今月、北欧を代表する2人の作曲家の音楽と向き合ってみて、クラシックにおける「北欧」もまた興味深いなと。でもって、寒い冬に聴く「北欧」というのが、また味わい深いのか。そこで、ニールセン、シベリウスだけでない、「北欧」を聴くセレクション... 音楽で多彩な極北を旅する試み。
「北欧」というと、とにかく寒いイメージがある。北極圏に入る地域もあり、今頃は太陽が昇らない日々を送っている場所もあるはず... だからだろうか、「北欧」の音楽には、何とも言えない温もりを感じることがある。寒い雪の日、やさしげに揺れる暖炉の火を見つめるような、素朴さと暖かさ... 外に広がる厳寒があってこそ生まれる、「北欧」ならではの温度感か、そうした音楽に触れていると、ぽっと心が温まるような...
そんな、1枚... ノルウェーのバリトン、ヴァイサーが歌う、ノルウェーを代表する作曲家、グリーグの歌曲集。ドイツ・リートとそう遠くない音楽が展開されるも、そこはドイツとは違う、辺境の地、「北欧」。良い意味での中心を外れた、ヨーロッパの北の果てのローカル性が醸す素朴さに包まれて、「北欧」としての味わいが、じわっと広がる。で、そうした音楽を、ありのままで歌うヴァイサー!瑞々しくも、どこか不器用そうな、彼の表情にグっと来てしまう。いや、だからこそのナチュラルさが、「北欧」の魅力を何気なさの中にしっかりと浮かび上がらせていて、印象的!北の果ての朴訥さにこそ、よりヒューマニスティックな歌声を響かせて生まれる温もり... 聴き入ってしまう。
ロマン派にして国民楽派、極めて19世紀的なグリーグの音楽... ではあるのだけれど、ヨーロッパの中心とは違い、「北欧」なればこその周縁性が、ロマン主義が若かった頃の瑞々しさを保ち、そうした瑞々しさから繰り出される国民楽派としてのフォークロワなテイストは、けして泥臭くなることなく、軽やかに響いて... パーヴォの指揮、エストニア国立響の演奏によるグリーグの管弦楽作品集、"norwegian dances"は、瑞々しくも気の置けないグリーグならではの魅力をしっかりと引き出す。澄み切った極北の大気と、暖炉を囲む人々の団らんだろうか、両極にあるもの巧みに結び、「北欧」の美しさ、楽しさを活き活きと描き出す。
クラシックで「北欧」というと、合唱王国というイメージがある。エリク・エリクソンという、今や伝説となった合唱指揮者の存在や、そのエリクソンが育てたスウェーデン放送合唱団など、北欧には世界を魅了するコーラスが多くある。そんな、合唱王国、「北欧」を、丁寧に歌い綴った、ヒリアーが率いたエストニア・フィルハーモニック室内合唱団によるシリーズ、"BALTIC VOICES"。バルト海を核に、その沿海の合唱作品を様々に集め、「北欧」ばかりでない、海がつなぐ東西の文化の交わりまでを捉え、より広がりのある「北欧」を歌った好シリーズ。いや、我々は、「北欧」と安易に括ってしまうところがあるわけだけれど、当然ながら、それぞれの国や地域に個性があるわけで、そうした「北欧」の多彩さを教えてくれる、ヒリアー、エストニア・フィルハーモニック室内合唱団。期待を裏切らない「北欧」の透明感を堪能させてくれるvol.1、東方のミステリアスなトーンが滲んで魅力的なvol.2、ステレオタイプを打ち破る現代の闊達なサウンドを繰り出すvol.3と、一概にイメージでは語れない「北欧」のおもしろさに惹き込まれる。一方で、そうした多彩な音楽を器用に歌いこなすエストニア・フィルハーモニック室内合唱団のハイ・クウォリティ!そのすっきりとしたハーモニーに、「北欧」を強く感じずにはいられない。どんな作品を前にしても、徹底して磨き抜かれた美しい歌声が、コーラスの結晶となって、光り輝くよう。
さて、このあたりで、寒い「北欧」を聴いてみる。いや、生半可の寒さではないはず。我々には想像し得ない世界... そういう厳しさを音楽にすると... シムクスが弾く、ラトヴィアの現代の作曲家、ヴァスクスのピアノ作品集。現代にあって、難解な"ゲンダイオンガク"とは一線を画すヴァスクスの音楽... その独特なシンプルなスタイルは、かえって鮮やかなサウンドを紡ぎ出し、惹き込まれるのだけれど。ここで聴くピアノ作品のストイックさは、まさに極北の音楽。鋭く「北欧」の空気感を捉えるようなサウンドは、氷の世界を思わせて厳しくも美しく。また、シムクスの鋭敏なタッチが、そうした表情を際立たせ、清冽な「北欧」の姿に魅了される。
やっぱり、「北欧」の音楽には自然が欠かせない。厳しい環境があってこそ生まれる、圧倒的な情景... 他の地にはない極北の雄大な自然は、「北欧」の音楽に大きなインスピレーションを与えているはず... そして、それを強く印象付けてくれるのがシベリウスの交響曲!で、ここで取り上げるのは、レヴァインの指揮、ベルリン・フィルの演奏による、シベリウスの4番と5番交響曲。交響曲の抽象性と、「北欧」の人知を超えた自然の融合!清冽が生む鮮烈!この2つの交響曲から聴こえて来るサウンドというのは、「北欧」音楽の極北なのかも... また、オーケストラの極北、ベルリン・フィルによる水際立った演奏が、「北欧」を壮麗に鳴り響かせて圧倒して来る。
さて、最後は、厳寒のヴォリュームを緩めて、華麗なる19世紀、ヴィルトゥオーゾたちが活躍した時代へ... レーンのピアノ、リットン率いるベルゲン・フィルの演奏で、グリーグに続くノルウェーの作曲家たち、アルネスとシンディングのピアノ協奏曲。で、そのヴィルトゥオージティの華やかさは、グリーグに引けを取らない。でもって、雄大!ここが、「北欧」のコンチェルトの醍醐味だろうか。特に、アルネスのキャッチーさは、劇画的に極北の風景を描き出すようで、ダイナミック!レーンのピアノも、ヴィルトゥオーゾ・コンチェルトの華やかさを大切にしながら、豪快な音楽を仕掛けて来て... リットン+ベルゲン・フィルの演奏もまた、「北欧」の雄大さを素直にサウンドにして盛り上げる。そうして生まれる「北欧」の爽快!華麗にしてクール。
そうか?そうなのか?よくよく見渡せば、日本人は人知れず「北欧」が大好きだったりする。ずばり、HOKUO(ESSENCE OF SCANDINAVIA... )というパン屋があって、アンデルセン(お手本は、いつもデンマーク... )というパン屋もあって... その名前の元になったアンデルセン(デンマークが誇る童話作家... )の童話に、ムーミン(フィンランドのヤンソンが生み出した... )の絵本は、こどもたちには欠かせない。LEGO(デンマーク製ブロック... )もだ。それから、北欧デザインも忘れるわけには行かない... これが一気に一般化したのが、IKEA(スウェーデン発の家具... )であり、FLYING TIGER(デンマーク発の雑貨... )であり。様々に日本人を惹き付ける「北欧」。知らず知らずの内に、じわっと浸透している「北欧」の魅力って、何だろう?そして、普段、あまり意識することのない「北欧」という括りが発するイメージの多様さに、とても興味深いものを感じる。
そこで、音楽に目を向けて... 生誕150年のメモリアル、ニールセンとシベリウスを聴いて来た今月、北欧を代表する2人の作曲家の音楽と向き合ってみて、クラシックにおける「北欧」もまた興味深いなと。でもって、寒い冬に聴く「北欧」というのが、また味わい深いのか。そこで、ニールセン、シベリウスだけでない、「北欧」を聴くセレクション... 音楽で多彩な極北を旅する試み。
「北欧」というと、とにかく寒いイメージがある。北極圏に入る地域もあり、今頃は太陽が昇らない日々を送っている場所もあるはず... だからだろうか、「北欧」の音楽には、何とも言えない温もりを感じることがある。寒い雪の日、やさしげに揺れる暖炉の火を見つめるような、素朴さと暖かさ... 外に広がる厳寒があってこそ生まれる、「北欧」ならではの温度感か、そうした音楽に触れていると、ぽっと心が温まるような...
そんな、1枚... ノルウェーのバリトン、ヴァイサーが歌う、ノルウェーを代表する作曲家、グリーグの歌曲集。ドイツ・リートとそう遠くない音楽が展開されるも、そこはドイツとは違う、辺境の地、「北欧」。良い意味での中心を外れた、ヨーロッパの北の果てのローカル性が醸す素朴さに包まれて、「北欧」としての味わいが、じわっと広がる。で、そうした音楽を、ありのままで歌うヴァイサー!瑞々しくも、どこか不器用そうな、彼の表情にグっと来てしまう。いや、だからこそのナチュラルさが、「北欧」の魅力を何気なさの中にしっかりと浮かび上がらせていて、印象的!北の果ての朴訥さにこそ、よりヒューマニスティックな歌声を響かせて生まれる温もり... 聴き入ってしまう。
ロマン派にして国民楽派、極めて19世紀的なグリーグの音楽... ではあるのだけれど、ヨーロッパの中心とは違い、「北欧」なればこその周縁性が、ロマン主義が若かった頃の瑞々しさを保ち、そうした瑞々しさから繰り出される国民楽派としてのフォークロワなテイストは、けして泥臭くなることなく、軽やかに響いて... パーヴォの指揮、エストニア国立響の演奏によるグリーグの管弦楽作品集、"norwegian dances"は、瑞々しくも気の置けないグリーグならではの魅力をしっかりと引き出す。澄み切った極北の大気と、暖炉を囲む人々の団らんだろうか、両極にあるもの巧みに結び、「北欧」の美しさ、楽しさを活き活きと描き出す。
クラシックで「北欧」というと、合唱王国というイメージがある。エリク・エリクソンという、今や伝説となった合唱指揮者の存在や、そのエリクソンが育てたスウェーデン放送合唱団など、北欧には世界を魅了するコーラスが多くある。そんな、合唱王国、「北欧」を、丁寧に歌い綴った、ヒリアーが率いたエストニア・フィルハーモニック室内合唱団によるシリーズ、"BALTIC VOICES"。バルト海を核に、その沿海の合唱作品を様々に集め、「北欧」ばかりでない、海がつなぐ東西の文化の交わりまでを捉え、より広がりのある「北欧」を歌った好シリーズ。いや、我々は、「北欧」と安易に括ってしまうところがあるわけだけれど、当然ながら、それぞれの国や地域に個性があるわけで、そうした「北欧」の多彩さを教えてくれる、ヒリアー、エストニア・フィルハーモニック室内合唱団。期待を裏切らない「北欧」の透明感を堪能させてくれるvol.1、東方のミステリアスなトーンが滲んで魅力的なvol.2、ステレオタイプを打ち破る現代の闊達なサウンドを繰り出すvol.3と、一概にイメージでは語れない「北欧」のおもしろさに惹き込まれる。一方で、そうした多彩な音楽を器用に歌いこなすエストニア・フィルハーモニック室内合唱団のハイ・クウォリティ!そのすっきりとしたハーモニーに、「北欧」を強く感じずにはいられない。どんな作品を前にしても、徹底して磨き抜かれた美しい歌声が、コーラスの結晶となって、光り輝くよう。
さて、このあたりで、寒い「北欧」を聴いてみる。いや、生半可の寒さではないはず。我々には想像し得ない世界... そういう厳しさを音楽にすると... シムクスが弾く、ラトヴィアの現代の作曲家、ヴァスクスのピアノ作品集。現代にあって、難解な"ゲンダイオンガク"とは一線を画すヴァスクスの音楽... その独特なシンプルなスタイルは、かえって鮮やかなサウンドを紡ぎ出し、惹き込まれるのだけれど。ここで聴くピアノ作品のストイックさは、まさに極北の音楽。鋭く「北欧」の空気感を捉えるようなサウンドは、氷の世界を思わせて厳しくも美しく。また、シムクスの鋭敏なタッチが、そうした表情を際立たせ、清冽な「北欧」の姿に魅了される。
やっぱり、「北欧」の音楽には自然が欠かせない。厳しい環境があってこそ生まれる、圧倒的な情景... 他の地にはない極北の雄大な自然は、「北欧」の音楽に大きなインスピレーションを与えているはず... そして、それを強く印象付けてくれるのがシベリウスの交響曲!で、ここで取り上げるのは、レヴァインの指揮、ベルリン・フィルの演奏による、シベリウスの4番と5番交響曲。交響曲の抽象性と、「北欧」の人知を超えた自然の融合!清冽が生む鮮烈!この2つの交響曲から聴こえて来るサウンドというのは、「北欧」音楽の極北なのかも... また、オーケストラの極北、ベルリン・フィルによる水際立った演奏が、「北欧」を壮麗に鳴り響かせて圧倒して来る。
さて、最後は、厳寒のヴォリュームを緩めて、華麗なる19世紀、ヴィルトゥオーゾたちが活躍した時代へ... レーンのピアノ、リットン率いるベルゲン・フィルの演奏で、グリーグに続くノルウェーの作曲家たち、アルネスとシンディングのピアノ協奏曲。で、そのヴィルトゥオージティの華やかさは、グリーグに引けを取らない。でもって、雄大!ここが、「北欧」のコンチェルトの醍醐味だろうか。特に、アルネスのキャッチーさは、劇画的に極北の風景を描き出すようで、ダイナミック!レーンのピアノも、ヴィルトゥオーゾ・コンチェルトの華やかさを大切にしながら、豪快な音楽を仕掛けて来て... リットン+ベルゲン・フィルの演奏もまた、「北欧」の雄大さを素直にサウンドにして盛り上げる。そうして生まれる「北欧」の爽快!華麗にしてクール。
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