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みんなで歌う、ドイツ・バロックの温もりに満ちたクリスマス。 [before 2005]

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さあ、クリスマスが近付いて参りました。特に予定は無いけれど、テンション上げて行くよ!って、空元気っぽいんだけど。いや、そうでもしてないと、この年末を走り切れないような気がして... というより、師走のランナーズ・ハイ?みたいな、そんな感じもあるような... あれやって、これやって、と、追われてみて、生まれるハイ・テンション?それにしても、もう嫌になっちゃうくらい時間が過ぎて行くのが速い!こうなるだろうと覚悟して迎えた12月だったけれど、こうして、今、クリスマスを目前にし、やっぱりあたふたしている。でなきゃ、師走じゃないかァ。という、慌ただしさをひとまず忘れて、素朴で温かな、初期バロックのクリスマスを聴いてみようかなと...
1620年頃、ドイツのルター派の教会におけるクリスマスの朝のミサを再現する1枚、ポール・マクリーシュ率いる、ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズ、ロスキレ大聖堂少年合唱隊に、会衆まで参加しての、プレトリウスのクリスマス・ミサ(ARCHIV/439 931-2)を聴く。

ザクセン選帝侯のドレスデンや、バイエルン公のミュンヒェンのような豪奢さ、自由都市ハンブルクの賑わいには及ばないまでも、ドイツ中部、バロック文化の拠点のひとつとなったブラウンシュヴァイク・ヴォルフェンビュッテル候の宮廷。その楽長を務めた、ドイツ・バロックの黎明期を代表する作曲家、プレトリウス(1571-1621)。で、この楽長、プレトリウスによるクリスマスのミサを再現しようとする、マクリーシュらしい企画なのだけれど... プレトリウスのクリスマス・ミサに限定することなく、入堂(track.1)から退堂(track.23)まで、丁寧に典礼を追い、その過程で、ルター派のミサならではのルターの作曲によるコラールや、当時の民衆が歌った讃美歌、さらに、プレトリウスの同時代の作曲家、シャイト(1587-1653)のクレード(track.10)、シャイン(1586-1630)の5声のパドゥアーナ(track.13)が挿し挟まれ、単にミサ曲として聴く以上の盛りだくさんさが魅力。で、何より、ドイツ・バロックの教会のクリスマスって、こんな感じだったんだ... という雰囲気が伝わって来て。またそれが、何とも言えずほのぼのとしていて、その温もりに包まれてしまうと、年の瀬の慌ただしさなんて吹き飛んでしまう!
という雰囲気を創り出すのが、会衆の存在。つまり、クリスマスのミサに集った一般の信者たち。このアルバムでは、録音場所である、デンマーク、ロスキレ大聖堂に集った人々なのだけれど... プロではない人々の声も取り込んでしまうマクリーシュの大胆さには恐れ入る。が、だからこそ、1620年頃、ドイツのルター派の教会におけるクリスマスの朝のリアルに迫ることができるわけで... 聖歌隊が歌うだけではない、会衆も一緒になって唱和して生まれる、得も言えぬ充足感。何か、みんなで歌うことの根本的なすばらしさを再発見させられるのか、大聖堂にほわんと響く会衆の歌声の持つ温もりに、じんわりと感動してしまう。いや、この感覚こそクリスマス精神を表しているのかも... そして、このヒューマン・スケールな在り様が、ルター派を象徴しているのだなと... で、それを実現し得る、新しい音楽の興味深さたるや!音楽的素養、技術の無い会衆でも、無理無く歌うことのできるシンプルな音楽... ルネサンス・ポリフォニー(の超然とした佇まいは旧教的?)を脱した音楽の、やさしいメロディーで紡がれるコラール(は、新教を象徴し、新しい時代の音楽だったか... )の魅力は、ちょっと他には替え難い。
で、忘れてならないのが、このアルバムの主役、プレトリウスの音楽... 1620年頃というと、イタリアでもバロックへの模索が続いていた時代だけれど、プレトリウスはその新しい潮流に目敏いところを見せ、コンチェルタート様式、分割合唱など、イタリアの最新技術を用い、立体的な音楽を構築する。またそこに、生まれて間もないオペラからの影響も見受けられ、ミサをヴァラエティに富む音楽で飾り、聴く者を飽きさせない。それでいて、やがてバッハへとつながるだろう、ほのぼのとした中部ドイツのローカル性で包んで、ふわっと響かせて、何とも言えない気の置けない空気感を生み出すから、素敵。イタリアの最新技術を、音楽後進国であったドイツの素朴さに落とし込んで、自身のスタイルにしてしまうプレトリウスの器用さ、バランス感覚に感心させられる。
そんな、1620年頃、ドイツのルター派の教会におけるクリスマスの朝のミサを、こだわりを持って再現したマクリーシュ。その「こだわり」は、アカデミックな硬直した音楽を生み出すのではなく、400年前のクリスマス、人々が集った息衝く教会の表情をナチュラルに再現していて... ちょっと不器用だけれど、真っ直ぐな会衆のコーラスなど、いい具合にアバウトなトーンが味わいとなり、その等身大の在り様が、かえって感動的。一方で、ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズのコーラス部隊は、見事に雄弁な歌声を聴かせて圧倒的。でありながらも、会衆との距離を絶妙に計りながら、ほんわかとした表情も生み出し、聴き入ってしまう。そうした歌声を支えるガブリエリ・コンソート&プレイヤーズの器楽部隊は、楚々としていながら高いクウォリティを見せ... その確かなサウンドを繰って、実は精緻な音楽を生み出すマクリーシュの姿も印象的。そうして蘇る、遠いドイツのバロックのクリスマスの朝の大きな感動!聴き終えれば、心が温かくなる。

PRAETORIUS: CHRISTMETTE
GABRIELI CONSORT & PLAYERS/McCREESH


プレトリウス : クリスマス・ミサ

ポール・マクリーシュ/ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズ
ロスキレ大聖堂少年合唱隊
会衆によるコーラス

ARCHIV/439 931-2




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