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やがて切なさが溢れ出し... ゴーゴリを奏でて時代を映す。 [before 2005]

いやはや、本当に選挙なのですね。黒田さんがドンとギアを入れて(そのことについての賛否はともかく... )、多少、傷を負ってでも、これからアクセル踏み込んで、明るい未来(すばらしきかな、楽観主義!)へ突っ走るよ!というところで、はぁ?!何、この腰折れ感... あれだけの議席を獲得しておいて、どうして自信を持って政策を進められないかなァ。捻じれてもいないで、こうして政治を止める不甲斐無さ。増税で、ではなくて、増税延期で、信を問う?もう、笑うしかない。もちろん、低投票率を狙ってのことだろうけど... って、そういう状況で勝ちに行こうとは、何たる弱腰!ここに来て弱腰になるならば、最初から、ナントカミクスとか、やめとけって... 嗚呼、日本の政治には、やっぱり幻滅させられます。もはや、幻滅することは、日本国民の宿命なのかもしれません。さて、19世紀、ロシアにも、そうした空気はありまして、そういう中で生まれた文学を見つめてみようかなと...
ということで、ゴーゴリをフィーチャー!その文学作品から生まれた音楽作品、クリスティアン・アルミンクの指揮、ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ヤナーチェクのゴーゴリによる狂詩曲「タラス・ブーリバ」(ARTE NOVA/74321 67524 2)と、レフ・マルキスの指揮、マルメ交響楽団の演奏で、シュニトケのゴーゴリ組曲(BIS/BIS-CD-557)。文学から見つめた交響"詩"に続いての、読書の秋、文学を聴く試み... 今の日本の気分にも合うんじゃないかと、ゴーゴリを聴く。


ヤナーチェク、音楽に籠めた文学、タラス・ブーリバ...

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重苦しいリアルを前に、時にその重苦しさを「笑い」に変換して、飄々と物語を紡ぎ出すゴーゴリ(1809-52)。クラシックでゴーゴリと言えば、ショスタコーヴィチのオペラ『鼻』を思い出すのだけれど、あの奇妙奇天烈でいて、痛烈に社会を風刺する物語、その仄暗くもどこかカラっとしたトーンは、ゴーゴリの真骨頂かなと... そんなゴーゴリの世界を、ショスタコーヴィチに負けず、見事にサウンドにしたヤナーチェク。対ポーランド、ウクライナ人レジスタンス親子(つまり、コサック... )の壮絶な生き様を描いた『タラス・ブーリバ』を、タラス・ブーリバとその2人の息子のそれぞれの死に焦点を当て、3つの死を3楽章構成で聴かせる狂詩曲「タラス・ブーリバ」(track.1-3)。ヤナーチェクならではの独特なヴィヴィットさが印象的で、数々のすばらしいオペラを生み出したヤナーチェクだからこその、音楽によるストーリーテリングの上手さが光る!また、ラプソディーが似合う、ゴーゴリの世界... 重苦しさを笑い、笑うことで切なさがこみ上げる、何とも言えない読後感... 改めて、ゴーゴリを意識して狂詩曲「タラス・ブーリバ」を聴いてみると、その絶妙さに感服。より味わい深いものを感じ、一層、聴き入ってしまう。
という、ゴーゴリの後で、ドストエフスキーの『死者の家の記録』をオペラ化した『死者の家』の組曲(track.4-6)と、ヤナーチェクと同世代のチェコの詩人、ブルフリツキーの詩に基づく交響詩「ブラニーク山のバラード」(track.7)が取り上げられ、アルミンク、ヤナーチェク・フィルのこのアルバム、ヤナーチェクの音楽の文学からの影響をさらりとすくい上げて興味深い。だからだろうか?チェコ、モラヴィア地方が育んだ独特のヤナーチェク・サウンドばかりでない、そこに籠められた文学性をより印象的に感じ、いつもとは一味違う感覚を持つのかも... それと、ゴーゴリからヤナーチェクへ、ロシアからチェコに掛けてのスラヴ語圏に底流するテイストを見出すのか、その笑いと涙が綯い交ぜになって生まれる一筋縄では行かない味わいに、グっと惹き込まれる。
一方で、アルミンク、ヤナーチェク・フィルの演奏は、雰囲気に流されることの無い、ドライな演奏を展開。録音当時(1999)、まだ20代だった若きアルミンクの、若いがゆえの無駄の無さ、とでも言おうか、ヤナーチェクのひと癖ある音楽を明晰に捌き切り、ヤナーチェク・サウンドのカラフルさを、屈託無く繰り広げて、鮮やか!で、おもしろいのは、その鮮やかさに、ヤナーチェクが籠めた文学が、何気なく浮かび上がり... スコアにのみ焦点を合わせ、だからこそ、ヤナーチェクの創造の源、文学に辿り着く、おもしろさ!そこから繰り出される物語は、リアリズムを感じさせる鋭敏なもので、クール!

Leoš Janáček: Taras Bulba ・ Suite "Aus Einem Totenhaus" and others

ヤナーチェク : 狂詩曲 「タラス・ブーリバ」
ヤナーチェク : オペラ 『死者の家から』 組曲
ヤナーチェク : 交響詩 「ブラニーク山のバラード」

クリスティアン・アルミンク/ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団

ARTE NOVA/74321 67524 2




シュニトケ、共鳴する時代と音楽と文学、ゴーゴリ組曲...

BISCD557
1978年、モスクワのタガンカ劇場(演出家、ユーリ・リュビーモフが率いた、体制批判も恐れない挑戦的かつ実験的な劇場... )で上演されたゴーゴリの戯曲『検察官』のために劇音楽を書いたシュニトケ... タガンカ劇場の指揮者を務めていたゲンナジー・ロジェストヴェンスキーが、その劇音楽を選曲し、他にもシュニトケが、ゴーゴリの芝居のために書いた作品も拾い、コンサート・ピースとしてオーケストレーションしまとめたのがゴーゴリ組曲(track.1-8)。ということでいいのかな?ちょっと自信が無いのだけれど... いや、どちらにしろ、挑戦的です、シュニトケ!この鬼才ならではの奇天烈な多様式主義が炸裂し、様々な作品が大胆にコラージュされて... 例の如く、何が飛び出すのかわからない闇鍋的な音楽が繰り広げられるゴーゴリ組曲。序曲ではベートーヴェンの「運命」、続く「チチコフの幼少期」(track.2)では、ハイドンの「驚愕」が聴こえて来て、アハハハっ... いや、このスラップスティックさこそ、ゴーゴリのエッセンスを見事に捉えていて、また、ロジェストヴェンスキーによるオーケストレーションのキッチュさが最高に効いていて。ソヴィエトのチープさも抉り出し、笑うことで鋭く社会を捉えておもしろいのだけれど、やがて切なくなって来て... ロシア帝国とゴーゴリ、ソヴィエトとシュニトケ、共鳴するのかも。
さて、アルバムの後半は、「シュニトケ」という個性が確立される以前の作品... ボリショイ・バレエのプリンシパルだったウラジーミル・ワシーリエフのために、1971年に作曲されたバレエの音楽(振付のコンクール用... )、『迷宮』(track.9-13)。で、「シュニトケ」以前のサウンドの新鮮なこと!弦楽オーケストラをベースに、チューブラー・ベルやゴング、チェレスタなど、ピュアな響きで彩って、『迷宮』のタイトルそのままに、ミステリアスな音楽を紡ぎ出す。西欧の"ゲンダイオンガク"の最新モードに呼応しつつ、ペルトを思わせるようなシンプルさもあり、そのどこか模索的なあたりが、魅力的。目まぐるしく、時に騒々しくすらある前半から一転のミステリアス... これぞ「シュニトケ」と、「シュニトケ」以前の対比は興味深く、どちらも魅了されずにいられない。
というシュニトケを聴かせてくれる、マルキス、マルメ響。シュニトケとも親交のあったロシア出身のマエストロだからこその、一筋縄では行かないシュニトケ・ワールドをしっかりと鳴らし切り、奇天烈も臆することなく、戦後「前衛」も卒なく捉える、その器用さに感心させられ... そんなマエストロに応えるスウェーデンのオーケストラの、仄暗くも瑞々しいサウンドがとても印象的で、「シュニトケ」の奇天烈も、北欧の厳しい空気感で包んで、深い色合いも見せるのか... より心に響くよう...

Schnittke: Gogol Suite; Labyrinths ― MSO/Markiz

シュニトケ : ゴーゴリ組曲 〔ロジェストヴェンスキー編〕
シュニトケ : 『迷宮』

レフ・マルキス/マルメ交響楽団

BIS/BIS-CD-557




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