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詩を奏でる... フランスの交響詩のノワール... [before 2005]

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音楽で、様々な"秋"を巡っている今月... 芸術(美術)の秋はもちろんのこと、食欲スポーツと、音楽でどれほど捉えることができるのか微妙な範囲まで踏み込んでみて、秋の多様さに改めて感じ入っている今日この頃。で、やっぱり「読書の秋」にも触れないわけには行かないかなと... 読書、つまり文学... まさに、"秋"だァ。しかーし!クラシックと文学の関係性はただならず深く密接であって、踏み込めば、きっと、底なし沼。ギリシア悲劇に始まるオペラは、村上春樹(望月京作曲、『パン屋代大襲撃』... )までを原作にしているわけで、ドイツ・リートなんて、そりゃもう、"詩"そのもの... 劇音楽なんてのは、戯曲があってこそ... さて、どうしたものか。
ということで、より音楽に軸足を取って、交響"詩"に注目してみようかなと... ゲーテのバラードに想を得たデュカスの『魔法使いの弟子』、アンリ・カザリスの詩を引用したサン・サーンスの『死の舞踏』など、フランスの作曲家による交響詩を集めた1枚... ミシェル・プラッソンが率いた、トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団の、フランス名交響詩集(EMI/TOCE-9159)を聴く。

普段、何となく捉えていた「交響詩」、改めて見つめてみると、その文学との深いつながりに新鮮な思いがする。交響曲という極めて抽象的なスタイルに、物語を落とし込んだ、幻想交響曲(1830)の作曲家、ベルリオーズの掟破りが、やがて交響詩の呼び水となって、ユーゴーの詩を元にしたフランクの「人、山の上で聞きしこと」(1845-47)に始まり... その同じ詩で、リストも最初の交響詩を書き(1849)、その後、数々の交響詩を世に送り出すことに... 交響詩は、ロマン主義の時代、文学にインスパイアされたロマン主義の精神にも合致し、数々の名作を生み出したわけだが、今、その交響詩を聴くにあたって、どれほど文学を意識しているだろうか?正直なところ、多楽章の交響曲に、単一楽章の交響詩、くらいの認識しかないような... って、反省するところ多々あり... で、そうしたあたりに、今一度、文学への視点を取り戻す機会を与えてくれるのが、プラッソン、トゥールーズ・カピトール国立管のフランス名交響詩集。フランスで活躍した作曲家による交響詩、6作品を取り上げる。
交響"詩"の、その詩に注目し、6つの交響詩、それぞれに元となった詩を解説で丁寧に紹介する。作曲家たちが、何を読み、音楽にしたのかを知る貴重な機会を与えてくれる。そして、その詩を読みながら、交響"詩"を味わえば、また違った、いやより深まった印象を受け取ることができる。それは、始まりから顕著で... ゲーテの詩を読みながら聴く、1曲目、お馴染みのデュカスの「魔法使いの弟子」の新鮮さ!「魔法使いの弟子」というと、どうしてもミッキー(1940年のディズニー映画、『ファンタジア』から... )の印象が強くて、こども向けのイメージがしっかとりあるのだけれど、まず、その元となった詩がゲーテであったことを今さらながらに知り、驚き、それでいて、その詩をデュカスが実に活き活きと交響"詩"として描き出していたことに感心させられる。お馴染みな曲だからこそ、デュカスが作曲した当初に還って生まれる瑞々しい体験が、思い掛けなく新鮮!一方、ディズニーによるアニメ化も、見事にゲーテの詩を映像化していたことを知り(もちろん、ゲーテにお調子者のねずみは出て来ない... )、魔法使いの弟子、ミッキーのイメージも変わるのか... 改めて、『ファンタジア』を見直してみたくもなる。
で、「魔法使いの弟子」の後が、またおもしろい!普段、あまり聴くことのない作曲家の交響詩も取り上げられていて... おどろおどろしさがたまらない、ロマン主義ならではのゴシック感ムンムンのフランクの「呪われた狩人」(track.2)、ヴェルレーヌのダークな世界をズシりと音にするラッザーリの「夜の印象」(track.3)、戦死した婚約者に連れ去られる乙女の物語をワーグナーっぽく鳴らすデュパルクの「レノール」(track.4)、そして、サン・サーンスの名作、「死の舞踏」(track.5)、最後は、もうひとつデュパルクで、夜空に浮かぶ星々の静かなポエジーを夢見るように描き出す「星たちに」(track.6)。と、魅惑的な音楽が繰り広げられるのだけれど... どの作品もロマン主義ならではの仄暗さが印象的。その仄暗さには、ドイツ・ロマン主義の影響が漂い、ドイツを触媒に果たされた、19世紀、フランスにおける器楽作品の復興の様子も垣間見られ、なかなか興味深い。
そんな、フランスにおける交響詩を、じっくりと表情豊かに響かせる、プラッソン、トゥールーズ・カピトール国立管。パリからは遠い、南仏、トゥールーズのオーケストラの、良い意味での地方性というのか、フランスのオーケストラにしては、輝かない響きが、ここでは絶妙な風合を生み出し、ロマン主義の仄暗さを、より際立たせる。けしてユルい演奏ではないのだけれど、響きのどこかに澱が漂い、パリの明るさとは違うマッドな仕上がりが、ドイツ風の重厚さにマッチするのかもしれない。そうして醸される、何とも言えぬ味わい!改めて聴いてみると、プラッソン時代のトゥールーズ・カピトール国立管の独特なトーンに惹き込まれる。また、そういうトーンが交響詩の文学性を意識させるようでもあり、おもしろい!

POÈMES SYMPHONIQUES FRANÇAIS
PLASSON


デュカス : 交響詩 「魔法使いの弟子」
フランク : 交響詩 「呪われた狩人」
ラッザーリ : 交響詩 「夜の印象」
デュパルク : 交響詩 「レノール」
サン・サーンス : 交響詩 「死の舞踏」
デュパルク : 交響詩 「星たちに」

ミシェル・プラッソン/トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団

EMI/TOCE-9159




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