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パウル・クレーを音楽で描いて... ヴェレシュ... [before 2005]

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芸術の秋、美術館にでも行ってみますかァ。みたいなノリで、クラシックの中の美術を鑑賞する試み、第1弾。と、例の如く、思い付きで、ブチ上げてみるのだけれど、クラシックと美術を結び付ける作品は、意外と少ない?文学とクラシックならば、そりゃもう切っても切れない関係があるわけだけれど、一方の美術は... バロック、古典派、ロマン派、ざっと見渡して、思い付く作品と言ったら、ムソルグスキーの『展覧会の絵』くらいなもの。で、そこに留まってもいられないので、その他を探すわけだけれど... ウーン、これが、なかなか... しかし、探してみて見えて来るものも... 実は、時代が下れば下るほど、クラシックと美術が接近してゆく興味深さ!近代へと向かって、美術表現がより幅広いものとなれば、音楽表現もまたより幅広いものとなり、そうした幅の広がりが、両者を近付ける可能性を持たせたのか... ということで、近代絵画にインスパイアされた近代音楽...
ちょっとユーモラスで不思議な世界を描き出したパウル・クレーを音楽で聴いてしまう?アンドラーシュ・シフとデネス・ヴァロヨンのピアノ、ハインツ・ホリガーの指揮、ブダペスト祝祭管弦楽団の演奏で、ヴェレシュのパウル・クレーへのオマージュ(TELDEC/0630-19992-2)を聴く。

スイスの出身で、ドイツの象徴主義の巨匠、フランツ・フォン・シュトゥックの下で絵画を学び、ドイツ表現主義のグループ、"青騎士"(シェーンベルクにインスパイアされて抽象画の世界を切り拓いたカンディンスキーらが中心となって組織された、芸術家集団... )に参加、やがてバウハウス(アルマ・マーラーの恋人、グロピウスが創設した20世紀、モダニズムの泉とも言える、建築、デザインの学校... )の教壇にも立ち、独特な世界を築いたクレー(1879-1940)。実は音楽教師の家に生まれ、早くからヴァイオリンの才能も発揮したマルチな異才... そんな作品には、音楽が大きな影響を与えている。という、クレーの絵画を7つ選び、2台のピアノによるコンチェルトに仕立てた、ハンガリーの作曲家、ヴェレシュによるパウル・クレーへのオマージュ(track.1-7)...
抽象的でありながらも、モダニズムの鋭利な革新性とは距離を取るような、ほのぼのとした、時に飄々とした、クレーの不思議な風合を、擬古典主義的なトーンで絶妙に鳴らして、何とも言えず瑞々しい音楽が繰り広げるヴェレシュ。「いにしえの響き」(クレー作品では一番好きかも... )による"old sound"(track.3)には、ピアノによるバッハを思わせる装飾が浮かび、弦楽オーケストラがそれをアルカイックな雰囲気で包み、クレーの静謐な画面を音で見せてくれる。かと思えば、ジャケットに用いられている「石のコレクション」による"stone collection"(track.5)では、リズミカルに、軽やかに、ころころと石が転げ出すような楽しさがあって、小気味良く... 最後の「青い小悪魔」による"little blue devil"(track.7)には、小悪魔のいたずらを思わせる軽妙でユーモラスな表情がなんともキャッチー!そんな7つの絵画を聴いていると、まるで絵本を捲るようなメルヘンが広がり... 弦楽オーケストラの仄暗さの中に、2台のピアノが輝きを散りばめて、まさにクレーの独特な世界!魅了されてしまう。
さて、パウル・クレーへのオマージュばかりでないこのアルバム、ヴェレシュによる興味深いピアノ作品が続く... まず、2台のピアノ、弦楽とパーカッションのための協奏曲(track.8-10)。どことなしに、同じハンガリーの作曲家、バルトークによる弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽に似た雰囲気があり、モダニスティックな響きの中にハンガリーの土の臭いが漂うようで、印象的。ハンガリーの民俗性というのは、よりモダニズムとの親和性があるのか?エスニックさをモダニズムで磨いて生まれる独特なスタイリッシュは、大いに魅了される。そして、ピアノ・ソロによる6つのチャールダーシュ(track.11-16)。これがまたおもしろい!やはりバルトークと同じように、民俗音楽の世界でも足跡を残したヴェレシュらしい、ハンガリーのフォークダンスである「チャールダーシュ」を、そのまま採譜したような、無垢の響きというのか... 素朴なメロディーを、そのままピアノで捉えて生まれる、あられもないようなシンプルさ!そのシンプルさに、また現代的な要素も聴こえて来るようで、不思議。
そんなヴェレシュ作品を取り上げたのが、ハンガリーを代表するヴィルトゥオーゾのひとり、シフ。母国の作曲家への思いがひしひしと伝わる、中身の詰まったその演奏は、自信に満ち、2台のピアノによる2つの作品では、ヴァーリョンを伴って、粒立ちの良いタッチから、鮮やかに、表情豊かに、ヴェレシュの音楽を鳴らし、ピアノ・ソロによる6つのチャールダーシュでは、シンプルな中にも雄弁さを籠めて、また一味違うヴェレシュのおもしろさを聴かせる。そんなシフを絶妙にサポートする、ホリガー、ブダペスト祝祭管!ホリガーならではの鋭利な感性と、シフに負けずヴェレシュへの共感を音にするブタペスト祝祭管が、ヴェレシュのスタイリッシュをジューシーに繰り広げていて、聴き入ってしまう。そうして、再認識させられるヴェレシュの音楽... まったくバルトークに引けを取らず、いやよりキラキラと輝いていて、ラヴリー!

Veress: Hommage à Paul Klee
Schiff ・ Budapest Festival Orchestra ・ Holliger

ヴェレシュ : パウル・クレーへのオマージュ 〔2台のピアノと弦楽オーケストラのための幻想曲〕 **
ヴェレシュ : 2台のピアノ、弦楽とパーカッションのための協奏曲 **
ヴェレシュ : 6つのチャールダーシュ 〔独奏ピアノのための〕

アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
デネシュ・ヴァーリョン(ピアノ) *
ハインツ・ホリガー/ブダペスト祝祭管弦楽団 *

TELDEC/0630-19992-2




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