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新旧、織り交ぜて... ロッティ、ヴェネツィア流、花やかなレクイエム。 [before 2005]

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9月も終わりです。で、残暑に苦しめられることなく、穏やかに秋が深まる方向へ... ふと見上げた街路樹の葉が、ちらちらと色付いていて、そんなにも気温が下がっているのかと、少し驚いてみたり。という9月最後の週末、飛び込んで来た御嶽山噴火のニュース。一足早い紅葉の美しい風景は、一転、噴石が降る灰色の世界に... 自然の力の大きさを、改めて思い知らされる。そして、下山、叶わなかった方々に、心からお悔やみを...
さて、9月後半は「スコットランド」に注目したので、次はカタルーニャ!とも、一瞬、過ったのですが、再び、北イタリアへ、バロック期のヴェネツィアへと戻ります。トーマス・ヘンゲルブロック率いる、バルタザール・ノイマン合唱団とアンサンブルによる、かのバッハもリスペクトした、ヴェネツィア楽派の巨匠、ロッティのレクイエム(deutsche harmonia mundi/05472 77507 2)を聴く。

ルネサンスを様々に聴いて、ルネサンスからバロックへと移ろう過程を見つめて、17世紀のヴェネツィアの音楽を辿ってから聴く、18世紀に入ってのロッティ(1667-1740)のレクイエムには、そうした音楽史の歩みが浮かび上がるようで、とても興味深い。さらには、バロックから古典主義への橋渡しとしてのロッティの音楽でもあって... 音楽史を分かり易く咀嚼するために、「ルネサンス」、「バロック」、「古典主義」と区切る癖がすっかり染み着いているわけだけれど、音楽史というのは滔々と流れており、実際にはなかなか区切ることが難しい。で、そういうことを改めて感じさせる、ロッティのレクイエム。ルネサンス以来の対位法に、コーリ・スペッツァーティ(分割合唱)を思わせる対比をちらりと覗かせつつ、朗らかに繰り出されるキャッチーなメロディーは、古典主義の先取りに感じられて、過去と未来がカレイド・スコープのようにめくるめく展開される不思議な音楽!
盛期バロック、オペラというモードの最先端にあった音楽の影響を受けつつ、旧来からの形に壮麗さを見出していた教会音楽の柔軟な在り様は、音楽史の流れを攪乱する?バロック期の教会は、それこそグレゴリオ聖歌から、教会コンチェルト(器楽伴奏を伴った声楽による教会音楽、まるでオペラのようなスタイル... )など、新旧の音楽の集積地のような性格を持っている。また、そうした蓄積から新たな音楽も生み出していて... 教会ソナタをはじめ、器楽曲の揺籃の場所でもあったことを忘れるわけにはいかない。教会というと、現代からすれば、どこか説教臭い印象を受けてしまうのだけれど、当時はオペラハウスに負けない音楽空間(キリスト教は、常に音楽と深く結び付いている!)であって、場合によっては、オペラハウスよりもヴァラエティに富む音楽が繰り広げられていたとも言える。そういう教会音楽の在り様をギュっと濃縮したのが、ロッティのレクイエムだろうか。
始まりのレクイエム・エテルナム、通奏低音に支えられ、やわらかなコーラスが織り成す豊かなハーモニーは、まるで、夜が明けてゆくようで... そこから、パっと明るくなってのキリエ・エレイソン(track.2)、明朗でキャッチーな展開、時折、ポップにすら感じられるサウンドには、若きモーツァルトの教会音楽すら思わせるところがあり、バロックの只中にありながら、「バロック」というセンスよりずっと先を思わせるロッティのセンスに驚かされる。かと思うと、その後半はバッハばりの対位法を繰り広げ、神々しさも見せるから凄い。続くディエス・イレ(track.3)は、オペラティックなブラスによる慟哭で始まり、やがてオーケストラによるフーガが緊張を高め、その先に力強くコーラスが歌い出すドラマティックさ!ソプラノの独唱によるモルス・ストゥペビト(track.6)では、完全にオペラのアリアを思わせ、それも得も言えぬ流麗さを聴かせる美しいアリアで... いや、新旧、織り交ぜての聴きどころ満載なレクイエム... それでいて、ヴェネツィアならではの花やかさに彩られ、死者を送るも、ふんわりとやわらかな印象をもたらすのがおもしろい。いや、この穏やかさこそ、よりじんわりと胸に迫るのかも。
というレクイエムを掘り起こした(世界初録音!)、ロッティのスペシャリスト、ヘンゲルブロック。ヘンゲルブロックならではの、クリアかつ活気に溢れる音楽作りが、ロッティのカラフルさをより引き立てるのか。そんなヘンゲルブロックに応える、バルタザール・ノイマン合唱団のすばらしいコーラス!ソロをも担う、ひとりひとりの高い音楽性と、表情豊かに歌い生まれる躍動感には、グイグイ惹き付けられる。一方で、オルガン伴奏のみで歌うミゼレーレ(track.25)では、彼らの素直な歌声が際立ち、ドイツの室内合唱ならではの精緻さも見せ、改めて魅了されてしまう。そんな歌声を、また表情豊かにサポートするアンサンブルもいい味を醸していて... ピリオドならではの朴訥としたサウンドから、どこか大見得を切るようなコントラスト(バロックならでは!)が付けられて、ヴェネツィアの花やかさを絶妙に繰り広げる。

ANTONIO LOTTI ・ REQUIEM ・ MISERERE ・ CREDO
BALTHASAR-NEUMANN ENSEMBLE ・ T. HENGELBROCK

ロッティ : レクイエム ヘ短調
ロッティ : ミゼレーレ ニ短調
ロッティ : クレド ト長調

トーマス・ヘンゲルブロック/バルタザール・ノイマン合唱団、同アンサンブル

deutsche harmonia mundi/05472 77507 2




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