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ブルゴーニュ楽派から、フランドル楽派へ、 [before 2005]

さて、再び15世紀へと目を向けまして、ルネサンス!
15世紀、フランスの多声音楽の伝統を受け継いだブルゴーニュ楽派が、やがてフランドル楽派に進化して、フランドルのスタイルが、ルネサンス期におけるヨーロッパ・スタンダードとなり、16世紀、ルネサンス・ポリフォニーの全盛期を迎える。といった感じで、漠然と捉えていたルネサンス音楽の流れ... が、よくよく見つめれば、そう安易なものでもなく... というより、よくよく見つめると、かえってよくわからないことが増えてしまうような... 何を以ってしてブルゴーニュ楽派なのか?フランドル楽派なのか?まず、そのあたりが疑問だったり。
ということで、パウル・ファン・ネーヴェル率いる、ウエルガス・アンサンブルによる、ブルゴーニュ楽派、デュファイのイソリズム・モテット全集、"O gemma lux"(harmonia mundi FRANCE/HMC 901700)と、ピーター・フィリップス率いる、タリス・スコラーズによる、フランドル楽派、オケゲムのミサ・ド・プリュザン・プリュ、ミサ・オ・トラヴァイユ・シュイ(Gimell/CDGIM 035)を聴いてみる。


ブルゴーニュ公国人、デュファイの不思議なやわらかさで夢見心地に...

HMC901700.jpg
ブルゴーニュ楽派... その名の通り、ブルゴーニュ公の宮廷のシャペル(聖歌隊)を中心に発展した楽派で、百年戦争の後半戦、フランス王家と袂を分かったヴァロワ・ブルゴーニュ家が、イングランドに接近した頃、デュファイ(ca.1400-1474)と並ぶ巨匠、バンショワ(ca.1400-1460)が、そのシャペルで活躍し、北フランスを占領下に置いていたイングランドの音楽、特にダンスタブル(ca.1390-1453、占領政府の摂政となったベッドフォード公に従い、フランスに滞在した... )に影響を受け、フランス伝統の多声音楽に、イングランド風のハーモニー(三和音)を持ち込み、ルネサンス・ポリフォニーの世界を切り拓く。のだけれど、改めてブルゴーニュ楽派を捉え直し、ここで聴くデュファイという存在を見つめると、デュファイの音楽には一味違うものを感じる。
イソリズム・モテットの数々から漂う、何とも言えない不思議さ!何か、宙に浮いているような不思議な感覚を味わうサウンド。いや、この浮遊感こそ、ルネサンスの到来を感じさせるものなのだけれど、まだ中世の余韻が残るのか、ルネサンス的な洗練と、中世の爛熟期の音楽の時代を超越するような不思議さがナチュラルに結ばれて、また独自の音楽を展開するような... ブルゴーニュ公国に生まれ、その後半生はブルゴーニュ公の影響下に置かれていたカンブレーで活動し、その地で生涯を閉じたデュファイではあるけれど、その音楽は、前半生を過ごしたイタリアの影響が大きい。デュファイがイタリアに滞在した頃のイタリアの音楽、例えばチコーニアや、パオロ・ダ・フィレンツェの独特なトーンを聴くと、デュファイの不思議さに合点が行く。イングランドの影響を受けたバンショワに対して、イタリアの影響を受けたデュファイ... フランスという中世音楽における核が力を失って、ヨーロッパの音楽が地方性を伴って揺れ動き、ブルゴーニュ公国というタンブラーにルネサンスというカクテルを生み出す。絶妙に揺らして生まれたそのサウンドは、それ以前の音楽にはないやわらかさで夢見心地に。
という、夢の中を彷徨うようなデュファイを聴かせてくれる、ファン・ネーヴェル+ウエルガス・アンサンブル。コーラスのやわらかで澄んだハーモニーは、まるで霧のようで。そのミスティな雰囲気が、聴く者に何とも言えない潤いをもたらし。その後ろでは、サックバット(トロンボーンの古楽器)の素朴な響きが広がり、夢現なトーンはいよいよ濃くなって、心地良い不思議さに包まれる!単に美しいだけではない、もうひとつ何かを盛り込んで来るようなその歌声、演奏に、大いに魅了されてしまう。

Dufay ・ O gemma lux ・ Huelgas Ensemble

デュファイ : モテット 「喜べ、ビザンツ帝国の妃」
デュファイ : モテット 「おお、聖セバスティアヌスよ」
デュファイ : モテット 「おお輝きわたる宝石」
デュファイ : モテット 「誉れある使徒に」
デュファイ : モテット 「偉大なるヤコブをわれら正しくたたえん」
デュファイ : モテット 「戦う教会」
デュファイ : モテット 「バルサムと上品なる蝋が」
デュファイ : モテット 「人には平和が最高のもの」
デュファイ : モテット 「バラの花が咲く頃」
デュファイ : モテット 「めでたし、トスカナ人の花」
デュファイ : モテット 「度量ある人々の称賛を」
デュファイ : モテット 「神の教会の輝ける星」
デュファイ : モテット 「キリストと共にあるヨハネが」

パウル・ファン・ネーヴェル/ウエルガス・アンサンブル

harmonia mundi FRANCE/HMC 901700




フランドル楽派、オケゲムの安定感から浮かび上がるより先の時代...

CDGIM035
フランドル楽派の始まりを飾るオケゲム(ca.1410-1497)は、ブルゴーニュ楽派の始まりを担ったバンショワ(ca.1400-1460)、デュファイ(ca.1400-1474)らの弟世代となる。弟世代?!今、改めて、ルネサンス期の音楽の流れを見つめ直すと、ブルゴーニュ楽派がフランドル楽派に進化して... なんて漠然と捉えていた安易さを思い知らされる。いや、間違いなくフランドル楽派はブルゴーニュ楽派の進化系ではあるのだけれど、両者は並立していたとも言えるわけで... ならば、ブルゴーニュ楽派とフランドル楽派の違いは何だったのか?ブルゴーニュ楽派が中世以来の3声の多声音楽であったのに対して、フランドル楽派はひとつ声部を増やし4声でポリフォニーを紡ぎ出し... もちろん、ルネサンス・ポリフォニーは4声に留まらず、やがて40声の作品まで生み出し、ウルトラ・ポリフォニーな時代へと至るわけだが。この、3声を越えるか否かが、分水嶺となったか?
さて、オケゲムの2つのミサを聴くのだけれど... いや、3声から4声となった安定感!デュファイを聴いた後に聴くオケゲムは、地に足の着いた感覚があり、そこにたまらなく安心感を覚えてしまうからおもしろい。で、これこそが音楽の進化であって、この一歩一歩の歩みの先に我々の音楽があるのかと思うと、その安定感に感慨も。で、その安定感があってこそ生まれるよりメロディアスなあたり... オケゲムのミサは、ベースに当時の世俗曲を用い、ある種のアレンジとも言えるものなのだけれど。それぞれのミサの前に、そのオリジナルも取り上げられるこのアルバム。オリジナルのキッャチーなあたりを、教会音楽に取り込んで、流麗さ生み出すオケゲムのスタイルがより際立ち、興味深い。で、この流麗さに、中世が過去となったことが告げられる。またそれは、ウルトラ・ポリフォニーの時代が過ぎ去った後、モノディが発明された後の、バロック、さらには古典主義のミサから聴こえて来そうなトーンで... オケゲムの音楽には、より先の時代を予見させるものがあるのか?ポリフォニーならがらホモフォニーを思わせる、全体の響きに埋もれない、美しいメロディーの流れが印象的に浮かび上がる。
そこに、フィリップス+タリス・スコラーズ!彼らならではの、明快なハーモニーが生み出す、すっきりとしたサウンド。それぞれの声部がクリアに歌われ、オケゲムによる美しい旋律線が映え、すっと心に響いて来る。どうしてもルネサンス・ポリフォニーというのは、美しいサウンドで煙に巻かれてしまうような印象があるのだけれど、タリス・スコラーズの明晰さは、構造から美しさを引き出す。

TALLIS SCHOLARS OCKEGHEM: DE PLUS EN PLUS AU TRAVAIL SUIS

バンショワ : ド・プリュザン・プリュ
オケゲム : ミサ・ド・プリュザン・プリュ
オケゲム、あるいは、バルバンガン : オ・トラヴァイユ・シュイ
オケゲム : ミサ・オ・トラヴァイユ・シュイ

ピーター・フィリップス/タリス・スコラーズ

Gimell/CDGIM 035

災厄の14世紀、中世末のデカダンスが、やがてルネサンスの洗練を生み...
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ルネサンスの到来!15世紀、中世末の多様さが、フランドルで集約されて...
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宗教戦争の16世紀、逃避的なヘブンリーさと、新しい時代の兆し。
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