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ネクトゥーが洗い出した、ニュー・エイジなフォーレのレクイエム。 [before 2005]

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近頃... いや、今年に入って... というより、10年代となってからか... 立て続けに大きな死を目の当たりにさせられて、何かこう、虚無感に襲われます。メディアの発達により、世界中で起きている悲劇に、よりアクセスし易くなっているからこそとも言えるのだけれど... それにしても、ここに来て次々に起こる悲劇は、一体、何なのだろう?災厄の14世紀と重ねるならば、新しい時代を生み出す生みの苦しみ?夜明け前の闇ほど暗いものはないというけれど、まさに今がそれなのか?しかし、犠牲になるのはいつも市井の人々であって...
そういう遣る瀬ない今日この頃を振り返り、レクイエムを聴いてみようかなとふと思い立ち。フィリップ・ヘレヴェッヘ率いる、ピリオド・オーケストラ、シャンゼリゼ管弦楽団、ラ・シャペル・ロワイアル、コレギウム・ヴォカーレのコーラスで、フォーレのレクイエム、1998年に出版されたネクトゥーの校訂による第3稿(harmonia mundi FRANCE/HMC 901771)を聴く。

フォーレのレクイエムには3つもの版があるわけだが、いわゆる「フォーレのレクイエム」というイメージは、1900年、リールで初演された第3稿のフル・オーケストラ版によるもの。なのだけれど、この第3稿には複数のスコアが存在していて、ややこしい状況があり... で、フォーレ研究家、ネクトゥーによる校訂が成されての最新のスコアで録音されたのが、2002年にリリースされたこのアルバムだった。そして、それを初めて耳にした時の新鮮さは、フォーレをピリオド・オーケストラで聴ける!ということも相俟って、本当にワクワクさせられたのだけれど... それから10年強が過ぎ、改めてじっくりと聴けば、より深い世界を体験するようで、惹き込まれる。ネクトゥーによれば、第3稿のオーケストレーションは、フォーレの弟子、ジャン・ロジェ・デュカス(「魔法使いの弟子」のデュカスと同時代を生きた、もうひとりのデュカス... )によるものではなかったか... とのことなのだけれど、ネクトゥーによる校訂を経た版で改めて聴けば、何となくそんな印象を強くする。何か、誰のものでもない音楽というものを意識させられるようで... もちろん、流れて来る美しいメロディーの数々は、フォーレ以外の何者でもないのだけれど、響いて来るサウンドというのは、独特のユニヴァーサルさを感じ、これまで以上に魅了されてしまう。
フォーレの音楽というのは、フランスならではのメローさが印象的なのだけれど、サウンドそのものはどこかチープなものを感じることもある。かと思うと、ワーグナーからの強い影響の下、印象主義にも接近し、色彩的かつロマンティックな濃密な音楽を繰り広げることもあり、なかなか一筋縄では行かない。が、ここで聴く音楽は、そういう次元を達観するようなサウンドが印象的で、いい具合にフォーレの癖が落ちていて、かえって瑞々しく、かつ深く、これまでにないスケール感を見出せてしまうのか。またそれが、1900年代を再現するピリオド・オーケストラの響きと共鳴し、フォーレのレクイエムにあるヘヴンリーさをより際立たせる。そこに、ラ・シャペル・ロワイアル、コレギウム・ヴォカーレによる清らかにして朗らかな美しいコーラス!古楽、ピリオドで培った透明感を存分に発揮し、音楽を内側から輝かせるようなハーモニーが何とも言えず心地良く。さらには、ゾマーの伸びやかで端正なソプラノ、ゲンツの明朗なバリトンが加わり、フォーレによるメロディーは、素直な優しさで充たされる。すると、クラシックというジャンルにある、ある種の埃っぽさが綺麗に拭い去られ、フォーレのフランス的な音楽性の中に、ニュー・エイジ的なヴイヴィットさが浮かび上がり、聴き知ったはずの人気作が、新たな表情を見せてくれるよう。
さて、フォーレのレクイエム(track.1-7)の後には、フランクの交響曲(track.8-10)が取り上げられるのだけれど、こちらもなかなか興味深い。フォーレのレクイエム、第1稿の初演(1888)の翌年、1889年にパリで初演されたこの交響曲、「交響曲」という保守的なスタイルもあってか、フォーレのレクイエムの後だと、よりクラシックに聴こえるのがおもしろい。で、ニュー・エイジ的なサウンドの後に、グっとクラシカルなサウンドというのも、絶妙な切り返しになっていて、シャンゼリゼ管の実直さがフォーレとはまた違うベクトルで活き、味わいのある渋い世界が展開される。そこには、フランクならではの循環形式(各楽章で、共通の主題を用い、より有機的な音楽を繰り広げる... )がしっかりと効いていて、またそれを、古楽の巨匠、ヘレヴェッヘが捌けば、ルネサンス・ポリフォニーを思い起こさせるようなところもあって、独特の風合いを見せる(フランドル楽派を生んだ、ベルギー出身のフランクだけに、そうしたDNAを受け継いでいるのやも... )。しかし、終楽章(track.10)へと至る頃には、フランス流の華麗さが湧き上がり、渋さが鮮やかに洒脱さへと変化し、これまた循環形式のおもしろさが際立って... フォーレのみならず、フランクもまた大いに魅了されてしまう。

Fauré ・ Requiem ・ Herreweghe

フォーレ : レクイエム Op.48 〔第3稿、ネクトゥーによる校訂譜〕 ***
フランク : 交響曲 ニ短調

ヨハネッテ・ゾマー(ソプラノ) *
シュテファン・ゲンツ(バリトン) *
ラ・シャペル・ロワイアル、コレギウム・ヴォカーレ *
フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管弦楽団

harmonia mundi FRANCE/HMC 901771




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