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憂いなし!インマゼールの踊るヨハン・シュトラウス2世。 [before 2005]

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マレーシア航空の旅客機、撃墜、ショックでした。いや、ショックというより何だろう... 遣り切れなさ?マレーシア航空のみならず、イスラエルのガザ地区への侵攻にしても、いや、世界中を見渡して、日本国内にも目を向ければ、みんな、何がしたいわけ?何を望んでいるの?と、虚しくなるばかり。やりたいようにやって、言いたいことを言って、ぶつかり合うだけで、何ひとつ成就されない不幸。もっと、自らの足下をつぶさに見つめ、一歩一歩、より良い方向へと確実に歩む努力がなされてもいいんじゃないかと、つくづく感じるのだけれど、そういう感覚がどうしようもなく欠如している21世紀。そんな「21世紀」とまともに向き合っていると、鬱々として来る。ので、何か、憂いの無い音楽を聴いてみようかなと... 本当は、災厄の14世紀の続きを聴くつもりだったけれど、すでに21世紀の災厄で胸がいっぱいなので、お休みしまして、ハッピーなワルツに逃避してしまう。
ジョス・ファン・インマゼール率いるアニマ・エテルナによる、ヨハン・シュトラウス2世の作品集(Zig-Zag Territoires/ZZT 020601)を聴く。

始まりのトリッチ・トラッチ・ポルカの屈託無く楽しい表情!キビキビとリズムが爆ぜて、時にスラップスティックにも感じられるこのポルカを、インマゼール+アニマ・エテルナは、ちょっとユルく演奏します。そうすることで、何かズッコケてしまいそうな、絶妙なユーモラスさを引き出すのか... ウィンナー・ワルツというと、現在では立派にコンサート・ピースであって、クラシックのコンサートならではの緊張感の中、しっかりと静聴するのが当然となっているわけだけれど、シュトラウス家の面々が活躍していた頃には、粉うことなきダンス・ナンバー... みんなを楽しく踊らせるための音楽... インマゼールのピリオドとしての視点は、まさに、ウィンナー・ワルツが次々に生み出されていた頃の、生まれたての様子を捉えるもの。コンサート・ピースとして洗練されてしまう以前のウィンナー・ワルツの響きを鮮やかに蘇らせる。で、トリッチ・トラッチ・ポルカ... ちょっとユルく、誰かの結婚式だろうか?どこかのダンス・ホールなのだろうか?ダンスを楽しむ人々の何気ない表情を、下手に飾ることなく、シンプルに描き出す。そうして漂い出す、ハッピー感!嗚呼、ウィンナー・ワルツって、何てポジティヴなんだろう!
続く、『こうもり』序曲(track.2)では、オペレッタならではの他愛無さを卒なく繰り広げて、その他愛無さの中にこそ豊かな表情を浮かび上がらせる妙。そして、「春の声」(track.8)、「美しき青きドナウ」(track.10)といった、ワルツの定番中の定番では、素っ気ないほどに訥々とリズムを刻んで... けれど、そうして生まれる飄々とした風情にこそ、いい味わいが滲み出ていて、思い掛けなく聴き慣れたワルツが美味しく感じる。どうしても、クラシックは堅苦しいし、時としてメッセージ性なども背負わされて、必要以上にいろいろなことを考えさせられてしまうわけだけれど、そういうものを取っ払ってしまうのがインマゼール流。取っ払ってこそ本質に迫り得るのがインマゼール・マジック。で、ウィンナー・ワルツの本質とは何だったか?ずばり、踊ること!たとえ踊りが下手であっても、楽しむこと!と、改めて教えてくれる、インマゼール+アニマ・エテルナのウィンナー・ワルツ。
で、その神髄とも言えるのが、よりアップ・テンポで、よりシンプルな2拍子のリズムを刻むポルカ!「突進」(track.5)の、その名の通りの猪突猛進なユーモラスさ... 一転、新ピツィカート・ポルカ(track.6)の、ひそひそ話しが止まらなくなるようなユーモラスさ... そして、アルバムの最後を締める、「ハンガリー万歳」(track.12)から、狂乱のポルカ(track.13)への、一気呵成の流れを作る胸空く展開!ノリよく、ダンサブルなあたりが、とにかく最高!頭で考えるのではなく、身体的に楽しい... というのは、まさにダンス・ミュージックの真骨頂。きっと、演奏している方も楽しかったはず... そんな印象も受ける演奏であって、楽しさと素直に向き合う爽快さが、聴き慣れたはずのヨハン・シュトラウス2世の音楽に、何とも言えない新鮮な体験を残す。
いつものウィンナー・ワルツならば、ウィーン風の3拍子で、雰囲気たっぷりに、聴く者を夢心地にするところだろうけれど、そうはして来ないインマゼール+アニマ・エテルナ... ウィンナー・ワルツのステレオ・タイプを巧みに避けて、お馴染みのナンバーから、これまで忘れていた「楽しさ」を抽出することに集中するような演奏を繰り広げる。で、彼らの演奏はこんなにも楽しいものだった?と、ちょっと耳を疑うほどで... エジプト行進曲(track.11)での、オーケストラ・メンバーによるコーラスなどは、その最たるもの!エキゾティックなメロディーを、お通夜ですか?というしんみりモードで歌い上げて、そのアンバランスがまるでギャグ... なんてのもありつつ、素のヨハン・シュトラウス2世の楽しさを前面に、魅了して来る。

JOHANN STRAUSS ANIMA ETERNA JOS VAN IMMERSEEL

ヨハン・シュトラウス2世 : トリッチ・トラッチ・ポルカ RV 214
ヨハン・シュトラウス2世 : オペレッタ 『こうもり』 序曲 RV 503­1
ヨハン・シュトラウス2世 : オペレッタ 『こうもり』 から チャールダーシュ RV 503­2
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「北海の絵」 RV 390
ヨハン・シュトラウス2世 : ポルカ・シュネル 「突進」 RV 348
ヨハン・シュトラウス2世 : 新ピッツィカート・ポルカ RV 449
ヨハン・シュトラウス2世 : 音楽の冗談 「常動曲(無窮動)」 RV 257-2
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「春の声」 RV 410
ヨハン・シュトラウス2世 : オペレッタ 『ジプシー男爵』 序曲 RV 511­1
ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ 「美しく青きドナウ」 RV 314
ヨハン・シュトラウス2世 : エジプト行進曲 RV 335
ヨハン・シュトラウス2世 : ポルカ 「ハンガリー万歳」RV 332
ヨハン・シュトラウス2世 : 狂乱のポルカ RV 260

ジョス・ファン・インマゼール/アニマ・エテルナ

Zig-Zag Territoires/ZZT 020601




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