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メンデルスゾーン少年が見つめた、過去と現在... [before 2005]

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エンターテインに溢れるヴィルトゥオーゾたちによる音楽の一方で、若々しいロマン主義の音楽がのびのびと成長を遂げた19世紀前半。そこには独特のシャカリキ感があって、何だか微笑ましい。そして、このシャカリキ感というのがとても興味深く、すまし顔のクラシックに在って、また魅力的に映る。どこか向こう見ずで、ハラハラさせられもするのだけれど、老成されてはいない瑞々しさ、衝動的ではあってもより素の表情を見せるからこその輝きに、アカデミズムでは割り切れない、はっとさせられるものを感じる。西ローマ帝国の消失後、長い時間を掛けて育まれ、大成された「ヨーロッパ」が、フランス革命、ナポレオン戦争を経て、新たに生まれ直そうとする姿は、ある意味、思春期?この悩ましい時代が生み出した文化、芸術というのは、独特の魅力があるなと...
さて、ロマン主義の青春の頃をいろいろ聴いて来たのだけれど、ここで、さらに若かったメンデルスゾーン少年の音楽を... ということで、アンドレアス・シュタイアーのピアノ、ライナー・クスマウルのヴァイオリン、コンチェルト・ケルンの演奏で、メンデルスゾーン、13歳の作品、ピアノと弦楽のための協奏曲と、14歳の作品、ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲(TELDEC/0630-13152-2)を聴く。

これが、13歳、14歳の少年が書く曲なのか?!と、とにかく驚かされる2つのコンチェルト... いや、早熟の天才、メンデルスゾーンの少年期の作品というのは、とても習作なんて言えたものではなく、どれも恐ろしいほどの完成度を見せていて、作曲年齢を隠してしまえば、ごく当たり前にメンデルスゾーンの作品として通用してしまうだろう。ただ、あえて言うならば、19世紀前半の音楽にしては、多少、オールド・ファッション?18世紀的な古典主義のスタイルを感じさせるもので、場合によってはより時代を遡り、バッハ調の堅苦しさすら垣間見るところも... しかし、安易にロマン主義の流行に乗っかってしまうのではなく、古典をしっかりと学習し、しっかりとした基礎の上に、自身の音楽を繰り出すからこそ、メンデルスゾーン少年の作品は恐ろしいほどの完成度を見せてしまうのだろう。それでいて、けして優等生的な音楽に留まることなく、ロマン主義の青春の頃のパッションもしっかりと意識して盛り込み、ひとつの音楽作品として、きっちりと魅力的なものに仕上げる器用さもあるから凄い...
そんな1曲目、1822年に作曲されたピアノと弦楽のための協奏曲(track.1-3)。悲壮感を纏いながら疾走する1楽章は、古典派の短調の交響曲や、多感主義の音楽を思わせつつ、メンデルスゾーン少年の新しい潮流、ロマン主義への関心をも感じられ、歌謡性を見せるキャッチーなメロディー、程好いヴィルトゥオージティにも彩られていて、絶妙。で、この感覚は、なかなか他の作曲家では味わえない。それは、メンデルスゾーン少年の"少年"なればこそのニュートラルな視点があってこそのものか... また、そうした音楽に対する素直さが、18世紀から19世紀へとつながる音楽の流れを浮かび上がらせてもいて、ベートーヴェン流の古典主義を思わせる2楽章(track.2)、モーツァルト調のメロディーで始まる終楽章(track.3)と、様々なテイストで織り成されるおもしろさがある。で、さらにおもしろいのが2曲目、1823年に作曲されたヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲(track.4-6)。ヴァイオリンとピアノという組合せが珍しく、目を引くのだけれど、さらに、それぞれの楽器の扱われ方がおもしろく... ヴァイオリンを伴奏するようにピアノが奏でられ、この2つの楽器を包むようにオーケストラが盛り上げてゆく独特の展開... ヴァイオリン・ソナタとコンチェルトが重ねられたような不思議な感触が、新鮮!その未分化なあたりに、メンデルスゾーン少年の未熟さを感じるべきなのかもしれないけれど、そういうこどもっぽさが間違いなくおもしろさに成り得ていて... これは、ピアノと弦楽のための協奏曲にも言えることなのだけれど、メンデルスゾーン少年の大人顔負けの確かな技術と、世間知らずは否めないメンデルスゾーン少年のこどもっぽさが織り成す不器用な魅力... しかし、この感覚にこそ、何か19世紀前半の時代の本質のようなものを見る気がする。
で、このメンデルスゾーン少年による2つのコンチェルトに体当たりの大人たちの姿がまた微笑ましい!まず、2つのコンチェルトが生まれた頃に製作されたヨハン・フリッツのピアノを弾くシュタイアーなのだけれど、いつもながらのしっかりとしたタッチと、この鬼才ならではの全力投球な演奏が生み出す活きの良さが最高で... そこに、エールハルトがリーダーを務めていた頃の、尖がっていたコンチェルト・ケルンの演奏が大いに盛り立て、彼らならではの鋭いエッジは、やっぱりエキサイティング!そうしたところから、向こう見ずなロマン主義の青春の頃が際立ち、優等生、メンデルスゾーン少年に、アンファン・テリヴルな表情も浮かぶからおもしろい。そして、芯のあるすばらしい美音を聴かせるクスマウルのヴァイオリン!メンデルスゾーン少年の音楽から、そこかはかとなくヴィルトゥオージティを引き出して、パガニーニを臭わせるような伊達っぷりも。ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲の終楽章(track.6)での、シュタイアーとの丁々発止のやり取りは特に最高で、キャッチーでリズミックなその音楽、演奏を聴いていると、テンション上がらずにいられない!

MENDELSSOHN: CONCERTOS
STALER ・ KUSSMAUL ・ CONCERTO KÖLN

メンデルスゾーン : ピアノと弦楽のための協奏曲 イ短調
メンデルスゾーン : ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 ニ短調 *

アンドレアス・シュタイアー(ピアノ : 1825年頃の作製、ヨハン・フリッツ)
ライナー・クスマウル(ヴァイオリン) *
コンチェルト・ケルン

TELDEC/0630-13152-2




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