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ドイツ・ロマン主義、これぞクラシック!な、ウェーバーを再発見。 [before 2005]

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新緑の季節に聴く、ロマン主義の青春の頃... ということで、リースを聴いた前回に続いて、ドイツ・ロマン主義の始まり、オペラ『魔弾の射手』を作曲したウェーバー(1786-1826)を聴いてみようかなと... ところで、ウェーバーってどんな作曲家?クラシックの屋台骨たるドイツ・ロマン主義を始めた人物とあらば、クラシックにとっては欠かせない人物となるはずだけれど、クラシックはウェーバーに対してあまり関心が無いようなところがある。そもそも、ウェーバーの作品をあまり聴かない。『魔弾の射手』の他に、どんな作品があるのか、あまりよくわかっていないことに気付く。そんな漠然としたウェーバーの認識を、今、改めて自覚してから聴く、ウェーバー。
ミハイル・プレトニョフ率いるロシア・ナショナル管弦楽団の演奏で、ウェーバーの序曲を中心に主だった作品を集めたアルバム(Deutsche Grammophon/453 486-2)を聴く。

始まりは、プレトニョフ自身のピアノによる、ピアノとオーケストラによるコンツェルトシュテュック(track.1-4)。ちょうど、『魔弾の射手』がベルリンの宮廷歌劇場で初演(1821)された頃に完成された作品。となれば、まさにロマンティック... オーケストラによる仄暗い序奏が、ロマン主義が熟成されつつある頃のような深い表情を見せて、ちょっと驚かされる。そこに、ぽつりぽつりと寂しげに浮かぶピアノの音は、どこかロシアのコンチェルトを聴くようで、たっぷりとロマンティックで、ドイツ・ロマ主義の始まりの頃の瑞々しさとは一味違うトーンに、すでにロマン主義の全盛期を見据えているようで、そんなウェーバーのスケール感に、目を見張る。そこから、ロマン主義の青春の頃の瑞々しい音楽を聴かせる2楽章(track.2)への切り返しがまた絶妙で、さらに3楽章(track.3)の雅やかな短い行進曲は18世紀風で、未来から過去へと遡るような奇妙な展開がおもしろい。かと思うと、終楽章(track.4)では、ヴィルトゥオージティが華麗に輝いて、19世紀のエンターテインなコンチェルトを楽しませてくれる。ウェーバーは、ヴィルトゥオーゾたちが持て囃され始めた時代、ピアニストとしても活躍した人物だけに、そうしたあたりも手慣れたもの... しかし、「コンツェルトシュテュック(小協奏曲)」とはいえ、何と盛りだくさんな!
というコンツェルトシュテュックに続いて、ウェーバーのお約束、『魔弾の射手』序曲(track.5)を聴くのだけれど。この聴き知った曲も、改めて聴いてみれば、なかなか興味深く。冒頭から『トリスタン... 』の前奏曲を思わせるような象徴的な展開に、随所に現れる背景で鳴るトレモロなど、それは、19世紀、個性を極めたワーグナーの音楽が、どこからやって来たのかを知るドイツ・ロマン主義の始まりであって... また、"魔弾"のゴシックなあたりと、民謡を思わせるキャッチーなあたりが、洗練を極めた前世紀、18世紀のインターナショナル・スタイルとしての古典主義のアンチテーゼとして、その存在を際立たせるようであり、改めて「ロマン主義」の何たるかを思い知らされるかのよう。それでいて、インターナショナル・スタイルのアンチテーゼとしてのドイツ至上主義的な性格が、やがてクラシック全体のトーンになってしまう逆転がおもしろいなと... そんな『魔弾... 』序曲の後には、『アブ・ハッサン』序曲(track.6)が取り上げられるのだけれど、ここでは、18世紀のトルコ趣味からそう遠くない音楽を繰り広げながらも、ロマン主義のエッセンスとして欠かせないエキゾティシズムを強く意識させられ。さらに、新しい時代のダンスを象徴するワルツを踊る、舞踏への招待(track.9)があり。ベートーヴェンの同時代にして、ウェーバーの音楽にはしっかりと「19世紀」が響き渡り、その堂々たる姿に、今さらながらに魅了される。で、そうしたウェーバー像に、これぞクラシック!という、何か判で押したようなイメージを見出し、妙に新鮮だったり。
そんなウェーバーを聴かせてくれた、プレトニョフ+ロシア・ナショナル管。いや、彼らだからこそ、こういうウェーバーのイメージが映えるのだと思う。そもそも、なぜにロシアのオーケストラがウェーバー?とも思うのだけれど... いや、プレトニョフ+ロシア・ナショナル管ならではの独特のトーンがあってこそ、ウェーバーの19世紀としての堂に入った魅力は引き出されるのかも。古き良き時代のオーケストラ・サウンドを残すロシアならではのセンスの一方で、古臭くユルいオーケストラ・サウンドとは一線を画すロシア・ナショナル管の闊達な運動性が、ロマン主義の奥行きと、ドイツ・ロマン主義の幕が上がる頃の瑞々しさを絶妙に捉えて、見事!そうして浮かび上がる、ウェーバーの音楽の如何にもクラシック!といった在り様... ではあるのだけれど、それを真正面から鳴らし切って、それが何か?というくらいの潔さから生まれる、クラシックのカッコ良さ!ウェーバーを再発見し、クラシックを再認識させられるような、おもしろさに、今、改めて感服!

WEBER: KONZERTSTÜCK ・ OUVERTÜREN
RUSSIAN NATIONAL ORCHESTRA/PLETNEV


ウェーバー : ピアノとオーケストラのためのコンツェルトシュテュック Op.79 J.282
ウェーバー : ウェーバー : オペラ 『魔弾の射手』 序曲 Op.77 J.277
ウェーバー : オペラ 『アブ・ハッサン』 序曲 J.106
ウェーバー : オペラ 『オベロン』 序曲 J.306
ウェーバー : 序曲 「精霊の王」 J.122
ウェーバー : 舞踏への勧誘 Op.65 J.260 〔編曲 : ベルリオーズ〕
ウェーバー : オペラ 『3人のピント』 J. Anh. 5 〔編曲 : マーラー〕
ウェーバー : オペラ 『オイリアンテ』 J.291

ミハイル・プレトニョフ(ピアノ)/ロシア・ナショナル管弦楽団

Deutsche Grammophon/453 486-2




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