SSブログ

冬から春へ、そして『四季』を聴く... [before 2005]

CD502204.jpg
そして、3月となりました。再びの、春を迎える...
昨日、春めく穏やかな空気に包まれて、季節が巡って来たことに、深く感じ入る。って、何か、センチメンタルになってしまう早春... 卒業シーズンだから?年度が改まるから?だけじゃない、春の訪れというのは、いつもとは少し違う心地にさせられて。寒さに緊張していた心が、暖かな陽気に緩んで、ふと、その隙に、肌寒さを感じてしまうのか。暖かいのに肌寒い、この感覚は少し苦手かもしれない。そうしてまた、巡る季節を思う。
ということで、巡る季節を描く名曲をふと思い立ち... ディエゴ・ファゾリス率いる、スイス、ルガーノのピリオド・オーケストラ、イ・バロッキスティの演奏で、弦楽のみではなく、様々な楽器を加えて繰り広げられる、風変わりなヴィヴァルディの『四季』(claves/CD 50-2204)を聴く。

オーボエ、リコーダー、ホルン、さらにはハーディ・ガーディまで、盛りだくさんの楽器で奏でられるファゾリス+イ・バロッキスティによる『四季』(track.1-12)。オリジナルの弦楽合奏でも十分に表情豊かなはずだけれど、リコーダーが鳥のさえずり(track.1)をなぞり、ハーディ・ガーディが牧歌的な背景(track.3)を描き出し、高らかに鳴るホルンが狩りの始まりを告げ(track.9)れば、表現はよりダイレクトとなり、またサウンドには、これまでにはない厚みが生まれ、どことなしにロマンティックに響くヴィヴァルディ... 聴き馴染んだお馴染みの名曲が、また違った感触を以って迫って来るあたりに、少し慄いてしまう。ピリオド楽器なればこそのストイックなトーンがあり、イタリアのピリオド・オーケストラ(イ・バロッキスティは、スイスのイタリア語圏のピリオド・オーケストラ... )ならではのバロック・ロックなノリもある一方で、モダン・オーケストラで味わうような豊潤さもある不思議さ。
という、様々な楽器が加えられた『四季』は、バロック期、ドイツで最も豪奢な規模を誇ったドレスデンの宮廷のオーケストラをイメージした編成によるもので... ヴィヴァルディのヴァイオリンの弟子、ドレスデンのコンサート・マスターを務めていたピゼンデルにより、ヴィヴァルディの作品は、ドレスデンでも多く取り上げられ、ドレスデンのために書かれたコンチェルトもあるわけだが... そうした作品とともに、当時のドレスデンで『四季』が取り上げられていたならば?ヴァイオリン・ソロと弦楽アンサンブルによるコンチェルトが、管楽器が加わり、弦楽器の数も増え、大きな編成で奏でられる興味深さ!オーケストラの規模が大きくなることで、ソロの存在はこれまで以上に際立ち、オリジナルの、バロックらしい室内楽的なコンチェルト・グロッソのイメージを越えて、より近代的な協奏曲の色を濃くしているあたりがおもしろい。何より、楽器が増えることによって、間違いなく色彩は豊かになり、これまでとは違う風景が見えて来るようで、そのヴィヴィットさに目を見張る!瑞々しく水彩で描かれていた風景が、ハイヴィジョンで映し出されたような、独特のインパクトがあり、またそれにグイっと惹き込まれるようで、印象的...
そんな『四季』を繰り広げたファゾリス+イ・バロッキスティ。楽器が増えた効果もちろん大きいのだけれど、それだけではない、イ・バロッキスティならではの独特さが、ヴィヴァルディが『四季』に描き出した風景をよりヴィヴィットなものにしている。他のピリオド・オーケストラとは一味違う、重みのあるサウンド... 管楽器やハーディ・ガーディのトリッキーさよりも、モダン・オーケストラに引けを取らない、しっかりとしたアンサンブルを編み上げる弦楽セクションの存在感こそ、この『四季』により豊かなイマジネーションをもたらしているように感じる。そして、ヴァイオリン・ソロを弾くガルフェッティ!ヴァイオリンをマンドリンに持ち替えて、『四季』の後ではマンドリン協奏曲(track.13-15)も弾きこなしてしまう驚くべきマルチ・プレイヤーなのだけれど... そうしたマルチな性格が反映されたヴァイオリン・ソロというのか、少し軟派な印象も受ける?ま、そのあたりから生まれる表情というものもあって、切っ先の鋭いヴィヴァルディとは違う、おもしろみを含んだヴァイオリン・ソロを展開している。
という『四季』の後でのマンドリン協奏曲(track.13-15)。『四季』の充実したサウンドの後で、楚々とした音楽が紡ぎ出され、マンドリンに持ち替えたガルフェッティも、粒立ちのいい音色を発ししていて、『四季』とはまた違う小気味の良い演奏を聴かせる。何より、ドレスデン・スタイルの『四季』とのコントラストが絶妙で... 楚々としてもまた魅力的なヴィヴァルディがこのアルバムに絶妙にアクセントを与えている。そして、締めには「田舎風」(track.22-24)!イ・バロッキスティによる野趣溢れる田舎の豪放磊落な有り様を目の当たりにして、ドレスデン・スタイルの『四季』の盛りだくさんで、ちょっとトリッキーなあたりに納得。それでいて、四季は巡り、再び陽気な春を楽しむようでもあって、感じ入るところも。

VIVALDI / THE FOUR SEASONS
GALFETTI / I BAROCCHISTI / FASOLIS


ヴィヴァルディ : 協奏曲集 Op.8 『和声と創意の試み』 から 『四季』
ヴィヴァルディ : マンドリン協奏曲 ハ長調 RV 425
ヴィヴァルディ : 弦楽のための協奏曲 ニ短調 RV 128
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 「ポストホルン」 RV 363
ヴィヴァルディ : 弦楽のための協奏曲 ト長調 「アラ・ルスティカ」 RV 151

ドゥイリオ・ガルフェッティ(ヴァイオリン/マンドリン)
ディエゴ・ファゾリス/イ・バロッキスティ

claves/CD 50-2204




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。