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見えざる街、キーテジの伝説と、乙女フェヴローニャ。 [before 2005]

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レジェンド、2つ目のメダル!本当に、凄いなァ。
葛西選手の、諦めず、がんばり続ける。そういう在り方に、学ぶところ、多々あります。それにしても、団体でのジャンプ!メダルの掛かった、日本チーム、4人目というポジションからのジャンプの、力むことなく、揺ぎ無く、ただ淡々と飛んでゆくその姿に、嗚呼、これがレジェンドなのだなと... それは、風だ、何だと、運にも大きく左右されるスキー・ジャンプという世界で、長年、戦ってこその境地だろうか?「レジェンド」という派手な言葉とは裏腹に、まったく飾らないその佇まいに、深く感動してしまった。そして、日本チーム!銅メダルへとつなげた4人のアンサンブルが生み出す力は何て大きいのだろう。世代を越えて、互いを労り、リスペクトする姿にも感動せずにはいられない。そして、そんな感動が広がれば、世の中、何かが変わるような気もして来る。
さて、レジェンドに刺激されて?ロシア・オペラに描かれたレジェンドなのだけれど... ヴァレリー・ゲルギエフ率いる、マリインスキー劇場による、ライヴ録音、リムスキー・コルサコフのオペラ『見えざる街、キーテジの伝説と、乙女フェヴローニャ』(PHILIPS/462 225-2)を聴く。

どうも、リムスキー・コルサコフは、『見えざる街、キーテジの伝説と、乙女フェヴローニャ』に、満足していなかったらしい... 台本を書いたベリスキーの散文的なイメージと、オペラを作曲するのに必要なドラマ性を求めたリムスキー・コルサコフとのズレが大きく、ひとつのオペラに仕上げるまでに、何かと苦労が多かったらしいのだが、結果として、ロシアに伝わる伝説(キーテジ)と、民話(フェヴローニャ)を巧みに重ね、叙事詩的な壮大な風景と、切なくも美しい物語をオペラというスタイルの中に生み出し得ていることは、大成功のように思うのだけれど... いや、改めてこのオペラの物語を見つめると、ただただ切なくなってしまって...
森で、キーテジの公子、フセヴォロドと出会い、見染められたフェヴローニャの、シンデレラ・ストーリー。かと思いきや、公子との婚礼に向かう道中、キーテジを攻めようとするタタール軍に捕らわれてしまうフェヴローニャ。祝賀ムードから一転、風雲急を告げるキーテジの街。そうした中、タタール軍の恐怖を前に、キーテジの街には奇跡が起こり、街は不思議な霧に覆われ、その姿は見えなくなり、タタール軍の攻撃をかわす。が、フェヴローニャを救おうと打って出た公子は、タタール軍に敗北、命を落としてしまう。一方、フェヴローニャは、何とか森へ逃げ込むも、天国の鳥、アルコノストから死の訪れを告げられ、そこに現れた公子の霊とともに、天国へ... すると、天国へと変わったキーテジの街が姿を現し、公子とフェヴローニャの婚礼がとり行われる。という物語... 幸せを目前にしながら暗転するフェヴローニャの苦難、勝利を得ることなく敗死してしまう公子、あまりに薄幸な2人に、トロイアのように籠城することなく霧の中に隠れてしまうキーテジの存在感といい、何とも儚げで、灰汁の強い「オペラ」の世界にあって、不思議な存在感を見せる『見えざる街、キーテジの伝説と、乙女フェヴローニャ』。リムスキー・コルサコフの音楽は保守的なオペラのスタイルを堅持しながらも、リムスキー・コルサコフなればこその美しさを以ってして、このオペラの不思議な存在感を際立たせているのが印象的で、それは見事ですらある。
序奏からすでに聴こえて来る、フェヴローニャが歌う「おお森よ、私の森よ」(disc.1, track.2)の、ロシアのフォークロワを思わせる愛らしいメロディが、もう何とも儚げで、切なげで、聴き入ってしまうのだけれど。そんな、ロシアのお伽噺を読み聞かせられるような、人懐っこいトーンが、ふんわりと全体を包み、温もりを感じさせる一方で、2幕、小キーテジの賑わい(disc.1, track.16- )の、ユーモラスさも見せる活き活きとした表情や、ケルジェネツの戦い(disc.2, track.16)での不穏さ(まるで『リング』のローゲの炎?)と戦闘のドラマティックさも聴きどころ... で、最後、ロシアの聖歌を用いて描かれる、神秘的でハッピーな天国の風景(disc.3, track.15- )のヘブンリーさは、得も言えずやさしげで、フェヴローニャばかりでなく、聴く者も癒されてしまう。
という、『見えざる街、キーテジの伝説と、乙女フェヴローニャ』を取り上げた、ゲルギエフ+マリインスキー劇場。3枚組の長丁場を、下手に煽ることなく、ひとつひとつのシーンをきちっと描き出し、リムスキー・コルサコフの音楽の美しさを、卒なく響かせる。このあたりは、マリインスキー劇場管ならではの手堅さが活きて、リムスキー・コルサコフならではのオーケストレーションの妙をしっかりと味わうことができる。何より、ライヴ録音ではあるものの、落ち着いて物語が進められてゆくあたりが好印象。一方で、ライヴ録音ならではの、歌手に粗さを感じるところもわずかにあるのだけれど、それでも、美しいナンバーを歌いつないでゆくマリインスキー劇場の歌手たちの、堂に入った歌いっぷりはさすが... そうして繰り出される、切ない物語、美しい音楽... 何て素敵なのだろう。押し出しの強いオペラならいくらだってあるのに、そうではないところにこのオペラの魅力はあって... そうではないけれど、しっかりとドラマを聴かせて来るリムスキー・コルサコフの音楽が絶妙でもあって... 久々に聴いてみたら、大いに魅了され、思い掛けなく、感動してしまった。

Rimsky-Korsakov
The Invisible City of Kitezh
Kirov Opera & Orchestra
Valery Gergiev


リムスキー・コルサコフ : オペラ 『見えざる街、キーテジの伝説と、乙女フェヴローニャ』

キーテジ公、ユーリ : ニコライ・オホトニコフ(バス)
公子、フセヴォロド : ユーリ・マルーシン(テノール)
フェヴローニャ : ガリーナ・ゴルチャコーワ(ソプラノ)
グリーシカ・クテリマ : ウラジーミル・ガルージン(テノール)
フョードル・ポヤーロク : ニコライ・プチーリン(バリトン)
少年兵 : オリガ・コルジェンスカヤ(ソプラノ)
貴族 : エフゲーニ・ボイツォフ(テノール)
貴族 : エフゲーニ・フェドートフ(バス)
グースリ弾き : ミハイル・キット(バス)
熊使い : ニコライ・ガシーエフ(バリトン)
貧しい人々の音頭取り : グリゴーリ・カラーセフ(バス)
ベドヤイ : ブラト・ミンジルキーエフ(バス)
ブルンダイ : ウラジーミル・オグノヴィエンコ(バリトン)
シリン : タチアナ・クラフツォーワ(ソプラノ)
アルコノスト : ラリッサ・ジャチコワ(メッゾ・メソプラノ)
マリインスキー劇場合唱団

ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインキー劇場管弦楽団

PHILIPS/462 225-2




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