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ロシア音楽が目覚める!グリンカの『ルスランとリュドミラ』。 [before 2005]

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ソチ・オリンピックまで、残すところ8日!
さて、まずはどんな開会式になるか気になるところ... バンクーバー・オリンピックの閉会式での、ソチ予告編のパフォーマンスでは、ゲルギエフが指揮し、グレギーナが歌ったわけでして... そんなあたりから、いろいろ期待してしまうのだけれど... 政治的なイメージはともかく、「ロシア」の文化的、芸術的なポテンシャルというのは、ただならない。クラシカルにも、アヴァンギャルドにも、どちらにも振れ得る「ロシア」だけに、その開会式はどうなるのだろう?ゲルギエフはもちろん、バシュメット、マツーエフらも登場するようなのだけれど、ワクワクしてしまう。
さて、ロシア音楽を聴く... ハチャトゥリアン、イッポリトフ・イヴァノフに続いて、ロシア音楽の起点とも言えるオペラを久々に引っ張り出す。ヴァレリー・ゲルギエフ率いる、マリインスキー劇場による、グリンカのオペラ『ルスランとリュドミラ』(PHILIPS/456 248-2)を聴く。

1842年、サンクト・ペテルブルクで初演された『ルスランとリュドミラ』。グリンカ(1804-57)の代表作にして、とにかく序曲が有名なオペラ。その序曲は、ロシア音楽のアイコンと言ってもいいぐらい... しかし、幕が上がった後を聴くことはなかなかない。そんな『ルスラン... 』を、ロシア・オペラの家元とも言うべき、ゲルギエフ+マリインスキー劇場の演奏で、全幕、改めて聴いてみるのだけれど... いや、実に興味深い!
ロシアにおける"芸術"というのは、ピョートル1世(在位 : 1682-1725)による西欧化で始まるイメージがある。音楽に関しては、18世紀、この西欧化を象徴するように、ナポリ楽派の作曲家たちがサンクト・ペテルブルクに招聘されたりもした。そして、19世紀に入ってからは、西欧ではなく、ロシアとしての音楽が意識されるようになり、その先鞭を付けたのがグリンカであり、ロシア文学の黎明を切り拓いたプーシキンの、ロシアの民話を題材とした戯曲を元に、ロシアの民謡で彩ったオペラが、『ルスランとリュドミラ』だ。まさに、ロシア音楽にとって記念碑的作品となるわけだ。が、グリンカは若い頃、イタリアを遊学、晩年にはドイツで対位法を学び直したりと、その音楽は西欧の語法を逸脱すようなことはない。というより、当時の西欧を席巻していたベルカントのスタイルを丁寧に用いて、魅力的なオペラを生み出しているのが『ルスラン... 』。ロシアのフォークロワの魅力が弾ける序曲の後で繰り広げられる本編を聴けば、グリンカが紡ぎ出した音楽というのは、ロッシーニやベッリーニとそう遠いものではないと感じる。ナショナリスティックに活動を展開したロシア5人組に大きな影響を与えたグリンカではあるけれど、その流麗なメロディと、軽やかにして華やかなオーケストラ・サウンドには、ロシア5人組が対抗したチャイコフスキーの音楽を思わせるものが多々あって、チャイコフスキーのロシアという場で作られた擬似西欧なキラキラとした音楽の源流を、『ルスラン... 』に見出し、納得。やはり『ルスラン... 』は、ロシア音楽の起点なのだなと...
もちろん、ロシアならではのテイストもふんだんに盛り込まれている『ルスラン... 』。騎士ルスランが、悪い魔法使いに浚われたリュドミラ姫を助けに行く(何となーく、ジークフリートの話しを思わせるところも... )、中世ロシアを舞台としたファンタジックな物語。そのファンタジックさをより強調するのが、ロシア民謡。キャッチーで、リズミカルで、西欧のしっかりとしたベルカントのベースの上に、朗らかにロシアっぽさが飾られて、そんな音楽を耳にすると、まるで絵本を開くようなワクワクとした心地にさせられる。で、その極め付けがフィナーレ(disc.3, track.16)!あの序曲のテーマを、みんなで元気よく歌ってしまうから盛り上がらずにいられない。最後の最後で、こんな風に序曲と再会できるとは... いや、そのまま序曲をフィナーレに持って来るオペラって、そうないかもしれない。で、このわかり易さというか、期待を裏切らない展開が、かえって新鮮であり、何だか爽快!そんな『ルスラン... 』には、ロシア音楽の萌え立つ頃の、真っ直ぐで元気の良さがいっぱいに詰まっている。
という『ルスラン... 』を、活き活きと動かしてゆくゲルギエフ!締まったサウンドできっちりまとめて来るマリインスキー劇場管!1995年のライヴ録音となる、この全曲盤、ゲルギエフはまだまだ若く、マリインスキー劇場はより古き良きオペラハウスの雰囲気を残し、瑞々しさと渋さが絶妙に効いて、独特の味わいを生み出す。そうして、序曲ばかりでない『ルスラン... 』の素敵さを鮮やかに描き出し、全3枚組の長丁場も飽きさせることなく、軽やかに物語を運ぶ巧みさは、まさにロシア・オペラの家元の自負の表れ。そこに、マリインスキー劇場が誇る、豪華なスターたち!リュドミラには駆出しの頃のネトレプコ(ソプラノ)が歌い花を添えるのだけれど、印象に残るのはルスランを歌うオグノヴィエンコ... その伸びやかなバリトンで、朗々と歌う姿は、中世ロシアそのもののようで、イマジネーションを掻き立てる。しかし、ゲルギエフ+マリインスキー劇場がブレイクを果たした頃の活きの良さに、改めて魅了される。そして、グリンカ... 何と素敵な!

GLINKA
RUSLAN AND LYUDMILA
VALERY GERGIEV


グリンカ : オペラ 『ルスランとリュドミラ』

スヴェトザール : ミハイル・キット(バス)
リュドミラ : アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)
ルスラン : ウラジーミル・オグノヴィエンコ(バリトン)
ラトミール : ラリーサ・ジャチコーワ(アルト)
ファルラーフ : ゲンナジー・ベズズーベンコフ(バス)
ゴリスラーワ : ガリーナ・ゴルチャコーワ(ソプラノ)
フィン : コンスンチン・プルジュニコフ(テノール)
ナイーナ : イリーナ・ボガチョーワ(メッゾ・ソプラノ)
バヤーン : ユーリ・マルーシン(テノール)
マリインスキー劇場合唱団

ヴァレリー・ゲルギエフ/マリインスキー劇場管弦楽団

PHILIPS/456 248-2




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