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チェロという楽器の温もり、気の置け無さ... [before 2005]

1月は、七草粥的アルバム... ということになりました。
で、ルネサンス期、イギリスのリュート・コンソートに始まり、ゴシック期、フランスのペロタンゴーティエ・ド・コワンシーと聴いて来て、ちょっと古楽に頼り過ぎたかな?という反省があって... 今回は、古い時代にではなく、楽器に七草粥を見出してみようかなと... で、様々な楽器が溢れるクラシックにおいて、滋味溢れるサウンドで、深く魅了されるチェロに着目。渋くも懐の大きい温かなサウンドに包まれて、ほっと一息...
ピリオドのチェロの巨匠、アンナー・ビルスマによる、ヴィヴァルディのチェロ・ソナタ集(SONY CLASSICAL/SK 51350)と、個性派、ピーター・ウィスペルウェイがチェロでショパンのピアノ曲を弾いた"Cello Waltzes Vol.1"(CHANNEL CLASSICS/CCS 16298)を聴く。


チェロの温もりで奏でるヴィヴァルディ... 巨匠、ビルスマによるハート・ウォーミング...

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バロックにおいて、ヴィヴァルディの音楽は際立っている。とにかく鮮烈で、息もつかせぬアクロバティックでも魅了し、時に攻撃的ですらあるその音楽... バロックにおけるケレンの粋といった印象を受けるのだけれど... そんな、聴き知ったヴィヴァルディのイメージからはちょっと想像が付かない雰囲気を漂わせるのが、チェロ・ソナタ。現在、9曲が残っており、その内のOp.14としてまとめられている6曲を取り上げるビルスマのアルバム。いやー、最初の一音からして、得も言えぬ温もりを感じる深い響きに、惹き込まれる!
チェロという楽器の性格がそうさせるのか、ヴァイオリンではあまり見せることのない、懐の大きな音楽を繰り広げるヴィヴァルディ... ケレンではなく、楽器の持つ存在感を、そのまま音楽にしたような、素直な流れを生み出していて、いつになく心に沁みる。それは、ある意味、ヴィヴァルディという存在を消すようでもあり、作曲家の記したスコアをなぞるのではなく、チェロという楽器が自然と歌い出すような、そんなナチュラルさを見せる。また、チェロをサポートする通奏低音の楽器群がまたいい味となっており... リュートの古雅な響き、チェンバロの繊細な響き、時にチェンバロはポジティフ・オルガンに替わり、素朴な表情を見せ。そこに、もうひとつのチェロと、ヴィオローネ(コントラバスの先祖?)の深い響きが加わり、音楽全体の重心をグっと低くし、ソロを絶妙に引き立てつつ、ヴィオール・コンソートが醸すような独特のヴィンテージ感で包んで来る。ヴィヴァルディのチェロ・ソナタは、どことなしに古いバロックの色合いを帯びていて、その古びた趣きこそが、魅力になっている。
やはり、巨匠、ビルスマならではの、そしてバロック・チェロならではの、深く温もりを感じさせる響きがあるからだろうか?最初のブーンという一音からして、ただならず温かい。また、巨匠の長い経験が生み出す"間"だろうか、それが人の息遣いに似て、まるで音楽そのものが呼吸しているかのよう。そんなビルスマに、阿吽の呼吸で合わせて来る通奏低音の面々の演奏もまたすばらしく... 楚々として巨匠を支えながらも、それぞれにしっかりとした音楽性が存在していて、ビルスマのチェロのみならず、滋味に溢れる音色を奏で、印象的。そうして奏でられるヴィヴァルディのチェロ・ソナタは、何ともハート・ウォーミング!

VIVALDI: SONATAS FOR VIOLONCELLO ・ BYLSMA

ヴィヴァルディ : チェロ・ソナタ 第1番 変ロ長調 RV47
ヴィヴァルディ : チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 RV41
ヴィヴァルディ : チェロ・ソナタ 第3番 イ短調 RV43
ヴィヴァルディ : チェロ・ソナタ 第4番 変ロ長調 RV45
ヴィヴァルディ : チェロ・ソナタ 第5番 ホ短調 RV40
ヴィヴァルディ : チェロ・ソナタ 第6番 変ロ長調 RV46

アンナー・ビルスマ(チェロ)
フランチェスコ・ガッリジョーニ (チェロ)
イヴァーノ・ザネンギ(アーチ・リュート)
アレッサンドロ・ズブロジョ(ヴィオローネ)
アンドレア・マルコン(チェンバロ/ポジティフ・オルガン)

SONY CLASSICAL/SK 51350




チェロによるショパンの新鮮!個性派、ウィスペルウェイがチェロで歌う気の置け無さ...

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ショパンのピアノの名曲の数々を、チェロで弾いたらどうなるか?という、ウィスペルウェイらしい1枚... で、ウィスペルウェイと、彼のいつもの相棒、ピアニストのラツィックの2人によるアレンジをメインに、ショパン自身の手によるチェロとピアノの作品も取り上げて、さらには19世紀のチェロのヴィルトゥオーゾ、ダヴィドフによるアレンジなども含めて、いつものショパンとは一味違う、新鮮なショパンを聴かせてくれる。で、もう1曲目から、目が覚めるような新鮮さが放たれ、チェロによるショパンに、一気に魅了されてしまうことに...
という1曲目、ダヴィドフのアレンジによる、華麗なる大円舞曲!この作品の華麗さを、見事に超絶技巧で捉え、オリジナルに負けない華麗さを繰り広げるダヴィドフ・アレンジの痛快さ!チェロというややもすると地味にも思える楽器が、見事、クールに変身。そうして、あの華麗なるワルツが踊り出されると、華やぎが弾け、もう幕開けからワクワクさせられる。続く、2曲目、ウィスペルウェイ&ラツィックのアレンジによる2番の前奏曲(track.2)は、何とも言えぬ独特の不穏さを醸し... ショパンのはずが、近代音楽でも聴くようなおもしろい変身を見せて、おおっ?!となる。で、その余韻を残したまま、45番のマズルカ(track.3)の、うらぶれ感の漂うメロディを、チェロが歌い出す絶妙さ!ダヴィドフ・アレンジが、典型的なヴィルトゥオーゾの時代の華麗なるものである一方で、ウィスペルウェイ&ラツィック・アレンジは、アルバムに流れを作り出し、一曲、一曲ではなく、アルバム1枚がひとつの作品となるような巧みな展開をもたらし唸らせる。何より、ピアノのオリジナルから、チェロの魅力を活かし切るアレンジの妙を感じずにはいられない。そもそも、ショパンのメローさは、弦楽器こそ映える?
オリジナル以上に、ショパンの音楽が味わい深く感じられるウィスペルウェイ、ラツィックの演奏... ヴィブラートを抑えたウィスペルウェイのチェロの芯のある響きが、ショパンのメローさ、センチメンタルをよく捉えていて。また、オリジナルから解き放たれてのライトさもあり、ショパンのセンチメンタルにメローなあたりが、シャンソンに似て、洒落ている(ショパンの父さんは、フランス出身なのだよね... )。ラツィックのピアノも、そんなウィスペルウェイのチェロと絶妙に掛け合い、オリジナルを忘れさせてしまうほど、堂に入った"伴奏"を聴かせる。そうして浮かび上がる新鮮なショパン像!その気の置けなさ...

Chopin Cello Waltzes, vol.1 Pieter Wispelwey

ショパン : ワルツ 第1番 ニ長調 Op.18 「華麗なる大円舞曲」 〔ダヴィドフ編〕
ショパン : 前奏曲 第2番 イ短調 Op.28 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : マズルカ 第45番 イ短調 Op.67-4 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : ワルツ 第5番 イ長調 Op.42 〔ダヴィドフ編〕
ショパン : 前奏曲 第6番 ロ短調 Op.28 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : マズルカ 第44番 ハ長調 Op.67-3 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : 華麗なるポロネーズ ハ長調 Op.3
ショパン : 前奏曲 第4番 ホ短調 Op.28 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : マズルカ 第47番 イ短調 Op.68-2 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : チェロ・ソナタ ト短調 Op.65 から 第2楽章 スケルツォ
ショパン : マズルカ 変ロ長調 Op.posth.  〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : ワルツ 第3番 イ短調 Op.34-2 〔ダヴィドフ編〕
ショパン : 前奏曲 第7番 イ長調 Op.28 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : 練習曲 ホ短調 Op.25-7 〔グラズノフ編〕
ショパン : 前奏曲 第3番 ト長調 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : マズルカ 第43番 ト短調 Op.67-2 〔ウィスペルウェイ、ラツィック編〕
ショパン : 夜想曲 嬰ハ短調 Op.posth. 〔ピアティゴルスキー編〕
ショパン : ワルツ 第2番 イ長調 Op.34-1 「華麗なるワルツ」 〔ダヴィドフ編〕

ピーター・ウィスペルウェイ(チェロ)
デヤン・ラツィック(ピアノ)

CHANNEL CLASSICS/CCS 16298

1月、七草粥的アルバムを求めて...
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